続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第一章 新年の風来る 

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「待って、悟空。あの……」
 玄奘は磁路に呼びかけた。

「なんだ、玄奘。何事にも真剣に取り組むそなたは、私の説諭に納得してくれるだろうの」

「……えっと、たしかに磁路さんの仰ることはもっともだと考えるのですが、私は運動能力や持久性に自信がないので……、その、ダンスはたぶん、……難しいというか」

 磁路は任せとけというように胸を叩いた。
「安心せられい、玄奘。ダンスコーチは優秀な専門家に既に依頼済みじゃ。初心者にもわかりやすく、ハイレベルの指導も可能だと評判であるからして一片たりとも心配はご無用だ」

 それでも玄奘の顔色は晴れなかった。
「……そうですね」

「さあ、明日には新年のご挨拶配信である。今年も忙しくなるから張り切っていこうぞ」
 磁路は気合を入れるべく両手をぱちんと叩いて言った。対するジャニ西の面々は相変わらず曇ったままだ。正直、まだ磁路の提案を受け入れきれていない、というより、まず欲しいのは正月休みなのである。

 八戒は口を尖らせて正直に不満を漏らした。
「俺たち、年末も休みなく働いてきたのに年始休みもねえなんてありえねえよ。観音様を社長に頂く事務所がブラックでいいのかよ、ちょっとくらい休みくれたっていいだろう?新しいことに挑戦するにしたって、まずは休養をとって体力と気力を回復させてからじゃないとさあ」

 八戒の熱弁を聞き、磁路はふと顎に手をやり、考える姿勢を見せた。
「正月休み……か。そうか。我々、正月は旧正月で祝う故、見落としていたの。そうか、それぞれ実家へ帰省する配慮も必要であったな」

「うわぁ、下界にだいぶ慣れてきてるくせに、都合のいい時だけ天界人ぶって白々しいなあ」

「人間の磁路真じろまこととして振る舞う年数はそれなりにこなしてきたが、マネージャー業はそなたらが初めてだからの。とりあえず、明日の正午の配信終了後から二日はフリーにしておこう」

 磁路の提案に目を輝かせた三人だったが、八戒だけはまだ不満そうに鼻を鳴らした。

「二日なんて帰省するには足りねえよ」


「八戒は帰省予定であるのか?」

「違うけどぉ。玄奘は……しないか。悟浄は?」

 玄奘は実家にいる父から芸能活動を禁止され家に軟禁されるという強硬手段をとられた過去があり、そのわだかまりは一応解消したものの、まだ感情の雪解けには至っていないらしい。玄奘は黙って首を振ったのみだった。

 同時に尋ねられた悟浄も「帰ってもすることがござらん」と首を振った。
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