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第二章 金銀襲来
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ストレッチで身体をほぐした後、カウントを取りながら基本のアップとダウンの動き、ステップをいくつか教わった。少し身体を動かしただけで明らかに覚えの良い悟空・八戒組と、なかなか身体が思うように動かない玄奘・悟浄組に明確に分かれた。磁路はふむふむと腕組みをして見学している。
金狩が四人の動きを見て、明朗と提案した。
「それぞれ進度が違いそうやし、ペアで練習した方が良さそうやね。僕は空ちゃんと八ちゃんチーム見るから、銀がそっちのチーム見てや」
(空ちゃんって呼ぶなって言ったろ……)と悟空は思うが、呼びかけられたわけでもなし、への字口を結んだだけだ。
「なんで面倒な方を押しつけられなあかんねん」
「面倒な方」と名指しされた悟浄と玄奘は複雑な表情を浮かべているが、事実なので何も言えないでいる。
汗を拭いていた悟空は、そっと玄奘の腕にふれた。だいじょうぶですよ、と悟空の声にならない声が玄奘には聞こえた気がする。悟空はさも当たり前のように言った。
「おい勝手に決めんな。おれもすぐ振り覚えて玄奘に教えるから、おれと玄奘をペアにすればいい」
銀狩は目つきを鋭くして言った。
「生徒に仕切る権利はないって知らんの?」
レッスン室の空気が急に張り詰めた。そもそも悟空は傲慢な態度をとる相手が嫌いだ。
「別に仕切ってねえだろ。オメーには生徒の提案を受け入れる器量もねえのかよ」
「悟空……、先生に失礼だよ」
玄奘が悟空の腕を引く。悟空はまだ銀狩から目を離さないでいる。
磁路がぱんぱんと手を叩き、間に入った。そのまま悟空の耳を掴む。
「こらこら大聖殿、先生の指示はきちんと聞かねばならんぞ」
「わかってる」
言いながら悟空は磁路の手を振り払った。続いて磁路は銀狩の方にも顔をぐいっと寄せた。
「angle G先生は悟空組と玄奘組と分けようとされておられるのだな?その方がダンスの上達進度が早いという予測の元であるな?根拠はあろうな?」
誰よりも長く生きており、数々の戦いを潜り抜けてきた天界人はここぞというときの胆力が人間とは違う。輪郭を極太マジックペンで描かれ、さらに集中線で存在を強調されたような押し出しの強さに、圧倒されない者はいなかった。磁路が天上人であることを知らないはずの銀狩だったが、さすがに迫力の違いを感じたのだろう。彼にしてはきちんと説明した。
「同じダンスでも人によって習得スピードが違うし、身体能力が同じくらいのグループにした方が効率的に教えられる。それはほんまにそう」
片割れが大男磁路に詰め寄られているのを見て、金狩も加勢する。
「たしかに八ちゃんと空ちゃんは覚えも早そうやから早めに進んどいて、僕らがおらんときに二人が玄奘さんと悟浄さんに教えてもらえたらさらに効率的かなって思うけど」
二人の説明に磁路はにっこり笑った。
「納得、納得じゃ。ようし、それならこれからの練習は大聖殿と八戒はangle K先生、玄奘と悟浄はangle G先生に見て頂く事としよう」
「そうしよう~。空ちゃん、八ちゃんよろしく~」
金狩がにこにこ顔で磁路に拍手を送る。が、銀狩はまたぶすくれた顔をしている。
「だからなんで落ちこぼれ組が僕担当やねんて……」
金狩が四人の動きを見て、明朗と提案した。
「それぞれ進度が違いそうやし、ペアで練習した方が良さそうやね。僕は空ちゃんと八ちゃんチーム見るから、銀がそっちのチーム見てや」
(空ちゃんって呼ぶなって言ったろ……)と悟空は思うが、呼びかけられたわけでもなし、への字口を結んだだけだ。
「なんで面倒な方を押しつけられなあかんねん」
「面倒な方」と名指しされた悟浄と玄奘は複雑な表情を浮かべているが、事実なので何も言えないでいる。
汗を拭いていた悟空は、そっと玄奘の腕にふれた。だいじょうぶですよ、と悟空の声にならない声が玄奘には聞こえた気がする。悟空はさも当たり前のように言った。
「おい勝手に決めんな。おれもすぐ振り覚えて玄奘に教えるから、おれと玄奘をペアにすればいい」
銀狩は目つきを鋭くして言った。
「生徒に仕切る権利はないって知らんの?」
レッスン室の空気が急に張り詰めた。そもそも悟空は傲慢な態度をとる相手が嫌いだ。
「別に仕切ってねえだろ。オメーには生徒の提案を受け入れる器量もねえのかよ」
「悟空……、先生に失礼だよ」
玄奘が悟空の腕を引く。悟空はまだ銀狩から目を離さないでいる。
磁路がぱんぱんと手を叩き、間に入った。そのまま悟空の耳を掴む。
「こらこら大聖殿、先生の指示はきちんと聞かねばならんぞ」
「わかってる」
言いながら悟空は磁路の手を振り払った。続いて磁路は銀狩の方にも顔をぐいっと寄せた。
「angle G先生は悟空組と玄奘組と分けようとされておられるのだな?その方がダンスの上達進度が早いという予測の元であるな?根拠はあろうな?」
誰よりも長く生きており、数々の戦いを潜り抜けてきた天界人はここぞというときの胆力が人間とは違う。輪郭を極太マジックペンで描かれ、さらに集中線で存在を強調されたような押し出しの強さに、圧倒されない者はいなかった。磁路が天上人であることを知らないはずの銀狩だったが、さすがに迫力の違いを感じたのだろう。彼にしてはきちんと説明した。
「同じダンスでも人によって習得スピードが違うし、身体能力が同じくらいのグループにした方が効率的に教えられる。それはほんまにそう」
片割れが大男磁路に詰め寄られているのを見て、金狩も加勢する。
「たしかに八ちゃんと空ちゃんは覚えも早そうやから早めに進んどいて、僕らがおらんときに二人が玄奘さんと悟浄さんに教えてもらえたらさらに効率的かなって思うけど」
二人の説明に磁路はにっこり笑った。
「納得、納得じゃ。ようし、それならこれからの練習は大聖殿と八戒はangle K先生、玄奘と悟浄はangle G先生に見て頂く事としよう」
「そうしよう~。空ちゃん、八ちゃんよろしく~」
金狩がにこにこ顔で磁路に拍手を送る。が、銀狩はまたぶすくれた顔をしている。
「だからなんで落ちこぼれ組が僕担当やねんて……」
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