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第108話 きっと大きく利益を出してみせます
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「というわけで、グリフィンの群れと友達になれたよ。屋敷の庭に住んでもらってる。古くて生活には不便だけど、今の状態でも安全地帯として使えはすると思う」
地上に戻ってきてさっそく、丈二に今回の首尾を話した。
「それは良かった。グリフィンにも乗ってみたのですか?」
「うん。乗ったけど……」
と、隣のフィリアに目を向ける。その時のことを思い出したのか、フィリアはちょっと身を縮こませた。
「高くて怖いですし、風で目も開けていられませんし、寒いですし……。乗るときには対策の必要があります。手綱とか、落下防止のベルトなどもあったほうがいいです。絶対必要です」
割と必死な訴えに、丈二は苦笑する。
「そうでしたか……。アニメのように格好良くはいきませんでしたか」
「全部装着したら、それはそれで格好いいかもよ? ヘルメットとフライトジャケットを付けたグリフィンライダー」
「ふむ……ファンタジー風味が薄れてしまいますが、それはそれで良しですね。ところで、ロザリンデさんの様子はいかがでしたか?」
「ああ、元気そうだったよ。一緒に冒険を楽しんでくれてた。けど、懸念がないわけでもない」
「どんな懸念ですか。体調を崩されることでもあったのですか」
丈二は身を乗り出して、声がやや強まる。
おれは、屋敷でロザリンデが丈二の血痕に不思議な反応を見せた件を話した。そして吸血衝動が高まることによって、人を害するようになる可能性も。
「……ですが、そのような様子は一度しか見せていないのですよね? そうなると決まったわけではないのですよね?」
「もちろん、まだどうなるかわからない。だから観察を続けるんだ。問題があったとしても、それをよく理解すれば、過去の友好的な上級吸血鬼の例から、対処法を見つけられるかもしれない」
「……わかりました。肝に銘じておきます。私も、なにか違和感を見つけたら報告します」
「よろしく頼むよ。万が一のときには、退治しなくちゃいけなくなる。けど、そんなことはしたくない。ロゼちゃんは友達だ」
「私だってそうです」
静かだが、気持ちの入った返事だった。
しばしの沈黙。やがて丈二は、思い出したように口にした。
「そういえば朗報があるのでした。あの屋敷を修繕する件に関しては、やはり予算は出ませんが、その代わり、私たちの一存で自由にして良いということになりましたよ」
「おお、それは良かった。色々試したいことがあったし、自由にやらせてもらえるならありがたいよ」
「さらに。それならばと、宿やそれに付随する商売での収益も私たちで頂く、という条件もねじ込んでおきました。もちろん赤字も黒字も私たち次第ですが……」
フィリアは、ぱぁっと花が咲くように笑顔になった。
「本当ですかっ、ありがとうございます! うふふっ、きっと大きく利益を出してみせます」
ウキウキでノリノリのフィリアだが、丈二はあくまで冷静だ。
「とはいえ初期投資はきついですよ。業者に修繕を依頼するとして、建材や道具をどうやってあそこまで運び込むか。それに輸送中、工事中の護衛も必要です。私たちがずっとついているわけにはいきませんし」
「それについては、いくつかアイディアがあるのです。物資の輸送には、仲良くなったグリフィンさんたちに手伝ってもらえるかと思います」
「なるほど、確かにあの巨体なら輸送力もかなりのものになりそうですね。護衛も最小限で済みますか」
「工事後も、宿で使う食料や日用品の運送を担えるかと思います。さらに人も、です。第2階層の好きな場所へ飛んで運べるのなら、それはもう大人気になるはずです」
丈二は感心して頷いた。
「それは確かに。第2階層入口から宿までの直行便もあれば便利です。しかし、それはどなたが担当を? 私も出勤にグリフィンを使うつもりでしたが、だからといって私にはやる余裕はありませんし……」
