【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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【潜入】衝撃の舞台裏、みんなの憧れの学園でまさかの… ▶15話

#1 先生、好きです…

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「せんせー!ルキせんせー!待ってー!」

「待ってよ!せんせー!」

中庭に面する回廊、通り過ぎようとしたそこに、女生徒達の声が聞こえてきた。

─ルキ先生

想い人の名に、思わず顔を上げる。下がってしまった眼鏡を押し上げ、声のする方、中庭の中心を見つめる。そこに、女生徒達に囲まれる長身の姿を見つけて、心臓が大きく鳴った。

赤い髪を綺麗になでつけた端正な横顔が、今は、ほんの少しの不機嫌を示している。

「ルキ、先生…」

ホゥッと口から零れ落ちたため息。遠くから、見つめるだけ。近づけない彼我の距離が、ただ、切なくて。彼を想う気持ちだけが、否応なしに膨らんで─

「…何してるの、セリちゃん?」

「…エル。」

「なに?…ルキ見てたの?」

中庭の中央では、ルキが女生徒に取り囲まれてしまっている。

「ルキせんせぇ、お茶しましょうよー!」

「それか、外れてってください!みんなでデート行きましょう!」

「うっせぇ、散れ散れ。俺はこれから授業あんだよ。」

「えー!」

可愛く不満を口にする女生徒達に、口では文句を言いながらも、実力行使で追い払うことはしないルキ。その輪に入れない身としては、やることは一つ。

「…『学園で人気の先生に片想いする生徒ごっこ』、してます。」

「暗い遊びしないでよ。…そもそも、片想いじゃないでしょ?」

「…でも、最近、全く会えていません。」

「…そんな遊びするくらいなら、ちょっとくらい会いに行けばいいじゃない。」

エルの、悪魔の誘惑に首を振る。

「…駄目です。ルキとは他人同士だから、接触厳禁。」

「真面目だねぇ…」

「…」

「…でも、まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫なんじゃない?ルキ先生、誰も相手にしてないみたいだし?」

エルの言葉に、もう一度、中庭に視線を向けた。

「あー、ったく、お前ら、マジで俺に構うな、寄るな、触んな。」

「ひどーい!先生なのに!寄るなってなに!?」

「教師だろうと関係ねぇよ。俺、婚約者いるっつってるよな?すっげぇベタ惚れなの。絶対泣かせらんねぇの。だから、誤解されるようなことだけは、マジでしたくないわけ。」

ルキの言葉に、周囲から盛大なブーイングが上がった。

「…婚約者。」

「ほらね?大丈夫そう。」

ルキの言ってくれた言葉に、胸が一気に温かくなる。




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