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第47話 ステータスカード
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「ステータスカード? ステータスと聞くと、テレビゲームを連想してしまいますね」
「実際、RPGに出てくるステータスを思い浮かべてくれていい。それを可視化できるカードだ」
サイズはキャッシュカードや免許証などと同じだ。
「さっそく試してみましょう」
フィリアは持ってきていた針で自分の指を刺す。出てきた血のしずくを、ステータスカードの規定の位置に押し付ける。
それからステータスカードを手に取り、自分の頭から腕、胴、足へと滑らせるように移動させていった。
「今の動作で、カードにわたくしの能力を読み取らせました。ご覧ください」
フィリアがあらためてカードを置き、しばらくすると文字が赤く浮き上がってくる。
体力/最大体力 :5/85
魔力/最大魔力 :0/120
筋力/最大筋力 :4/60
敏捷性/最大敏捷性:5/90
抵抗力/最大抵抗力:3/50
「この数字は……?」
「使用者の能力を数値化したものです」
フィリア曰く、カードには魔力回路というものを刻んでいるのだそうだ。
こちらの世界でいう電子回路の魔法版のようなもので、魔力回路に魔力を供給すると、組まれた回路通りに自動的に魔法を発動させる。
おれが異世界で活動していた時期にはなかった技術だ。
「このカードは、使用者の血と大気中の魔素を反応させて発生させた微弱な魔力で起動しております。そして血液と身体全体を読み取らせ、どれだけ、そしてどのように魔素を活用できる状態かを診断したのです」
「左側の数字が今の状態だ。魔素のほとんどない迷宮外にいるから数値が低い。そして右側の最大値は、濃厚な魔素に満ちた異世界での能力値になる」
「迷宮の第1階層ではまだ魔素が薄いので、現在値に、最大値の数パーセントが加算される程度かと」
おれたちの説明を受けて、丈二は興味深げにステータスカードを手に取り、まじまじと見つめた。
「……他の項目はわかりますが、この魔力というのは? このカードの起動にも魔力が使われているとのことですが……。魔力というと魔法のイメージなのですが」
「そのイメージで合ってるよ。異世界には、魔法が存在する。こちらの世界でも、魔素を活用できるようなれば、訓練次第で誰でも使えるようになる」
ごくり、と丈二は息を呑んだ。驚きというより、好奇心の顔。
「ではやはりあの動画でグリフォンを撃ったのは魔法でしたか。訓練次第で誰でも、というと、それは例えば私でも?」
「充分に魔素に慣れて……そうだな、このステータスカードの最大魔力が10くらいあれば、第1階層でも初歩魔法くらいは使えるはずだ」
「それは……心が躍りますね。魔法には詠唱などは必要なのでしょうか?」
「詠唱は必要ありませんが、意識を集中するために短く掛け声を上げる方はいらっしゃいます」
「おれがそのタイプだ」
「では、どんな言葉でもいいのですね。それはいい。少年時代を思い出します。実家からノートを取り寄せなければ……」
「ノート?」
丈二はハッとして、小さく咳払い。
「失礼。私的な話でした。ともかく、これで各冒険者の能力は即座に把握できるわけですね」
「そう。たぶん第1階層の魔素じゃ、どこかで成長が頭打ちになる。そこまで育った冒険者なら、第2階層に挑戦してもいいはずだ」
「階層1、階層2と言えそうですね。いい基準になります」
「そこで、だ。これはフィリアさんのアイディアなんだけど、冒険者たちの成長を促す意味も込めて、能力に応じて仕事を斡旋する制度を作ってみてはどうだろう?」
「いわゆる冒険者ギルド、ですか?」
丈二はあくまで冷静だが、どこか楽しそうでもある。
そんな彼の質問に、フィリアが返答する。
「はい。異世界では、様々な依頼を冒険者ギルドに集約し、冒険者に斡旋しておりました。ランク制を採用しており、難易度Bのお仕事なら、B級以上の冒険者やパーティのみが受注できる……といったシステムになっております」
ちなみに冒険者のランク制もおれの時代にはなかった。いいシステムだ。
「いいですね。今のところ、冒険者の方々は獲物を狩って稼いでばかりですが、本当はもっと色々な仕事をお願いしたかったのです。これなら頼みやすい」
「ついでに、実力以上のことをしようとして、引退や死亡する例を減らせる」
丈二は上機嫌にうんうん、と頷く。
「面白くなりそうです。現行のやり方を、大きく見直しましょう。一条さんが提案してくださっていたパーティ制も、一緒に採用いたします」
「期待してるよ。法改正には時間がかかるだろうけど」
「いえ、それほど時間はかけません。今でもある程度は融通が利きますので。どうしても改正が必要なところは、試験運用とでも言っておけばいいのです。やっているうちに法律が追いつきますよ」
「思ったよりやり手なのかな、丈二さん?」
「いいえ、私より上の者たちこそ、あなたのご意見を尊重したがっているのですよ」
