続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第四章 旧正月の意外な誘い

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 八戒らがさぼっている間に、にぎにぎしく準備が整い、机の上には 水餃子、長麺、蒸した後に焼いた年糕ねんこう(正月もち)、春巻などの縁起物の料理が所狭しと並べられた。

 会議室の入口には赤地に金色で祝い文句を書いた対聯(ついれん)が飾られ、室内も赤い提灯や逆さにした「福」の字なども張られている。室内どこを見ても華やかな雰囲気である。
 
 そわついた人々が拍手で促す中、社長環野の乾杯の挨拶で宴が始まった。
 
 環野はもちろん天界人なので食べ物を必要としないのだが、縁起物なので食べる格好だけでもどうぞと餃子を手渡された。

「社長、お味はいかがでありましょうか」

 プロデューサー太上が尋ねているが、環野の眉間にはしわが寄っている。

「……我唯足るを知る」
 どうやらまずかったらしいと推し図った納多は頭を下げた。

「その餃子は紅害嗣が作ったものです。申し訳ない」

「粗野な地上の食べ物ですから、社長の御口には合わなくて当然ですよ」と太上は環野の御機嫌取りに余念がない。

 やや距離を取ったところでそれを見ていた紅害嗣は怒りで目をかっぴろげながら、一度に餃子三個を頬張りながら毒づいた。

「俺が作った餃子が美味くないわけないだろうがっ。なあ、豚八」

 隣の八戒ももぐもぐやりながら同意する。
「そうだよ、紅ちゃん。どうせ天界人は味オンチなんだから食わなければいいのにね」

「……しかし茹ですぎて餃子の皮が溶けている。茹でる際には差し水をしろと言ったのに聞かなんだのか」

 ぷりぷりとした水餃子をうまく箸で摘んで言ったのは悟浄である。

「うげ、悟浄……」

 苦虫をかみつぶした様子の紅害嗣に対し、悟浄の後ろから現れた羅刹女が追い打ちをかける。

「そういう細かいところで手を抜くのがアンタの悪いくせだよ。へたくそが手間暇惜しんでどうすんだい」

「母ちゃんは、あっち行ってろよぉ」
 母の羅刹女を相手にすると、いつもよりぐっと少年のような振舞いになる紅害嗣は唇を尖らした。その隙に抜け目のない八戒は「姐さん、まあ一杯どうぞ」と羅刹女の杯に紹興酒を注いでいる。
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