異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

文字の大きさ
44 / 65
第六章 元勇者とお姫様

3.

しおりを挟む
3.

「秀が忙しくしてるって話はしただろ?あいつは今、花守の外、他家の人間と渡りをつけるために奔走してんだ」

そう言葉にする部長の眉間には、深いシワが刻まれている。

「自分達に『戦う力』が無いのなら、強みである自分の『見る力』を使うしかない。その力で他家の仕事に協力して、少しでも他家との繋がりをつくる。そんで、少しでも他家の協力を得られるようにする。それがアイツの考えだ」

「…それってやっぱり、私やチサの協力だけじゃ、足りないってことですか?」

個々の質は高いと自負しているけれど、量、という点でいくと私達は弱い。広い範囲を少人数でカバーするには、どうしても限界がある。

部長が苦笑した。

「それもあんだろうが、それだけじゃねぇよ。他家の力があれば、いざって時に守れんだろ?」

「?」

「…すげぇ、落ち込んでたぞ、秀のやつ。お前に『怪我させた』『守れなかった』ってな」

「…」

あれ、か。秀がそこまで本気で気にしていたとは思わなかった。気にしていたとしても、それが原因で秀が大変な思いをすることまで、思い至らなかった。

―私は、もっとちゃんと、秀と話をすべきだった

「大丈夫」ってへらへらその場を誤魔化すんじゃなくて―

「…花守は、後が無いんだよ」

「あと?」

「元々、他家との関係はそこまで悪かなかったんだ。今みたいに、花守の要請を他家が蔑ろにすることもなかったしな」

部長の声には怒りがにじんでいる。

「秀が、去年の夏に一度やらかしちまったんだよ。幽界の出現を誤感知して、問題になった」

「…誤感知?」

部長の、『去年の夏』というフレーズが僅かに引っ掛かった―

「ああ。秀が感知したはずの門を、実行部隊の人間が見つけられなかったんだ。秀自身も、途中で反応を見失ったらしいしな」

「…」

秀の感知能力は相当のものだと思う。その秀が感知でミスをするとは考えにくいのだけれど―

「ただまあ、誤感知自体はそれほど問題じゃないんだよ。そんなもん、他の家の人間だって多かれ少なかれやってんだ。それよりも、感知に失敗した場所が場所でな。それがまずかった。『三島緑地公園』って知ってんだろ?」

「!?」

思いがけず、馴染みのある場所が出てきたことに驚く。嫌な、予感もする。

「秀はそこで『門』を感知したんだが、そこがまた、かなりでかい公園で人気ひとけも多い。しかも感知したのが昼間ということで、公園を一時的に封鎖するしかなかった。そんで、少なくない数の部署が動くことになった」

「行政レベルで」と続いた部長の言葉が、五家の持つ力の大きさを示している。

「で、まあ結局、門は発見されず、最終的に、秀の感知ミス、花守の過誤だってことになっちまった」

部長の言葉がグルグルと頭の中をめぐる。去年の夏、三島緑地公園―

「あの、ちなみにそれって、秀が門を感知したのがいつか、正確な日付ってわかりますか?」

「日付?んなもん知ってどうすんだ?」

「いいから、教えてください」

余裕がない。部長に掴みかかる勢いで尋ねた。

「あー、ちょっと待て」

スマホを取りだし、スケジュールを確認しだした部長が、液晶に目を落としたまま答える。

「7月の22日、だな」

「…22」

告げられた日付は、忘れもしないあの日。私があちらの世界へと渡り、そしてこちらの世界に戻って来た、まさにその日だった―

先程の嫌な予感が、確信に近い想像へと膨らむ。秀が感知したのは、幽界への門ではなく、チサが世界を繋いだ魔方陣、だったのではないだろうか?私達が世界を渡ったせいで、秀は周りから責められるような目にあってしまった?

「おいおい、何でお前がそんな死にそうな顔になってんだよ。あー、けどまあ、やらかしたこと自体はそんな大した問題じゃねぇんだよ。逆にそれまで秀が失敗無しって方がすごいんだからな?」

知らず俯いてしまっていた頭をガシガシと撫でられた。

「問題は、そん時の秀の失敗を口実に他家が花守を追い落とそうと動き出したってことなんだよ」

部隊の言葉に、再び苦い響きがのる。

「力の無い花守に守役筆頭は任せられない。『見る力』さえまともに持たない花守は、その座を降りろってことだな」

「…それなら、これからの働き次第で、花守は盛り返せるってことですか?」

私やチサが、秀に、花守に協力すれば―

「まあ、単純に考えればそうなんだが、そう簡単な話でもない」

「?」

「ほら、来たぞ。負けんなよ?」

「??」

良くわからない激励に首を傾げながらも、背後、部長の視線の先を確かめるべく、振り返った。




しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

処理中です...