そして丈二はにやりと笑った。
「まあ見ていてください。すぐにやってみせますから」
「実際、RPGに出てくるステータスを思い浮かべてくれていい。それを可視化できるカードだ」
サイズはキャッシュカードや免許証などと同じだ。
「さっそく試してみましょう」
フィリアは持ってきていた針で自分の指を刺す。出てきた血のしずくを、ステータスカードの規定の位置に押し付ける。
それからステータスカードを手に取り、自分の頭から腕、胴、足へと滑らせるように移動させていった。
「今の動作で、カードにわたくしの能力を読み取らせました。ご覧ください」
フィリアがあらためてカードを置き、しばらくすると文字が赤く浮き上がってくる。
体力/最大体力 :5/85
魔力/最大魔力 :0/120
筋力/最大筋力 :4/60
敏捷性/最大敏捷性:5/90
抵抗力/最大抵抗力:3/50
「この数字は……?」
「使用者の能力を数値化したものです」
フィリア曰く、カードには魔力回路というものを刻んでいるのだそうだ。
こちらの世界でいう電子回路の魔法版のようなもので、魔力回路に魔力を供給すると、組まれた回路通りに自動的に魔法を発動させる。
おれが異世界で活動していた時期にはなかった技術だ。
「このカードは、使用者の血と大気中の魔素を反応させて発生させた微弱な魔力で起動しております。そして血液と身体全体を読み取らせ、どれだけ、そしてどのように魔素を活用できる状態かを診断したのです」
「左側の数字が今の状態だ。魔素のほとんどない迷宮外にいるから数値が低い。そして右側の最大値は、濃厚な魔素に満ちた異世界での能力値になる」
「迷宮の第1階層ではまだ魔素が薄いので、現在値に、最大値の数パーセントが加算される程度かと」
おれたちの説明を受けて、丈二は興味深げにステータスカードを手に取り、まじまじと見つめた。
「……他の項目はわかりますが、この魔力というのは? このカードの起動にも魔力が使われているとのことですが……。魔力というと魔法のイメージなのですが」
「そのイメージで合ってるよ。異世界には、魔法が存在する。こちらの世界でも、魔素を活用できるようなれば、訓練次第で誰でも使えるようになる」
ごくり、と丈二は息を呑んだ。驚きというより、好奇心の顔。
「ではやはりあの動画でグリフォンを撃ったのは魔法でしたか。訓練次第で誰でも、というと、それは例えば私でも?」
「充分に魔素に慣れて……そうだな、このステータスカードの最大魔力が10くらいあれば、第1階層でも初歩魔法くらいは使えるはずだ」
「それは……心が躍りますね。魔法には詠唱などは必要なのでしょうか?」
「詠唱は必要ありませんが、意識を集中するために短く掛け声を上げる方はいらっしゃいます」
「おれがそのタイプだ」
「では、どんな言葉でもいいのですね。それはいい。少年時代を思い出します。実家からノートを取り寄せなければ……」
「ノート?」
丈二はハッとして、小さく咳払い。
「失礼。私的な話でした。ともかく、これで各冒険者の能力は即座に把握できるわけですね」
「そう。たぶん第1階層の魔素じゃ、どこかで成長が頭打ちになる。そこまで育った冒険者なら、第2階層に挑戦してもいいはずだ」
「階層1、階層2と言えそうですね。いい基準になります」
「そこで、だ。これはフィリアさんのアイディアなんだけど、冒険者たちの成長を促す意味も込めて、能力に応じて仕事を斡旋する制度を作ってみてはどうだろう?」
「いわゆる冒険者ギルド、ですか?」
丈二はあくまで冷静だが、どこか楽しそうでもある。
そんな彼の質問に、フィリアが返答する。
「はい。異世界では、様々な依頼を冒険者ギルドに集約し、冒険者に斡旋しておりました。ランク制を採用しており、難易度Bのお仕事なら、B級以上の冒険者やパーティのみが受注できる……といったシステムになっております」
ちなみに冒険者のランク制もおれの時代にはなかった。いいシステムだ。
「いいですね。今のところ、冒険者の方々は獲物を狩って稼いでばかりですが、本当はもっと色々な仕事をお願いしたかったのです。これなら頼みやすい」
「ついでに、実力以上のことをしようとして、引退や死亡する例を減らせる」
丈二は上機嫌にうんうん、と頷く。
「面白くなりそうです。現行のやり方を、大きく見直しましょう。一条さんが提案してくださっていたパーティ制も、一緒に採用いたします」
「期待してるよ。法改正には時間がかかるだろうけど」
「いえ、それほど時間はかけません。今でもある程度は融通が利きますので。どうしても改正が必要なところは、試験運用とでも言っておけばいいのです。やっているうちに法律が追いつきますよ」
「思ったよりやり手なのかな、丈二さん?」
「いいえ、私より上の者たちこそ、あなたのご意見を尊重したがっているのですよ」
そして丈二はにやりと笑った。
「まあ見ていてください。すぐにやってみせますから」
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