続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

文字の大きさ
49 / 95
第五章 揚げ出し豆腐はかわいいですか

12

しおりを挟む
「まあどうにもならなかったら……大聖殿」

 磁路が悟空の肩に肘を置く。

「どうにもならなかったら?」

 珍しく縋るような視線を向けた悟空の耳元で磁路は囁く。

「玄奘のために尻を差し出すのだ。男性として生まれてきた以上挿れたいという欲が発生するのは自然なことだ。玄奘は未だ童貞であろう?大聖殿の尻により玄奘に男性としての自覚と自信を取り戻させるのだ。再びダンスという困難に立ち向かうための活力を玄奘に得させるために」

 磁路の囁きは、しかしいつもの如くその声はデカい。その場にいる全員が動きを止めて悟空を見ていた。

「兄貴、まぁた面白そうなことになってんじゃん」

 勘の良い八戒はごたごたの気配を感じとり、即座ににやついた。

「挿れる挿れないは自信の話と関係ないだろっ」

 慌てた悟空は反論を試みるが、磁路と八戒は「関係ないかどうかはやって見ないとわからない」と口を尖らせる。金狩と銀狩は議論の行く末を見守るように黙っている。

 この場での解決を諦めた悟空は大きなため息をついてから言った。

「おい、磁路。おれと玄奘の関係は金狩たちには秘密にしておけって言ったのお前だろ……」

「おお!興奮のあまりつい叫んでしまった。すまぬすまぬ。angle Kさんとangle Gさん、二人の交際についてはまだファンにも隠しておる故、どうぞ内密にしていただきたい」
 
 磁路の頼みに銀狩が「僕に関係ないしね」と軽く頷く一方で、金狩は「そんなん今更やし。だいぶ前から知ってたわ」と平然と言った。八戒は片眉を上げて、金狩を肘でつついて言った。

「へえ金ちゃん、わかっててあんな態度とってたんだあ。やるねえ。寝取る気マンマンじゃん」

 やぶ蛇になるのでは、と悟空は危惧する。案の定八戒の挑戦的な眼差しに対し、金狩も宣戦布告するように余裕綽々で言い返した。

「でも僕が思ってたより二人の仲はぎくしゃくしてるみたいやし。これからもっと押せ押せで攻めたるわ」

 なぜか金狩と部外者の八戒が火花を散らす中、さすがに黙っていられなくなった悟空は金狩の前に立つ。そのまま切り込むような眼差しで金狩を見る。

「悪いけどおれ、生涯玄奘以外と付き合う気ねえから」

 悟空の宣言はシンプルで力強かった。悟空の視線を数秒だけ受け止めた金狩は、次の瞬間ふっと身体の力を抜いた。一気に普段のにこにこ顔に戻っている。しかし、柔和な表情の奥には、まだ油断のならない底知れなさがあることを悟空は感じていた。

 金狩はその人好きのする笑顔で言った。

「僕、空ちゃんのこと好きだとはまだ言ってへんよね?」

「……ああ」

「だからまだ空ちゃんの答えは受け取れへんな。さっきのは聞かんかったことにしとく」

 金狩の言葉に悟空は「まあ、勝手にしろ」と肩の力を抜いた。知らず力が入っていたらしい。なかなか強敵じゃん、という八戒の呟きはシカトする。

 金狩はいつもの調子で続けた。

「なあ、空ちゃんは舌ピ開けてる人とキスしたことある?」

「ねえよ」

「僕と試してみーひん?気持ちいいよ」

「しねえよ」と悟空が答える前に、銀狩が「臭いからやめとき」と茶化した。

「臭くないって!ほら!」

 金狩は飛び跳ねながら否定した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

処理中です...