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第八章(終章) それでも、私は
6.(終)
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6.
休み明け、大学で遭遇した来叶の行動は、今までと明らかに違っていた。こちらを認識した途端、露骨に顔をひきつらせて逃げていく姿に一抹の不安を感じてしまう。居合わせた部長に、思わず詰め寄った。
「部長、『全て上手くおさまった』って言ってませんでした?」
何の問題も無いから心配するなと、豪語していたはずなのだが。
「あ?大丈夫、大丈夫。気にすんな」
「気になりますよ!あれ、本当に大丈夫なんですか?」
「まあ、ちょっとな。あの男には、うちのもん総出で、お前の『強さ』について熱く語っちまったもんだから。少しはビビっちまってるかもしんねぇが、まあ、気にするな」
「…」
それはもしや、ケモ耳状態の皆さんによる熱い語りだったのだろうか―
うー、まあ、仕方ない、のか?何かもっと上手く誤魔化してもらえると思ってた。あんなに露骨に怯えられてたら、世間様に怪しまれそうな気がするんだけど。幽鬼退治って世を忍んで行われてるんじゃ?まあ、部長が良いって言うんだから、それでいいんだろうけど―
「明莉ちゃんが気になるなら、彼にはもう一度きちんと話をつけることも出来るよ?」
「ううん、大丈夫、要らない、大丈夫です!」
秀のつける『話』がどんなものかはわからないけど、何か、ヒヤリときたから即行でお断りした。
「そうだ、チサ!美歌の方は?もう、目、覚ましたんだよね?」
「…覚醒はしたけれど、やはり憑依されている間の記憶は無かった。念のため、もうしばらく入院することにはなってる」
「そか、そか」
結局、あの憑依型が何処から現れたのかまではわからなかったらしい。恐らく、前回取り逃がした個体だろうということで結論は出ているが、それが何処で、どのタイミングで美歌に取り付いたのかは全くの不明。
ただ―
「…精神的に参ってたのが、原因だったのかな?」
「そうだね。憑依型の特徴として、宿主の精神力が弱っている時ほど、深く潜り込まれてしまうから」
大学に現れた時はどうだったのだろう?チサや秀が感知出来なかったということは、まだ完全に乗っ取られていたわけではないはずで、だけど、普通の様子ではなかった美歌。今後、本人への聞き取り調査でわかることもあるだろうが、
「…幽鬼については、まだまだ研究の余地あり、ってことなんだね」
「だな。後は、橋架、お前の戦闘ノウハウも可能な限りで情報開示しろよ?法力効かないようなやつはともかく、憑依型ひっぺがすのは、俺らでも出来そうな気がすんだよな」
「なるほど。確かに、感覚掴んじゃえば、多分いけますよ」
頷けば、ニヤリと笑い返された。「早速、部室で作戦会議だ」という部長に苦笑する。
四人で歩き出す。ちょっと立ち止まってみた。三人が振り返る。差し出される手―
「行こう、明莉ちゃん?」
向けられた手に、手を伸ばす。伸ばした手には、リボンがアクセントの白の手袋。この可愛い手袋が、秀にとっての「私のイメージ」なのだそうだ。
手袋越し、秀の手に包まれた。
この手を―
これから先、私から手離すことは、決してない。だから、多分、きっと、私は無傷ではいられない。それでも、前を向いていられるのは、
この手がそばにいてくれるから―
(終)
休み明け、大学で遭遇した来叶の行動は、今までと明らかに違っていた。こちらを認識した途端、露骨に顔をひきつらせて逃げていく姿に一抹の不安を感じてしまう。居合わせた部長に、思わず詰め寄った。
「部長、『全て上手くおさまった』って言ってませんでした?」
何の問題も無いから心配するなと、豪語していたはずなのだが。
「あ?大丈夫、大丈夫。気にすんな」
「気になりますよ!あれ、本当に大丈夫なんですか?」
「まあ、ちょっとな。あの男には、うちのもん総出で、お前の『強さ』について熱く語っちまったもんだから。少しはビビっちまってるかもしんねぇが、まあ、気にするな」
「…」
それはもしや、ケモ耳状態の皆さんによる熱い語りだったのだろうか―
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「明莉ちゃんが気になるなら、彼にはもう一度きちんと話をつけることも出来るよ?」
「ううん、大丈夫、要らない、大丈夫です!」
秀のつける『話』がどんなものかはわからないけど、何か、ヒヤリときたから即行でお断りした。
「そうだ、チサ!美歌の方は?もう、目、覚ましたんだよね?」
「…覚醒はしたけれど、やはり憑依されている間の記憶は無かった。念のため、もうしばらく入院することにはなってる」
「そか、そか」
結局、あの憑依型が何処から現れたのかまではわからなかったらしい。恐らく、前回取り逃がした個体だろうということで結論は出ているが、それが何処で、どのタイミングで美歌に取り付いたのかは全くの不明。
ただ―
「…精神的に参ってたのが、原因だったのかな?」
「そうだね。憑依型の特徴として、宿主の精神力が弱っている時ほど、深く潜り込まれてしまうから」
大学に現れた時はどうだったのだろう?チサや秀が感知出来なかったということは、まだ完全に乗っ取られていたわけではないはずで、だけど、普通の様子ではなかった美歌。今後、本人への聞き取り調査でわかることもあるだろうが、
「…幽鬼については、まだまだ研究の余地あり、ってことなんだね」
「だな。後は、橋架、お前の戦闘ノウハウも可能な限りで情報開示しろよ?法力効かないようなやつはともかく、憑依型ひっぺがすのは、俺らでも出来そうな気がすんだよな」
「なるほど。確かに、感覚掴んじゃえば、多分いけますよ」
頷けば、ニヤリと笑い返された。「早速、部室で作戦会議だ」という部長に苦笑する。
四人で歩き出す。ちょっと立ち止まってみた。三人が振り返る。差し出される手―
「行こう、明莉ちゃん?」
向けられた手に、手を伸ばす。伸ばした手には、リボンがアクセントの白の手袋。この可愛い手袋が、秀にとっての「私のイメージ」なのだそうだ。
手袋越し、秀の手に包まれた。
この手を―
これから先、私から手離すことは、決してない。だから、多分、きっと、私は無傷ではいられない。それでも、前を向いていられるのは、
この手がそばにいてくれるから―
(終)
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