続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第四章 旧正月の意外な誘い

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 別のテーブルでは、玄奘が麺を啜っているがいつまでも啜りきれずに目を白黒させている。その様子を見て、からからと笑いながら磁路が教えた。

「それは長麺という。長寿を願って食べる長麺である。なるべくかみ切らずに啜って食べるがいい」

 玄奘の隣の席についた悟空は慌てて玄奘の背中をさすった。

「一口で全部口に入れろだなんて、玄奘がのどに詰まらせでもしたらどうすんだよ」

 玄奘の傍で、どうせ迷信ですからかみ切って食べてくださいね、と囁く悟空に、隣にいた牛魔王は呆れたような唸り声をあげた。彼は仕事以外でジャニ西のメンバーと一緒になることは初めてである。納多から二人の交際の事実は聞いているものの、悟空の発言で驚いたらしい。

「のどに詰めるなど年寄りでもあるまいし。猿田氏の過保護ぶりを耳にしてはいたが、聞きしに勝る溺愛ぶりよな」

「初めて見れば、そりゃ驚くよねえ」と全部を横で見ていた玉竜はすました顔で長麺を啜っている。

 「溺愛」と口に出されて今更恥ずかしくなった玄奘は頬を赤らめるが、悟空は意に介さない。

「ああ、そうだよ。溺愛して悪いか。いいか牛魔王、オメーの息子がおれらの邪魔しないようにちゃんと躾けておけよ」

「成人した息子は儂の責任の範疇にない」

 目を瞑って酒を飲み干す牛魔王に、悟空は噛みつきそうな勢いで反論しようとする。磁路と玄奘がとりなそうとしたところで、「やあ、新年(シンニェンハオ(新年おめでとう)万事如意単語ウアンシルーイー(すべてのことが順調に進みますように)」と各テーブルを順に周ってきた環野が声を掛けた。
 
 各自が挨拶を返した後で、環野は玄奘の隣に座った。どうやら腰を据えて話す気のようだ。悟空はぶすっとした表情で腕を組んで待機している。相手が社長と言えども何かあれば口を挟む構えである。

「玄奘、ダンスに苦戦していると聞いたが」

「そうなんです。思った通りに身体が動かず、自分でも歯がゆいくらいです」

「悩みの元を辿るがいい。一本の糸のからまりなら容易くほどけるが、多数の糸がからまっているとほどくことは難しい」

 相分からず謎めいた環野の発言ではあったが、玄奘は深く頷いた。

 自分の気分が落ちているのは、もちろんダンスの習得がうまくいかないこと以外に金狩が悟空に言い寄っていること、悟空と比べて自分は何もできないと劣等感を覚え、悟空の優しさを素直に受け取れなくなっていることも影響していることは間違いない。すべての問題が絡まり合って複雑化している。

 環野の言う通り、元を辿って解さなければどうにもならないのかもしれない。

「全体をいっぺんに解決するのは難しいから、一つ一つ解決していかないとってことですよね」

「執着の元を辿るのは難しい道かもしれぬな。あらゆるものをあらゆるままに受け入れ、そして委ねるのだ」

 いつもと同じように、自分の言いたいことだけを告げて風のように環野は去って行った。相変わらず何が言いたいのかさっぱりわからねえよ、と悟空は腕組みしたまま呟く。
 
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