続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第五章 揚げ出し豆腐はかわいいですか

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 室内とは言え底冷えのする二月は事務所内の廊下までひんやりとしている。しかしダンスレッスン室に入った瞬間、湿度の高い空気がむわんと身体を包む。ジャニ西とダンス講師六人から発せられる熱気で二重窓ガラスにも結露がつくほどだ。

「そろそろ新曲の出来上がりも近い。練習曲はフルで踊れるようにはなっておるのだろうな」と磁路が発破をかける。四人とも振りは頭に入っているのだが、いかんせん玄奘だけ動きに迷いがあるせいか見劣りがする。

「Beyond the Road」が流れる。ジャニ西皆にとって聞き慣れ、歌い慣れた楽曲だ。悟空はダンスを合わせることで、今まで聞き流していた他者のパートの存在感やテンポに改めて気づける気がしている。ダンス特訓の思いがけない効用だ。

 サビの振りは一曲の中に何度も出て来るので玄奘も多少踊れているものの、そうではないところはまだおぼつかない。金狩は目ざとく見つけて声をかける。

「玄奘さん、振りに自信がないの表情かおに出すぎや。他の人をちらちら見て踊ったらカッコ悪いで。自信なくてもあるように踊ってみ」

「はいっ」
 
 真剣な表情で玄奘は受け答えをするものの、あれは困っている表情だと悟空にはわかる。

「余裕のないやつにあんまりプレッシャーかけること言わんとき」

 隣の銀狩が金狩をたしなめるが、その言い分も無礼ではある。金狩はふん、と鼻を鳴らして聞き流した。

 最後のロングトーンで曲が終わる。それぞれ決められたポーズで四人の隊形を組んで終了だ。

「最後の決めポーズやねんけど、投げキッスしてみたらどう?」

 金狩が自分も投げキスをしながら提案すると、八戒は例の如く調子に乗って四方八方にキスを投げる。

「イイねイイね。サービス精神大事だよねぇ」

 八戒は金狩に向き直ったあと、しげしげと金狩の口を見ながら言った。

「ってか今の投げキッスで気づいたけど、金ちゃん舌ピ開けてるんだね?」

「よう気付いたねえ」と言って、金狩は、「んべっ」と舌を出した。金色のループピアスが舌の側面についている。

「銀ちゃんにもついてんの?」

 八戒がついで、という感じで尋ねるも、銀狩はそっぽを向いた。

「痛いし、臭くなるし、僕は嫌や」

 銀狩の言葉に金狩は慌てる。言い訳するように大声で言った。

「僕のは臭くなってへんよ、ほんまにほんまに」
 
 八戒は構わず腕組をしてうっとりと言った。何かを思い出しているようでもある。

「舌ピ開けてる人とのキスってエッチなんだよねえ。柔らかい舌の中に時々あたる固いピアスがイイんだよ」
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