5 / 95
第一章 新年の風来る
5
しおりを挟む
「後光が射して見えるでござる……」
悟浄が秘仏を拝む感覚で感極まっている横で、悟空も自分の心臓がぎゅっと鷲掴みにされるような感覚がある。推しの一挙手一投足ですべてが報われるような気がしていたVtuber konzenのオタクだったときの気持ちがたちまち蘇ってくる。
「おれ……拝むんなら初詣より玄奘がいい」
言った傍から悟空は既に手を合わせている。八戒も真似しながら、片手は中空の見えないボタンを探すように動かしている。
「だよなあ。久しぶりにkonzen推してたときの勢い思い出したわ。どっかに課金ボタンないのかな。押してえなあ。『尊い!』スタンプと一緒にスパチャしたいわ」
「それな」
悟空が完全同意、というように深く頷きながら言うと、その隙に悟浄はすでに万札を玄奘の手に握らせようとしている。
「お布施でござる……」
「抜けがけすんな!おれにも課金させろ!」
悟空が財布を出しながら悟浄を押しのけようとする。八戒もその隙に尻と腹を突き出して悟空らを付きとばそうとしながら、札束をひらめかせた。
「konzenの常連ランカー様はなんてたって俺だからさあ、ね?」
「み、みんな……、私だけじゃなくて、もう全員が推される側なんだから、ね?」
玄奘は相手を制するように手のひらを向けたが、それでも納得しない三人は財布をしまおうとしない。
悟浄はまた距離をつめてぼそっと呟きながら渡そうとする。
「では、……これはお年玉、ということで良いでござる」
「お、おれもお年玉玄奘に渡すっ!」
「俺、可愛いポチ袋持ってた気がするなあ」
三人がもみ合っていると、小柄な人影が三人の前を通り過ぎながら彼らの握りしめた札束を回収していった。
「はい、どうもー。Vtuber konzenへのお年玉、ありがとうございまぁす」
玉竜であった。主に技術面のサポートをしながら、玄奘と二人三脚でVtuber konzenの活動を行っていた学友だ。ジャニ西のデビュー後は彼らと同様に事務所シャカシャカに所属しながら作曲活動を行っている。玉竜は実家が海運業を営む名家の出であるせいか、佇まいに気品がある。今日も丈の長いダッフルコートを着こなしており、お坊ちゃん風だ。
「ちょっ……お前」「お主への課金ではござらん」「そういうのドロボーって言うんだぞ」
動揺する三人を尻目に玉竜は平然としている。
「Vtuber konzen宛のお年玉なら、僕が受け取ってもおかしくないよね?」
「いや違う」「まったくもって違う」「俺たちはあくまでも玄奘へ課金したいんだってば。このドロボー猫、じゃなくてドロボー竜がよ」
口々に反論された玉竜は、ため息をついた。
「じゃあ、このお金で新年会をしようよ。それならいいでしょ」
しぶしぶ頷く三人を見て、玄奘は玉竜の腕をひっぱり言った。
「玉竜、新年会なら私もお金を出すよ」
「玄奘は出さなくてだいじょうぶです」「可愛い子はタダで呑めるルールだから」「推しから金子は取れないでござる」
一列に並んだ悟空、八戒、悟浄は順に片手をすっと伸ばして、まるでチェアマンのように玄奘を制止した。
悟浄が秘仏を拝む感覚で感極まっている横で、悟空も自分の心臓がぎゅっと鷲掴みにされるような感覚がある。推しの一挙手一投足ですべてが報われるような気がしていたVtuber konzenのオタクだったときの気持ちがたちまち蘇ってくる。
「おれ……拝むんなら初詣より玄奘がいい」
言った傍から悟空は既に手を合わせている。八戒も真似しながら、片手は中空の見えないボタンを探すように動かしている。
「だよなあ。久しぶりにkonzen推してたときの勢い思い出したわ。どっかに課金ボタンないのかな。押してえなあ。『尊い!』スタンプと一緒にスパチャしたいわ」
「それな」
悟空が完全同意、というように深く頷きながら言うと、その隙に悟浄はすでに万札を玄奘の手に握らせようとしている。
「お布施でござる……」
「抜けがけすんな!おれにも課金させろ!」
悟空が財布を出しながら悟浄を押しのけようとする。八戒もその隙に尻と腹を突き出して悟空らを付きとばそうとしながら、札束をひらめかせた。
「konzenの常連ランカー様はなんてたって俺だからさあ、ね?」
「み、みんな……、私だけじゃなくて、もう全員が推される側なんだから、ね?」
玄奘は相手を制するように手のひらを向けたが、それでも納得しない三人は財布をしまおうとしない。
悟浄はまた距離をつめてぼそっと呟きながら渡そうとする。
「では、……これはお年玉、ということで良いでござる」
「お、おれもお年玉玄奘に渡すっ!」
「俺、可愛いポチ袋持ってた気がするなあ」
三人がもみ合っていると、小柄な人影が三人の前を通り過ぎながら彼らの握りしめた札束を回収していった。
「はい、どうもー。Vtuber konzenへのお年玉、ありがとうございまぁす」
玉竜であった。主に技術面のサポートをしながら、玄奘と二人三脚でVtuber konzenの活動を行っていた学友だ。ジャニ西のデビュー後は彼らと同様に事務所シャカシャカに所属しながら作曲活動を行っている。玉竜は実家が海運業を営む名家の出であるせいか、佇まいに気品がある。今日も丈の長いダッフルコートを着こなしており、お坊ちゃん風だ。
「ちょっ……お前」「お主への課金ではござらん」「そういうのドロボーって言うんだぞ」
動揺する三人を尻目に玉竜は平然としている。
「Vtuber konzen宛のお年玉なら、僕が受け取ってもおかしくないよね?」
「いや違う」「まったくもって違う」「俺たちはあくまでも玄奘へ課金したいんだってば。このドロボー猫、じゃなくてドロボー竜がよ」
口々に反論された玉竜は、ため息をついた。
「じゃあ、このお金で新年会をしようよ。それならいいでしょ」
しぶしぶ頷く三人を見て、玄奘は玉竜の腕をひっぱり言った。
「玉竜、新年会なら私もお金を出すよ」
「玄奘は出さなくてだいじょうぶです」「可愛い子はタダで呑めるルールだから」「推しから金子は取れないでござる」
一列に並んだ悟空、八戒、悟浄は順に片手をすっと伸ばして、まるでチェアマンのように玄奘を制止した。
11
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる