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第33話 今度こそ、大人気間違いなしです
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「それでは、ここからは私のパートナーに交代して、アイテムの効果を見ていただきましょう」
おれはフィリアと交代。スマホを受け取り、カメラをフィリアに向ける。
フィリアは緊張気味に、丁寧にお辞儀した。
「初めまして。リアルモンスタースレイヤー様のパートナーを務めております、フィリアと申します。お見知りおきくださいませ」
さっそく筒状のアイテムを持って、精一杯の笑みを浮かべる。
「このアイテムは、簡単に申しますと魔物除けです。これひとつあれば、なんと第1階層に生息する4種類すべての魔物から身を守ることができるのです」
フィリアはバックパックに筒状のアイテムをぶら下げて、迷宮の奥へ進んでいく。
ちりん、ちりん、と音が鳴る。
「聞こえますでしょうか? こちら、使用中のときにのみ鈴の音が鳴ります。ウルフベアは臆病なので基本的には人間を避けるのです。なのでこのように、人がいますよ、と音を鳴らしていれば、まず近づいてきません。熊除けの鈴のようなものです」
てくてく歩いていくと、目の前にエッジラビットが現れる。
「賢明な視聴者様なら予想しておられたでしょう。音を出していると、音に敏感なエッジラビット――ドウクツヤイバウサギがやってきます。これはピンチでしょうか? いいえ、まったく問題になりませんっ!」
喋っているうちに緊張がほぐれてきたのか、フィリアはだんだんとテンションが高くなっていく。
「そう、このアイテムの効果です。先ほど、この部分をスライドさせて開けたとき、その摩擦熱で内部に着火しております。動画ではお伝えできませんが、いま、わたくしたちの周囲には嗅ぎ慣れない不思議な香りが漂っております。その効果をご覧ください」
フィリアはしゃがみ込み、エッジラビットを抱き上げる。暴れもせず、大人しくしている。
「普段は凶暴に思えるエッジラビットも、いかがでしょう? こんなにも愛らしい小動物に早変わりです」
その白いもふもふを、満面の笑みでなでなでし続けるフィリアである。
可愛いからおれは文句は言わない。が、美幸はカンペで『尺、取りすぎ』とツッコんだ。彼女もすっかりノリノリだ。
ハッとして、フィリアはエッジラビットを解放する。
「秘密はこの香りにあります。エッジラビットの好む匂いが混ぜられており、彼らはこの匂いをまとうわたくしたちを仲間だと思い込んでくれているのです」
そうしてまた歩き始めると、何匹かのエッジラビットがついてくる。
それらを指し示し、「ほらね?」とばかりに微笑む。
「また、この香りにはミュータスリザード――ドウクツオオトカゲが嫌う成分も含まれており、まず近寄ってくることはありません」
そして最後に、天井を指し示す。
「さらに、よくエッジラビットとの戦闘中に襲いかかってくるステルスキャット――ドウクツサカサネコですが、彼らは基本的に、他の魔物が襲っているときに便乗したり、あるいは倒した獲物を掠め取る、といったことしかしません。他の魔物に襲われない以上、ステルスキャットにも襲われることはないのです」
そこで立ち止まり、カメラに向かってアイテム――魔物除けを掲げてみせる。
「以上で、アイテムの説明を終わります。迷宮探索が安全になる魔物除け、近日発売いたしますので、是非ともお試しくださいませ!」
そして最後の決め顔である。決め顔というか、ドヤ顔になってしまっているが。
「それでは最後に、実際に使ってくださった方のメッセージをご覧ください」
にこり、と微笑んだところで録画停止。
「はい、オーケー。撮影終了」
フィリアは大きく深呼吸した。
「わたくし、ちゃんとできていたでしょうか?」
「バッチリだったよ。サムネイルは、フィリアさんがエッジラビットを抱いてるところにしよう。絵になってたから、きっと伸びるよ」
「それでしたら一条様が戦っている姿のほうが良いのでは? まさに英雄という感じで、とても素敵でしたよ」
「いや、フィリアさんがいい」
「いいえ、一条様です」
「ふたりとも、そんなことで喧嘩しないの。仲良いわね、本当」
そこに笑いながら美幸が割って入る。
「それより、使ってくれた人のメッセージって?」
「ああ、実はこの試作品、出来上がってすぐテストしておいたんですよ。紗夜ちゃんが手伝ってくれて」
「あら、そうだったの」
「できることなら、末柄様にもお願いしたいのですが……やはり、難しいでしょうか。この動画を見られたら、この島にいると知られてしまいますし」
「そうね、顔が映るのはダメだけど……モザイクとかで加工してくれるならいいと思うわ」
「よろしいのですか?」
「ええ、一条くんにもフィリアちゃんにもすっかりお世話になっちゃってるもの。大したお返しにはならないけど、これくらいはさせて」
「そういうことでしたら、ぜひ!」
こうしておれたちは、美幸の採掘シーンとコメントも撮影した。もちろん魔物に襲われることはなく、無事に作業を終えることができた。
動画は編集の際に、顔のみならず全身にぼかしを入れ、声も変えておいた。なにも問題はないはずだ。
そしてクオリティも、きっと悪くない。
「今度こそ、大人気間違いなしですっ!」
完成した動画の出来にご満悦のフィリアは、るんるんと体を揺らしながら、アップロードボタンを押すのだった。
動画タイトルは『リアルモンスタースレイヤーの迷宮攻略とアイテム紹介』。
さて、本当に大人気になるかな?
