続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第六章 早朝ランニングと八戒の助言

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 練習曲が仕上がったので、本日からとうとう新曲のダンス練習が開始となった。まだレコーディングできていないので、玉竜の作った打ち込み音源が流れ始める。

「歌詞にも合わせて振りを考えてきたし、僕らがいっぺん踊ってみるから見ててな」

 金狩と銀狩の二人が前に出て踊る。イントロはさりげなくリズムに乗るだけだが、前奏は左右パートに分かれ、鏡のように対称になって動く。肩のアイソレーションと膝を前に出してからぐっと前に倒れる。手を優雅にゆっくり動かしたかと思うと、膝から下のステップが激しくなり、見事な緩急がつけられている。サビ直前の手拍子は横向きになって手品師のように優雅かつ胡散臭く手を重ね合わせた。

 サビの部分はバウンシーな音に合わせてダウンのリズムを取りながらステップを踏んでいる。ラスサビでは銀狩が金狩の後ろにまわり、金狩の肩から腰のラインを沿うように撫でた後、まるでキスをするように顔を近づけた。お調子者の八戒は「ヒューッ」と歓声を上げる。寄り添っていたかと思うとすぐに二人は離れて横並びになり、肩を揺らしながら足を前後に動かす。非常になめらかだ。

 激しい動きなのに力強さよりも歌詞内容を汲んだ焦燥を強く感じるのは、ダンススキルの賜物だろう。

  二人が踊り終わると、磁路が真っ先に拍手をし声をかけた。

「いやはや素晴らしい。流転輪廻の輪への不屈の精神がよく表現されておるのう。さぁ、今度はこれをジャニ西の面々が踊れるように練習あるのみである」

 背後の磁路にバシバシと背中をはたかれ、八戒がいつものようにぼやく。

「いや、カッコいいけどさ。カッコいいけれどもさ。俺らがこれ踊れんのかねえ」

「踊れるかじゃなくて踊るんやで、八ちゃん」

 金狩にも笑いながら背中をたたかれるが、八戒は口を尖らせた。

「もうちょっと脱力した感じのダンスを想像してたんだよねぇ。こんなゴリゴリの体力系ダンス、ライブで踊ったら息切れしそうじゃん」

「これでますます体力増強の必要性が増してきたな。これまで自主練に任せてはきたが、そろそろ本腰を入れるべきであろうな。明朝からジャニ西の四人全員でランニングじゃ。私も付き合うからご安心くだされよ」

 腰に手を当てて仁王立ちする磁路に、案の定八戒は大声で不満を漏らす。

「え~、嫌だよぉ」

 悟空は伏し目がちに片手を挙げた。

「おれ、ランニングは別でいいか?一緒に走ると負荷が足りなくて物足りねえと思うし」

「兄貴、俺達と走りたくないの?なんでなんでぇ?」

 八戒が尋ねるが、悟空は曖昧に首を振った。顔を伏せているためか、悟空の表情はよく見えない。

 悟空と金狩が二人でランニングをしていることを知っている、玄奘と悟浄は目配せをしたが、悟空は気付いていない。
 
 玄奘はずん、と気持ちが沈むのを感じた。そんなに金狩とのランニングの時間を大切に思っているのだろうか。
 
 自分の身を抱きしめるように両手を組んだ玄奘を、背に庇うようにして悟浄は一歩前に出た。

「それぞれ必要な課題に取り組むのであれば、自主練でも問題なかろう。八戒はどうするか知らんが、拙者と玄奘は磁路殿とのランニングに参加させていただくでござる。新曲のダンス内容も場所移動や姿勢転換でわかりにくいが、細かく見てみれば練習曲でやった振りがほとんどであって、新しい動きの習得はさほど必要なさそうである。今までやってきた練習は無駄ではござらぬ」

 汗を拭いていた銀狩は前向きな悟浄の発言を聞き、珍しく爽やかに笑った。

「悟浄さん、さすが。目の付け所がええね。難しそうに見えるけど、一個一個は練習曲でやった振りがほとんどやし、イケると思うで」

 
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