続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第一章 新年の風来る 

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「後光が射して見えるでござる……」

 悟浄が秘仏を拝む感覚で感極まっている横で、悟空も自分の心臓がぎゅっと鷲掴みにされるような感覚がある。推しの一挙手一投足ですべてが報われるような気がしていたVtuber konzenのオタクだったときの気持ちがたちまち蘇ってくる。

「おれ……拝むんなら初詣より玄奘がいい」

 言った傍から悟空は既に手を合わせている。八戒も真似しながら、片手は中空の見えないボタンを探すように動かしている。

「だよなあ。久しぶりにkonzen推してたときの勢い思い出したわ。どっかに課金ボタンないのかな。押してえなあ。『尊い!』スタンプと一緒にスパチャしたいわ」

「それな」
 悟空が完全同意、というように深く頷きながら言うと、その隙に悟浄はすでに万札を玄奘の手に握らせようとしている。

「お布施でござる……」

「抜けがけすんな!おれにも課金させろ!」

 悟空が財布を出しながら悟浄を押しのけようとする。八戒もその隙に尻と腹を突き出して悟空らを付きとばそうとしながら、札束をひらめかせた。

「konzenの常連ランカー様はなんてたって俺だからさあ、ね?」

「み、みんな……、私だけじゃなくて、もう全員が推される側なんだから、ね?」

 玄奘は相手を制するように手のひらを向けたが、それでも納得しない三人は財布をしまおうとしない。

 悟浄はまた距離をつめてぼそっと呟きながら渡そうとする。

「では、……これはお年玉、ということで良いでござる」
「お、おれもお年玉玄奘に渡すっ!」
「俺、可愛いポチ袋持ってた気がするなあ」

 三人がもみ合っていると、小柄な人影が三人の前を通り過ぎながら彼らの握りしめた札束を回収していった。

「はい、どうもー。Vtuber konzenへのお年玉、ありがとうございまぁす」
 玉竜ぎょくりゅうであった。主に技術面のサポートをしながら、玄奘と二人三脚でVtuber konzenの活動を行っていた学友だ。ジャニ西のデビュー後は彼らと同様に事務所シャカシャカに所属しながら作曲活動を行っている。玉竜は実家が海運業を営む名家の出であるせいか、佇まいに気品がある。今日も丈の長いダッフルコートを着こなしており、お坊ちゃん風だ。

「ちょっ……お前」「お主への課金ではござらん」「そういうのドロボーって言うんだぞ」

  動揺する三人を尻目に玉竜は平然としている。

「Vtuber konzen宛のお年玉なら、僕が受け取ってもおかしくないよね?」

「いや違う」「まったくもって違う」「俺たちはあくまでも玄奘へ課金したいんだってば。このドロボー猫、じゃなくてドロボー竜がよ」

 口々に反論された玉竜は、ため息をついた。

「じゃあ、このお金で新年会をしようよ。それならいいでしょ」
 しぶしぶ頷く三人を見て、玄奘は玉竜の腕をひっぱり言った。

「玉竜、新年会なら私もお金を出すよ」
「玄奘は出さなくてだいじょうぶです」「可愛い子はタダで呑めるルールだから」「推しから金子は取れないでござる」

 一列に並んだ悟空、八戒、悟浄は順に片手をすっと伸ばして、まるでチェアマンのように玄奘を制止した。


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