16 / 95
第二章 金銀襲来
3
しおりを挟む
宴も進み、各自酔いが回ってくる。初めは全体でわいわいと話していた卓も今は数人で輪になり、各々の話題で話し込んでいる。料理を求めて席を転々としていた八戒が紅害嗣の隣に腰を下ろした。
「紅ちゃん、せっかくならあのお綺麗なママンも連れてきてくれたら良かったのになぁ」
「豚八、俺の母ちゃん狙ってんのか?何歳だと思ってんだ」
「綺麗な人なら年齢は気にならないんだよ、俺」
「無駄だ、母ちゃんは親父一筋だし」
親父は親父で浮気癖がやまないくせによ、と紅害嗣は鼻に皴を寄せた。
「紅ちゃんは一途な母ちゃん似なの?それとも気の多い父ちゃん似なの?」
「俺は……」
紅害嗣の瞳に斜め向かいにいる玄奘が映った。悟空の耳元に顔を寄せて何かささやき、二人で顔を見合せてまた笑っている。ただ隣に座っているだけでそれほど距離が近いわけでもない。それでもあの二人の間には入れないことを紅害嗣は痛感した。
「アホか……深刻になるな」
隣の納多が紅害嗣の頭をこつんと小突いて言った。
「ならねえよっ!てか、俺の頭を叩くな、マネージャーの分際でっ」
いつものようにかみつくと、納多は片唇を上げて笑った。
遅れて八戒も自分の頭を納多に突き出した。
「いいじゃん、いいじゃん。ねえ納多たん、その可愛い手で俺の頭も小突いてほしいなあ」
「……キモ」
心底引いた目で納多は八戒から距離を取るが、「おおっ、反応もだんだん人間らしくなってきたじゃない。納多ぽん」と八戒はまったくめげずににやにやしている。紅害嗣もため息をつく。
と、玉竜が悟浄を引き連れて輪に入ってきた。
「ねえねえ、さっきプロデューサー太上から聞いてきたんだけど、牛家族って紅白のオファーがあったって本当?」
紅害嗣と納多が頷く。
「断った」
「牛家族の悪ぶれた雰囲気戦略には紅白との相性は悪いだろうという判断と、過去の……まあ」
納多は曖昧に語尾を濁した。過去に暴力団であったことが発覚すると面倒なことになるだろう、という予測の上だろう。空気を呼んだ悟浄は、それ以上追求せずに腕を組んで言った。
「磁路が新年早々ダンスに挑戦などという無謀な提案をしてきた理由は、それもあろうかの」
玉竜も納得したようにふぅんと顎を引いた。
「牛家族には紅白のオファー来てるのに、ジャニ西には来なかったから焦っちゃってるのか」
「何、お前らダンスなんかすんの?どう見たって豚八は踊れねえだろ」
紅害嗣は小馬鹿にするように笑った。八戒は気を悪くもせず立ち上がると「何おう。俺の腰つきを見て倒れな」と妙な腰ふりダンスを始める。悟浄は八戒のダンスに合わせて低音でボイスビートを効かせる。
ちなみに悟浄は下戸ではないがあまり酒を好まないので、今日は素面のままだ。ノリの良い玉竜が手拍子を煽ると、意外と酒に弱い紅害嗣はやんややんやと喝采を送っている。結局文句を言いながらも地上の酒をしこたま飲んだらしいプロデューサー太上は部屋の隅で既に眠っており、その横で磁路と納多はマネージャー談議をしている。納多と紅害嗣は反対方向を向きながら、互いに腕を伸ばし手を繋いだままにしているのが仕方のないこととは言え、妙に微笑ましくもあった。
皆の様子を見ながら、玄奘がデザートのアイスの小皿を両手で持ち上げながら小さな声で笑った。
「ふふ、楽しそう。紅害嗣さんとも仲良くなれて良かった」
「……本気で言ってます?」
悟空は苦笑したが、本日の紅害嗣は必要以上に近寄ってくることはなかったので、やや警戒を解いている。
「悟空、一口いる?」
玄奘がアイスを載せたスプーンを近づけてくる。
「……いりませんよ」
断った悟空だったが、目の前のアイスを契機に数日前のあられもない玄奘の姿が一瞬だけ脳内に呼び起こされ、口元がにやついてしまう。
「悟空、どうした?」
「……いや、なんでもないです」