「はい。担当者は募集しようかと」
「募集ですか? 冒険者の中から?」
「そうです。異世界でも冒険者の中には、輸送専門の方々もいらっしゃいました。お仕事の種類は多いほうが、それぞれの能力をより活かせるようになるかと思います」
おれも補足する。
「宿の管理人も募集したいと思ってるんだ。それと、売店も作って色々と売ろうと思うから、その店員さんもね。基本的には住み込みで常駐。お給料の額は、要相談かな。どう思う?」
「ふぅむ……探索に出れる冒険者が減るのは少々難点ですが、それ以上のメリットがありますね。迷宮内の宿、売店に、ファストトラベル……」
「屋敷には部屋も多いから、月単位で貸すのもありだと思ってるんだ」
「それもいいかもしれません。求人情報と入居者募集を提示してみましょうか」
「そうしよう。メッセージアプリのほうからの通知もよろしくね」
「ではでは、今回の動画のほうでも募集の旨を追加しておきますね」
フィリアが言うと、丈二は頷く。
「ええ、グリフィンライダーに憧れて、冒険者を目指す人も出てくるかもしれません。来期の冒険者がどれだけ増えるか楽しみです。ですが、ロザリンデさんはあまり映さないようにしてくださいよ?」
「不自然にならない程度に善処いたしますね」
「まったく。丈二さんは独占欲強いなぁ」
「そういうつもりではないのですが……」
丈二は誤魔化すように咳払い。
「それはともかく、さっそく建築業者に声をかけておきます。第1階層に作る施設と同時進行になるので、少々忙しくなりそうですが」
「適度に休んで、ロゼちゃんに会いに行くようにね?」
「それはもちろんですよ」
「おれたちも、屋敷の設備を魔力回路化できるよう動くよ。それと、ミリアムさんと敬介くんの様子も確認しに行かないとね」
「はい。ですが、まずは動画公開です。今回もきっと、大人気間違いなしです」
その後、フィリアは例のごとく夜更かしして、動画を仕上げたのだ。
内容としては、グリフィンとの殴り合いから始まり、一緒に食事をしたり、飛行したり、巣作りしたりといった一連の様子を収め、最後に求人や入居者募集広告を入れるものとなった。
タイトルは『グリフィンと仲良しになってみた』だ。
地上に戻ってきてさっそく、丈二に今回の首尾を話した。
「それは良かった。グリフィンにも乗ってみたのですか?」
「うん。乗ったけど……」
と、隣のフィリアに目を向ける。その時のことを思い出したのか、フィリアはちょっと身を縮こませた。
「高くて怖いですし、風で目も開けていられませんし、寒いですし……。乗るときには対策の必要があります。手綱とか、落下防止のベルトなどもあったほうがいいです。絶対必要です」
割と必死な訴えに、丈二は苦笑する。
「そうでしたか……。アニメのように格好良くはいきませんでしたか」
「全部装着したら、それはそれで格好いいかもよ? ヘルメットとフライトジャケットを付けたグリフィンライダー」
「ふむ……ファンタジー風味が薄れてしまいますが、それはそれで良しですね。ところで、ロザリンデさんの様子はいかがでしたか?」
「ああ、元気そうだったよ。一緒に冒険を楽しんでくれてた。けど、懸念がないわけでもない」
「どんな懸念ですか。体調を崩されることでもあったのですか」
丈二は身を乗り出して、声がやや強まる。
おれは、屋敷でロザリンデが丈二の血痕に不思議な反応を見せた件を話した。そして吸血衝動が高まることによって、人を害するようになる可能性も。
「……ですが、そのような様子は一度しか見せていないのですよね? そうなると決まったわけではないのですよね?」
「もちろん、まだどうなるかわからない。だから観察を続けるんだ。問題があったとしても、それをよく理解すれば、過去の友好的な上級吸血鬼の例から、対処法を見つけられるかもしれない」
「……わかりました。肝に銘じておきます。私も、なにか違和感を見つけたら報告します」
「よろしく頼むよ。万が一のときには、退治しなくちゃいけなくなる。けど、そんなことはしたくない。ロゼちゃんは友達だ」
「私だってそうです」
