続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第二章 金銀襲来

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 ちなみに天界人は不老不死の神仙であるため、現世にある間も特別食べ物を必要としない。繊細極まりない天界の料理を食べ慣れた身にとっては、地上の食べ物などおぞましくて口にする気にもなれないのが通常だが、天界にいるときから磁路は狩りや討伐で地上に赴き、現地の飯で腹を満たす機会が多かったことと、磁路の母親が天界人ではなく俗世の人間であることも影響しているのかもしれない、と太上は思う。

 紅害嗣の隣に陣取った納多は、鋭い目付きの悟空に声をかけた。

「玄奘に良からぬことをせぬよう、私が見張っておく。私は下戸故、飲酒もせぬ。さらに私の監視下から逃れぬよう、既に秘薬安駝駝あんだだを塗って手を繋いでおる。私と紅害嗣が離れることはない」
 納多も事務所シャカシャカの社員で、真の姿は天界の少年神哪吒太子なたたいしである。外見は凛とした少年の佇まいなのだが、辛辣な口調で剛腕を振るう、いわゆるデキる男である。

 彼の言う安駝駝とは中国四千年の歴史を経た秘薬であり、これを塗って繋いだ手は三日三晩離れることはない。紅害嗣の右手と納多の左手は硬く結ばれている。ただしこの秘薬は水には弱く、ばしゃばしゃと水洗いすれば離れる。八戒などは「もったいぶった名前のくせに、ただの強力接着剤ってだけじゃん」と鼻で笑っている。

 納多が繋いだ手を悟空に見せつけたところ、紅害嗣はそわそわした様子で遮った。

「見せびらかすな。恥ずかしいだろ?」

「なぁんで動揺してんの?もしかしてもしかして?紅ちゃんは玄奘のこと諦めて、納多とそういうことになってんの?」

 色恋沙汰とあらばすぐに首を突っ込みたがる八戒が身を乗り出して尋ねる。が、納多はきっぱりと言った。

「こいつが玄奘に迷惑ばかりかけるから、口説き方の練習台になっているだけだ」

「へえ。いいなあ。相手が納多なら俺も口説く練習してみたいなあ」
 八戒が唐揚げ、揚げ出し豆腐、山盛りポテト、野菜のフリット、揚げ餃子などを次々に口に運びながらぼやくと、悟浄はため息をついた。

「お主は練習する必要ないほど毎日誰かを口説いておる……。それにしても毎回安駝駝を使用するのも納多の骨が折れるござろうな。拙者、何か良い案を考えてみよう」

 悟浄の提案に微笑みを返してから、納多は悟空と玄奘に対し颯爽と頭(こうべ)を垂れた。

「紅害嗣もそれなりに反省している。大聖殿、お目こぼし願いたい」

 納多から下手に出られてしまうと、悟空も思わず矛先を鈍らせる。

「せめて玄奘から離れた場所に座っておけよ」

「悟空、そんな失礼なことを言ってはだめだよ」

 玄奘が悟空の袖を引っ張ってから、紅害嗣に向き直った。

「今日は来てくれてありがとう。牛家族とJourney to the Westの更なる飛躍を目指して、今年もよろしくお願いします」

 思わず頬を赤らめた紅害嗣は「お、おう……。俺も、よろしくお願いします」とおとなしく返事をしただけだった。
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