続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第三章 ダンス練習は初手から緊迫

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 明けても暮れてもダンス練習を繰り返す日々が続き、ジャニ西の面々は程度の差こそあれ、それぞれ筋肉痛を抱えているのがデフォルトとなった。その成果か玄奘と悟浄も、まだ振りは甘いものの振付の半分程度は覚えられている。

 あまりのダンスの覚えの悪さに見放されるのではと玄奘は危惧していたが、コーチの銀狩は、口は悪いが質問をすれば嫌がらずに答えてくれるし、生徒本人が諦めない限りは先に投げ出すことなく指導を続けてくれる。金狩もダンス練習を放り出して悟空を口説くこともなく、若干その距離は近いものの真面目に指導を行っており、悟空をえこひいきする様子もなかった。さすがに二人とも大阪で評判の良い講師であっただけのことはあるようだ。


 それでも毎日思うようにいかない練習を繰り返しながら、自分の恋人が別の人から好意を向けられている現場に直面するのは玄奘にとって思った以上にストレスだった。自宅のソファに座った玄奘が深刻な顔で事情を説明すると、スマホに映った玉竜は言った。

「へえ、年下ワンコ系講師が悟空を狙ってんの?ふぅん、面倒なことになったね」

 同じくスマホに映る八戒、悟浄は頷いている。悟空が風呂に入っている間にグループ通話で今後の作戦会議であ
る。

「二人が恋人であることを外部講師には伏せておけというのが磁路氏の指示である故、牽制もしにくいのが面倒でござる。生粋の玄奘オタクである悟空が他の男に目を向けることなどそうそうないとは思うが、いかんせん脇が甘いと言うべきか……」

 悟浄が低音ボイスで嘆けば、八戒も呆れた声音で続ける。

「あの猿の頭の中には玄奘しかいないからこそ、自分に向けられる好意に鈍感になってるって節(ふし)はあるよね」

「玄奘が叱ったらいいじゃん。あんま金狩と仲良くすんなって」
 付き合ってるんだし、そのくらい言ってもいいでしょ、と玉竜はこともなげに言った。

 玄奘はソファの上で体育座りをして膝を抱える。

「そんなの……、まだ付き合って数か月なのに。……面倒な恋人と思われたら」

 玄奘が面倒な男であることはもう全員が知っている、と三者は黙って考えたが口には出さなかった。悟浄が遠慮がちに助言する。

「玄奘が面倒なことを言ったとしても、悟空の愛は揺らがんと拙者は思うがの」

「でも……幻滅されたくないんだ」

 玄奘の声は消え入りそうだった。膝をぎゅっと抱え込む玄奘を見た八戒は提案した。

「とりあえずダンス練習中は俺が妨害しておくしさ。大船に乗った気でいなよ」

 玄奘が何かを言う前に、玉竜は鼻で笑った。

「八戒なんてお腹が空いたら二人を放り出して御飯に行っちゃうんだろうし、信用ならないなあ」

「そんなことねえよ」と八戒が言いかけるが、悟浄が遮った。

「しかし、金狩もダンス練習中はそれほど悟空に近づいておらぬ。あれでいてダンス指導には真剣に取り組んでおるのでござる」

「そうなんだよね。感情で突っ走ったりせずに仕事は仕事でちゃんとやるってタイプ。兄貴、そういうの嫌いじゃないと思うんだよねぇ」

 悟浄の言葉を裏付けるような八戒の評に、玄奘も思わず頷いてしまう。

「私も……そう思う」

 表情を暗くする玄奘を見て、玉竜が八戒に噛みついた。

「バカ八戒。玄奘を不安にさせてどうすんのさ。大船に乗った気でいろとか言ってたくせに」

「俺も金ちゃんは油断ならねえって思ってるのは本当だよ」

「八戒のはどうせ同族嫌悪でしょ?」

「俺と金ちゃんのどこが似てるって言うんだよ。俺の方がダンディで人好きがするだろ?」


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