静かだが、気持ちの入った返事だった。
しばしの沈黙。やがて丈二は、思い出したように口にした。
「そういえば朗報があるのでした。あの屋敷を修繕する件に関しては、やはり予算は出ませんが、その代わり、私たちの一存で自由にして良いということになりましたよ」
「おお、それは良かった。色々試したいことがあったし、自由にやらせてもらえるならありがたいよ」
「さらに。それならばと、宿やそれに付随する商売での収益も私たちで頂く、という条件もねじ込んでおきました。もちろん赤字も黒字も私たち次第ですが……」
フィリアは、ぱぁっと花が咲くように笑顔になった。
「本当ですかっ、ありがとうございます! うふふっ、きっと大きく利益を出してみせます」
ウキウキでノリノリのフィリアだが、丈二はあくまで冷静だ。
「とはいえ初期投資はきついですよ。業者に修繕を依頼するとして、建材や道具をどうやってあそこまで運び込むか。それに輸送中、工事中の護衛も必要です。私たちがずっとついているわけにはいきませんし」
「それについては、いくつかアイディアがあるのです。物資の輸送には、仲良くなったグリフィンさんたちに手伝ってもらえるかと思います」
「なるほど、確かにあの巨体なら輸送力もかなりのものになりそうですね。護衛も最小限で済みますか」
「工事後も、宿で使う食料や日用品の運送を担えるかと思います。さらに人も、です。第2階層の好きな場所へ飛んで運べるのなら、それはもう大人気になるはずです」
丈二は感心して頷いた。
「それは確かに。第2階層入口から宿までの直行便もあれば便利です。しかし、それはどなたが担当を? 私も出勤にグリフィンを使うつもりでしたが、だからといって私にはやる余裕はありませんし……」
「はい。担当者は募集しようかと」
「募集ですか? 冒険者の中から?」
「そうです。異世界でも冒険者の中には、輸送専門の方々もいらっしゃいました。お仕事の種類は多いほうが、それぞれの能力をより活かせるようになるかと思います」
おれも補足する。
「宿の管理人も募集したいと思ってるんだ。それと、売店も作って色々と売ろうと思うから、その店員さんもね。基本的には住み込みで常駐。お給料の額は、要相談かな。どう思う?」
「ふぅむ……探索に出れる冒険者が減るのは少々難点ですが、それ以上のメリットがありますね。迷宮内の宿、売店に、ファストトラベル……」
「屋敷には部屋も多いから、月単位で貸すのもありだと思ってるんだ」
「それもいいかもしれません。求人情報と入居者募集を提示してみましょうか」
「そうしよう。メッセージアプリのほうからの通知もよろしくね」
「ではでは、今回の動画のほうでも募集の旨を追加しておきますね」
フィリアが言うと、丈二は頷く。
「ええ、グリフィンライダーに憧れて、冒険者を目指す人も出てくるかもしれません。来期の冒険者がどれだけ増えるか楽しみです。ですが、ロザリンデさんはあまり映さないようにしてくださいよ?」
「不自然にならない程度に善処いたしますね」
「まったく。丈二さんは独占欲強いなぁ」
「そういうつもりではないのですが……」
丈二は誤魔化すように咳払い。
「それはともかく、さっそく建築業者に声をかけておきます。第1階層に作る施設と同時進行になるので、少々忙しくなりそうですが」
「適度に休んで、ロゼちゃんに会いに行くようにね?」
「それはもちろんですよ」
「おれたちも、屋敷の設備を魔力回路化できるよう動くよ。それと、ミリアムさんと敬介くんの様子も確認しに行かないとね」
「はい。ですが、まずは動画公開です。今回もきっと、大人気間違いなしです」
その後、フィリアは例のごとく夜更かしして、動画を仕上げたのだ。
内容としては、グリフィンとの殴り合いから始まり、一緒に食事をしたり、飛行したり、巣作りしたりといった一連の様子を収め、最後に求人や入居者募集広告を入れるものとなった。
タイトルは『グリフィンと仲良しになってみた』だ。
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