続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第二章 金銀襲来

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「初めまして」

 人懐っこい笑顔で手を出してきた金狩に、悟空は値踏みするような目で握手した。先日、自宅のエントランスでスーパーの場所を尋ねてきた金髪男ではないか。

「じゃねえだろ」
 悟空の言葉を聞いた途端、金狩はえくぼを見せて笑い、悟空の手を両手で握った。 

「わぁ、僕のこと、覚えててくれたんや」

「えっ、……まあ、普通覚えてるだろ」

 悟空は、予想していた反応と異なるのでやや気圧される。目付きも愛想も悪い悟空は、初対面から無邪気な好意を向けられることに不慣れだ。嬉しいなあ、と相貌を崩している金狩に悟空は片眉を上げて尋ねる。

「声かける前からおれたちのこと、知ってた……んだな?」

 何かの罠か、それとも事前の査定かと警戒した悟空だったが、金狩はにやけた表情のままだ。

「えへへ。大事な生徒さんの情報は事前に仕入れておくのが礼儀やろう?」

「じゃあ、初対面のときに名乗れよ」

「急に挨拶したって気色わるいやん。あのときスーパー探してたのはほんまやし、そこにカッコいいお兄さんがいたから聞いてみただけや。別に生徒さんじゃなくても声かけてたと思うわ」

 体は大きいが金狩の言葉の端々にあどけなさを感じる。まさか十代じゃなかろうな、と悟空は危ぶむ。

 金狩は握手した手をまだ離さずに尋ねた。

「それでGo-kuさんはみんなから何て呼ばれてるん?」

「悟空、だけど」

「じゃあ僕は、くうちゃんって呼んでもいい?」

「……だめだな」

 さすがに見かねたらしい玄奘が悟空の手から引き剥がすようにして、金狩と握手を交わす。

「私は玄奘と言います。金狩さん、よろしくお願いしますね」

 金狩は目を煌めかせて、玄奘の手をがっしりと握った。

「よろしく。みんなでダンス楽しもうな」

 金狩はついでとばかりにもう片方の手を伸ばして悟浄の肩を叩いた。悟浄としてもダンスの先生であるのだから、礼儀を失するわけにもいかない。

「よろしく……頼むでござる」
 いつの間にか輪を離れ、部屋の隅でスマホをいじっていた銀狩に金狩は声をかける。

「ほら銀も。僕ら先生なんやで。ぴしっとせな」

 銀狩はスマホ画面から目を上げずに言う。
「金は東京来たからって張りきりすぎや。仕事はちゃんとやるしそれ以外の事は知らんわ」

「生徒さんとの交流も仕事のうちやろがっ。このアホ」

「うっさいわ」
 双子は長い足を伸ばして遠慮なく互いを蹴飛ばしあいながら言い合いをする。ダンスの息はぴったり合うが、普段の性格はあまり合わないようだ。

「磁路殿、あの講師で本当にだいじょうぶなのであるか?言動がまるで中学生レベルでござる……」

 冷静に悟浄が尋ねると、さすがの磁路も少しだけ眉をしかめた。磁路も、双子のダンス講師としての実力を測りかねているようだ。
「使い物にならなければ天上界からダンス講師を連れてくる故……、しばし様子を見よう」
 
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