おれたちは期待に胸を膨らませながら、その結果を待った。
おれはフィリアと交代。スマホを受け取り、カメラをフィリアに向ける。
フィリアは緊張気味に、丁寧にお辞儀した。
「初めまして。リアルモンスタースレイヤー様のパートナーを務めております、フィリアと申します。お見知りおきくださいませ」
さっそく筒状のアイテムを持って、精一杯の笑みを浮かべる。
「このアイテムは、簡単に申しますと魔物除けです。これひとつあれば、なんと第1階層に生息する4種類すべての魔物から身を守ることができるのです」
フィリアはバックパックに筒状のアイテムをぶら下げて、迷宮の奥へ進んでいく。
ちりん、ちりん、と音が鳴る。
「聞こえますでしょうか? こちら、使用中のときにのみ鈴の音が鳴ります。ウルフベアは臆病なので基本的には人間を避けるのです。なのでこのように、人がいますよ、と音を鳴らしていれば、まず近づいてきません。熊除けの鈴のようなものです」
てくてく歩いていくと、目の前にエッジラビットが現れる。
「賢明な視聴者様なら予想しておられたでしょう。音を出していると、音に敏感なエッジラビット――ドウクツヤイバウサギがやってきます。これはピンチでしょうか? いいえ、まったく問題になりませんっ!」
喋っているうちに緊張がほぐれてきたのか、フィリアはだんだんとテンションが高くなっていく。
「そう、このアイテムの効果です。先ほど、この部分をスライドさせて開けたとき、その摩擦熱で内部に着火しております。動画ではお伝えできませんが、いま、わたくしたちの周囲には嗅ぎ慣れない不思議な香りが漂っております。その効果をご覧ください」
フィリアはしゃがみ込み、エッジラビットを抱き上げる。暴れもせず、大人しくしている。
「普段は凶暴に思えるエッジラビットも、いかがでしょう? こんなにも愛らしい小動物に早変わりです」
その白いもふもふを、満面の笑みでなでなでし続けるフィリアである。
可愛いからおれは文句は言わない。が、美幸はカンペで『尺、取りすぎ』とツッコんだ。彼女もすっかりノリノリだ。
ハッとして、フィリアはエッジラビットを解放する。
「秘密はこの香りにあります。エッジラビットの好む匂いが混ぜられており、彼らはこの匂いをまとうわたくしたちを仲間だと思い込んでくれているのです」
そうしてまた歩き始めると、何匹かのエッジラビットがついてくる。
それらを指し示し、「ほらね?」とばかりに微笑む。
「また、この香りにはミュータスリザード――ドウクツオオトカゲが嫌う成分も含まれており、まず近寄ってくることはありません」
そして最後に、天井を指し示す。
「さらに、よくエッジラビットとの戦闘中に襲いかかってくるステルスキャット――ドウクツサカサネコですが、彼らは基本的に、他の魔物が襲っているときに便乗したり、あるいは倒した獲物を掠め取る、といったことしかしません。他の魔物に襲われない以上、ステルスキャットにも襲われることはないのです」
そこで立ち止まり、カメラに向かってアイテム――魔物除けを掲げてみせる。
「以上で、アイテムの説明を終わります。迷宮探索が安全になる魔物除け、近日発売いたしますので、是非ともお試しくださいませ!」
そして最後の決め顔である。決め顔というか、ドヤ顔になってしまっているが。
「それでは最後に、実際に使ってくださった方のメッセージをご覧ください」
にこり、と微笑んだところで録画停止。
「はい、オーケー。撮影終了」
フィリアは大きく深呼吸した。
「わたくし、ちゃんとできていたでしょうか?」
「バッチリだったよ。サムネイルは、フィリアさんがエッジラビットを抱いてるところにしよう。絵になってたから、きっと伸びるよ」
「それでしたら一条様が戦っている姿のほうが良いのでは? まさに英雄という感じで、とても素敵でしたよ」
「いや、フィリアさんがいい」
「いいえ、一条様です」
「ふたりとも、そんなことで喧嘩しないの。仲良いわね、本当」
そこに笑いながら美幸が割って入る。
「それより、使ってくれた人のメッセージって?」
「ああ、実はこの試作品、出来上がってすぐテストしておいたんですよ。紗夜ちゃんが手伝ってくれて」
「あら、そうだったの」
「できることなら、末柄様にもお願いしたいのですが……やはり、難しいでしょうか。この動画を見られたら、この島にいると知られてしまいますし」
「そうね、顔が映るのはダメだけど……モザイクとかで加工してくれるならいいと思うわ」
「よろしいのですか?」
「ええ、一条くんにもフィリアちゃんにもすっかりお世話になっちゃってるもの。大したお返しにはならないけど、これくらいはさせて」
「そういうことでしたら、ぜひ!」
こうしておれたちは、美幸の採掘シーンとコメントも撮影した。もちろん魔物に襲われることはなく、無事に作業を終えることができた。
動画は編集の際に、顔のみならず全身にぼかしを入れ、声も変えておいた。なにも問題はないはずだ。
そしてクオリティも、きっと悪くない。
「今度こそ、大人気間違いなしですっ!」
完成した動画の出来にご満悦のフィリアは、るんるんと体を揺らしながら、アップロードボタンを押すのだった。
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さて、本当に大人気になるかな?
おれたちは期待に胸を膨らませながら、その結果を待った。
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