続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

文字の大きさ
20 / 95
第二章 金銀襲来

しおりを挟む
 ストレッチで身体をほぐした後、カウントを取りながら基本のアップとダウンの動き、ステップをいくつか教わった。少し身体を動かしただけで明らかに覚えの良い悟空・八戒組と、なかなか身体が思うように動かない玄奘・悟浄組に明確に分かれた。磁路はふむふむと腕組みをして見学している。

 金狩が四人の動きを見て、明朗と提案した。

「それぞれ進度が違いそうやし、ペアで練習した方が良さそうやね。僕は空ちゃんと八ちゃんチーム見るから、銀がそっちのチーム見てや」

(空ちゃんって呼ぶなって言ったろ……)と悟空は思うが、呼びかけられたわけでもなし、への字口を結んだだけだ。

「なんで面倒な方を押しつけられなあかんねん」

 「面倒な方」と名指しされた悟浄と玄奘は複雑な表情を浮かべているが、事実なので何も言えないでいる。

 汗を拭いていた悟空は、そっと玄奘の腕にふれた。だいじょうぶですよ、と悟空の声にならない声が玄奘には聞こえた気がする。悟空はさも当たり前のように言った。

「おい勝手に決めんな。おれもすぐ振り覚えて玄奘に教えるから、おれと玄奘をペアにすればいい」

 銀狩は目つきを鋭くして言った。

「生徒に仕切る権利はないって知らんの?」
 レッスン室の空気が急に張り詰めた。そもそも悟空は傲慢な態度をとる相手が嫌いだ。

「別に仕切ってねえだろ。オメーには生徒の提案を受け入れる器量もねえのかよ」

「悟空……、先生に失礼だよ」

 玄奘が悟空の腕を引く。悟空はまだ銀狩から目を離さないでいる。
 磁路がぱんぱんと手を叩き、間に入った。そのまま悟空の耳を掴む。

「こらこら大聖殿、先生の指示はきちんと聞かねばならんぞ」

「わかってる」

 言いながら悟空は磁路の手を振り払った。続いて磁路は銀狩の方にも顔をぐいっと寄せた。
「angle G先生は悟空組と玄奘組と分けようとされておられるのだな?その方がダンスの上達進度が早いという予測の元であるな?根拠はあろうな?」

 誰よりも長く生きており、数々の戦いを潜り抜けてきた天界人はここぞというときの胆力が人間とは違う。輪郭を極太マジックペンで描かれ、さらに集中線で存在を強調されたような押し出しの強さに、圧倒されない者はいなかった。磁路が天上人であることを知らないはずの銀狩だったが、さすがに迫力の違いを感じたのだろう。彼にしてはきちんと説明した。

「同じダンスでも人によって習得スピードが違うし、身体能力が同じくらいのグループにした方が効率的に教えられる。それはほんまにそう」 

 片割れが大男磁路に詰め寄られているのを見て、金狩も加勢する。

「たしかに八ちゃんと空ちゃんは覚えも早そうやから早めに進んどいて、僕らがおらんときに二人が玄奘さんと悟浄さんに教えてもらえたらさらに効率的かなって思うけど」

 二人の説明に磁路はにっこり笑った。

「納得、納得じゃ。ようし、それならこれからの練習は大聖殿と八戒はangle K先生、玄奘と悟浄はangle G先生に見て頂く事としよう」

「そうしよう~。空ちゃん、八ちゃんよろしく~」
 金狩がにこにこ顔で磁路に拍手を送る。が、銀狩はまたぶすくれた顔をしている。

「だからなんで落ちこぼれ組が僕担当やねんて……」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...