まさか、その一瞬で勃ちかけたとは口が裂けても言えるわけがない。
「紅ちゃん、せっかくならあのお綺麗なママンも連れてきてくれたら良かったのになぁ」
「豚八、俺の母ちゃん狙ってんのか?何歳だと思ってんだ」
「綺麗な人なら年齢は気にならないんだよ、俺」
「無駄だ、母ちゃんは親父一筋だし」
親父は親父で浮気癖がやまないくせによ、と紅害嗣は鼻に皴を寄せた。
「紅ちゃんは一途な母ちゃん似なの?それとも気の多い父ちゃん似なの?」
「俺は……」
紅害嗣の瞳に斜め向かいにいる玄奘が映った。悟空の耳元に顔を寄せて何かささやき、二人で顔を見合せてまた笑っている。ただ隣に座っているだけでそれほど距離が近いわけでもない。それでもあの二人の間には入れないことを紅害嗣は痛感した。
「アホか……深刻になるな」
隣の納多が紅害嗣の頭をこつんと小突いて言った。
「ならねえよっ!てか、俺の頭を叩くな、マネージャーの分際でっ」
いつものようにかみつくと、納多は片唇を上げて笑った。
遅れて八戒も自分の頭を納多に突き出した。
「いいじゃん、いいじゃん。ねえ納多たん、その可愛い手で俺の頭も小突いてほしいなあ」
「……キモ」
心底引いた目で納多は八戒から距離を取るが、「おおっ、反応もだんだん人間らしくなってきたじゃない。納多ぽん」と八戒はまったくめげずににやにやしている。紅害嗣もため息をつく。
と、玉竜が悟浄を引き連れて輪に入ってきた。
「ねえねえ、さっきプロデューサー太上から聞いてきたんだけど、牛家族って紅白のオファーがあったって本当?」
紅害嗣と納多が頷く。
「断った」
「牛家族の悪ぶれた雰囲気戦略には紅白との相性は悪いだろうという判断と、過去の……まあ」
納多は曖昧に語尾を濁した。過去に暴力団であったことが発覚すると面倒なことになるだろう、という予測の上だろう。空気を呼んだ悟浄は、それ以上追求せずに腕を組んで言った。
「磁路が新年早々ダンスに挑戦などという無謀な提案をしてきた理由は、それもあろうかの」
玉竜も納得したようにふぅんと顎を引いた。
「牛家族には紅白のオファー来てるのに、ジャニ西には来なかったから焦っちゃってるのか」
「何、お前らダンスなんかすんの?どう見たって豚八は踊れねえだろ」
紅害嗣は小馬鹿にするように笑った。八戒は気を悪くもせず立ち上がると「何おう。俺の腰つきを見て倒れな」と妙な腰ふりダンスを始める。悟浄は八戒のダンスに合わせて低音でボイスビートを効かせる。
ちなみに悟浄は下戸ではないがあまり酒を好まないので、今日は素面のままだ。ノリの良い玉竜が手拍子を煽ると、意外と酒に弱い紅害嗣はやんややんやと喝采を送っている。結局文句を言いながらも地上の酒をしこたま飲んだらしいプロデューサー太上は部屋の隅で既に眠っており、その横で磁路と納多はマネージャー談議をしている。納多と紅害嗣は反対方向を向きながら、互いに腕を伸ばし手を繋いだままにしているのが仕方のないこととは言え、妙に微笑ましくもあった。
皆の様子を見ながら、玄奘がデザートのアイスの小皿を両手で持ち上げながら小さな声で笑った。
「ふふ、楽しそう。紅害嗣さんとも仲良くなれて良かった」
「……本気で言ってます?」
悟空は苦笑したが、本日の紅害嗣は必要以上に近寄ってくることはなかったので、やや警戒を解いている。
「悟空、一口いる?」
玄奘がアイスを載せたスプーンを近づけてくる。
「……いりませんよ」
断った悟空だったが、目の前のアイスを契機に数日前のあられもない玄奘の姿が一瞬だけ脳内に呼び起こされ、口元がにやついてしまう。
「悟空、どうした?」
「……いや、なんでもないです」
まさか、その一瞬で勃ちかけたとは口が裂けても言えるわけがない。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる