続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第二章 金銀襲来

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 宴も進み、各自酔いが回ってくる。初めは全体でわいわいと話していた卓も今は数人で輪になり、各々の話題で話し込んでいる。料理を求めて席を転々としていた八戒が紅害嗣の隣に腰を下ろした。

「紅ちゃん、せっかくならあのお綺麗なママンも連れてきてくれたら良かったのになぁ」

「豚八、俺の母ちゃん狙ってんのか?何歳だと思ってんだ」

「綺麗な人なら年齢は気にならないんだよ、俺」

「無駄だ、母ちゃんは親父一筋だし」

 親父は親父で浮気癖がやまないくせによ、と紅害嗣は鼻に皴を寄せた。

「紅ちゃんは一途な母ちゃん似なの?それとも気の多い父ちゃん似なの?」

「俺は……」

 紅害嗣の瞳に斜め向かいにいる玄奘が映った。悟空の耳元に顔を寄せて何かささやき、二人で顔を見合せてまた笑っている。ただ隣に座っているだけでそれほど距離が近いわけでもない。それでもあの二人の間には入れないことを紅害嗣は痛感した。

「アホか……深刻になるな」
 隣の納多が紅害嗣の頭をこつんと小突いて言った。

「ならねえよっ!てか、俺の頭を叩くな、マネージャーの分際でっ」

 いつものようにかみつくと、納多は片唇を上げて笑った。

 遅れて八戒も自分の頭を納多に突き出した。

「いいじゃん、いいじゃん。ねえ納多たん、その可愛い手で俺の頭も小突いてほしいなあ」

「……キモ」
 心底引いた目で納多は八戒から距離を取るが、「おおっ、反応もだんだん人間らしくなってきたじゃない。納多ぽん」と八戒はまったくめげずににやにやしている。紅害嗣もため息をつく。

 と、玉竜が悟浄を引き連れて輪に入ってきた。
「ねえねえ、さっきプロデューサー太上から聞いてきたんだけど、牛家族って紅白のオファーがあったって本当?」

 紅害嗣と納多が頷く。
「断った」

「牛家族の悪ぶれた雰囲気戦略には紅白との相性は悪いだろうという判断と、過去の……まあ」

 納多は曖昧に語尾を濁した。過去に暴力団であったことが発覚すると面倒なことになるだろう、という予測の上だろう。空気を呼んだ悟浄は、それ以上追求せずに腕を組んで言った。

「磁路が新年早々ダンスに挑戦などという無謀な提案をしてきた理由は、それもあろうかの」

 玉竜も納得したようにふぅんと顎を引いた。

「牛家族には紅白のオファー来てるのに、ジャニ西には来なかったから焦っちゃってるのか」

「何、お前らダンスなんかすんの?どう見たって豚八は踊れねえだろ」

 紅害嗣は小馬鹿にするように笑った。八戒は気を悪くもせず立ち上がると「何おう。俺の腰つきを見て倒れな」と妙な腰ふりダンスを始める。悟浄は八戒のダンスに合わせて低音でボイスビートを効かせる。

 ちなみに悟浄は下戸ではないがあまり酒を好まないので、今日は素面のままだ。ノリの良い玉竜が手拍子を煽ると、意外と酒に弱い紅害嗣はやんややんやと喝采を送っている。結局文句を言いながらも地上の酒をしこたま飲んだらしいプロデューサー太上は部屋の隅で既に眠っており、その横で磁路と納多はマネージャー談議をしている。納多と紅害嗣は反対方向を向きながら、互いに腕を伸ばし手を繋いだままにしているのが仕方のないこととは言え、妙に微笑ましくもあった。

 皆の様子を見ながら、玄奘がデザートのアイスの小皿を両手で持ち上げながら小さな声で笑った。

「ふふ、楽しそう。紅害嗣さんとも仲良くなれて良かった」

「……本気で言ってます?」

 悟空は苦笑したが、本日の紅害嗣は必要以上に近寄ってくることはなかったので、やや警戒を解いている。

「悟空、一口いる?」
 玄奘がアイスを載せたスプーンを近づけてくる。

「……いりませんよ」
 断った悟空だったが、目の前のアイスを契機に数日前のあられもない玄奘の姿が一瞬だけ脳内に呼び起こされ、口元がにやついてしまう。

「悟空、どうした?」
「……いや、なんでもないです」

 まさか、その一瞬で勃ちかけたとは口が裂けても言えるわけがない。
 
 
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