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第一章 新年の風来る
9 いちゃいちゃ
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夕食を食べて入浴も済ませた玄奘は、いつもの如く本を開いたがページを繰る手が止まる。わずかな空腹を感じたせいだ。
悟空はソファに座って、ルーティーンのボイスパーカッション練習をしている。最近はDJがターンテーブルを回すようなボイススクラッチ音を習得するため、実際にEDM系の曲を聞いて確認しながら音を出すことが多い。悟空は天才肌に見えるものの、実は継続的な努力を怠らない勤勉さに裏打ちされた才能であることを玄奘だけが知っている。
ダイニングに座っていた玄奘は席を立ち、悟空の隣に腰かけた。彼は小柄なわりに肩幅はしっかりあるところが玄奘は気に入っている。その肩にゆっくりともたれかかる。
ちゅくちゅくちゅくちー、と機械のようなスクラッチ音を出していた悟空は、柔らかく笑って玄奘の短い髪を撫でた。
「どうしました?もう眠いです?」
「いや……そういうわけではないんだけど」
煮えきらずに言葉を濁した玄奘を見て、悟空は玄奘の髪からなめらかな首元へと指を滑らせた。
「……また、したくなりました?」
「また」と言ったのは夕食を食べる前も散々二人で抱きあったからである。悟空の低音を耳孔の奥まですべりこませられた玄奘は、頭の芯が震えたような気がした。それでも身体の奥はまだ満ちた感覚があり、渇きはない。
「ふふ……、そうじゃなくて」
「違うんですか」
ちぇー、と悟空が玄奘の肩に額をぶつけながら拗ねたように言う。最近、この年上の恋人は二人きりの時はまるで子どものように甘えてくるようになった。それだけで玄奘は胸の内がくすぐったくなる。
「少しだけお腹が空いたから……こんな時間だけど、あの……食べたいなって思ってて」
「アイスですか」
「なぜわかった」
「玄奘のお気に入りのバニラ、冷凍庫にあるの知ってますよ」
「特別なときにとストックしておいたんだ。でも今から食べたら太る、よね」
「いいじゃないですか、正月だし特別でしょう」
すぐに私を甘やかすんだから……と玄奘はぼそっと呟いたが、アイスを悟空から手渡されたらもう誘惑には抗えなかった。まだ硬いアイスは少ししか掬えず、そのひとかけらを口に運ぶ。濃厚なクリームが舌の上ですぐに溶けてなくなってしまう。もっともっと欲しくなる。とろとろとした甘さでゆるゆると心もほどけていく。
「ほら、悟空も」
スプーンを差し出せば、悟空はふっと笑った。
「おれはいいです。玄奘の食べているところを見ているだけで」
「見ているだけなんて」
「可愛いですよ、すごく」
睨むような眼光で見つめられたら玄奘は目が逸らせなかった。逃げられない、と本能的に感じる。
悟空はソファに座って、ルーティーンのボイスパーカッション練習をしている。最近はDJがターンテーブルを回すようなボイススクラッチ音を習得するため、実際にEDM系の曲を聞いて確認しながら音を出すことが多い。悟空は天才肌に見えるものの、実は継続的な努力を怠らない勤勉さに裏打ちされた才能であることを玄奘だけが知っている。
ダイニングに座っていた玄奘は席を立ち、悟空の隣に腰かけた。彼は小柄なわりに肩幅はしっかりあるところが玄奘は気に入っている。その肩にゆっくりともたれかかる。
ちゅくちゅくちゅくちー、と機械のようなスクラッチ音を出していた悟空は、柔らかく笑って玄奘の短い髪を撫でた。
「どうしました?もう眠いです?」
「いや……そういうわけではないんだけど」
煮えきらずに言葉を濁した玄奘を見て、悟空は玄奘の髪からなめらかな首元へと指を滑らせた。
「……また、したくなりました?」
「また」と言ったのは夕食を食べる前も散々二人で抱きあったからである。悟空の低音を耳孔の奥まですべりこませられた玄奘は、頭の芯が震えたような気がした。それでも身体の奥はまだ満ちた感覚があり、渇きはない。
「ふふ……、そうじゃなくて」
「違うんですか」
ちぇー、と悟空が玄奘の肩に額をぶつけながら拗ねたように言う。最近、この年上の恋人は二人きりの時はまるで子どものように甘えてくるようになった。それだけで玄奘は胸の内がくすぐったくなる。
「少しだけお腹が空いたから……こんな時間だけど、あの……食べたいなって思ってて」
「アイスですか」
「なぜわかった」
「玄奘のお気に入りのバニラ、冷凍庫にあるの知ってますよ」
「特別なときにとストックしておいたんだ。でも今から食べたら太る、よね」
「いいじゃないですか、正月だし特別でしょう」
すぐに私を甘やかすんだから……と玄奘はぼそっと呟いたが、アイスを悟空から手渡されたらもう誘惑には抗えなかった。まだ硬いアイスは少ししか掬えず、そのひとかけらを口に運ぶ。濃厚なクリームが舌の上ですぐに溶けてなくなってしまう。もっともっと欲しくなる。とろとろとした甘さでゆるゆると心もほどけていく。
「ほら、悟空も」
スプーンを差し出せば、悟空はふっと笑った。
「おれはいいです。玄奘の食べているところを見ているだけで」
「見ているだけなんて」
「可愛いですよ、すごく」
睨むような眼光で見つめられたら玄奘は目が逸らせなかった。逃げられない、と本能的に感じる。
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