続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第六章 早朝ランニングと八戒の助言

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 その日、悟空の寝室の扉を開けた玄奘は、一心発起したような表情である。

「悟空、今日は一緒に寝ていいだろうか」

 ほんの少しだけ嫌な予感がした悟空は尋ねる。

「……おれは構いませんけど。しばらく別で寝るんじゃなかったです?」

「……あの、あのな。八戒から『ケツで抱く』方法とやらを教えてもらったのだ。単なる恋人ではなく、将来を誓いあう伴侶となるにあたって、大切なのは覚悟なのだそうだ。それを今夜試してみるのはどうだろう、と思ってな」

 頭の回転は速い悟空であったが、さすがに情報量が多すぎて思考が止まった。一旦、手を挙げて玄奘を制止する。

「……ちょ、ちょっと待ってください……」

 ケツ……と言ったか?あの玄奘が?しかもケツで抱く?それが一体、伴侶となるのに何の関係が?

 眉間にしわを寄せて考え込む悟空の様子に玄奘は残念そうに踵を返した。

「悟空の気が進まないというのなら、今日でなくても」

「えっ……と、ちょっと待ってください」

 慌てて玄奘の腕をつかんで引き留めた悟空ではあったが、まずどこから確認するべきか額に手をやって考えた。玄奘はおずおずと悟空の顔を見つめながら律儀に発言を待っている。

 悟空は自室のベッドに玄奘を座らせてから言った。

「一旦落ち着いて話し合いませんか?」

「何を?」

 玄奘は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。本当にわからないらしい。

「おれたちが最近気まずくなってるのは、金狩がちょっかい出してきてるからですよね。おれは玄奘以外と付き合う気はないし、全く気にすることないですよ」

 悟空の言葉はしかし、玄奘にとっては弁解にしか受け取れなかった。

「でも二人きりで走りに行ってるだろう?」

「……知ってたんですか?それはちょっと、……まぁ、そうですけど」
 煮えきらないの態度の悟空に玄奘は、寂しさと悔しさのいまじった気持ちを覚えた。恋人の気持ちが揺れている。それは自分の魅力不足なのであろうと玄奘は考えている。

「いいんだ。悟空が私以外の人を選んだ方が幸せならそうすればいい。しかし私は寂しいし、できればこれからも悟空と共に過ごしたいと思っているよ。八戒から聞いたのだが、こういうもやもやした気分のときは、深く考えずに気持ちいいことをしてしまえばいいんだそうだ」
 
 悟空は玄奘の隣に腰かけた。まだ渋い顔をしながらため息とともに尋ねた。

「……今まで八戒の助言聞いてうまくいったことありました?」

 玄奘は晴れやかな表情で答える。

「悟空と恋人になれたのは八戒と悟浄のアドバイスのおかげだと思っているよ」

 そうだった。この人はこういう人だった、と悟空は思い出す。

「ね、悟空。私は悟空と抱きあうと何も怖くなくなるんだ」 

 玄奘は悟空の膝の上に乗り、首に手を回してきた。ぎゅっと力を入れて抱きしめられる。至近距離で耳元に熱い息を吹きかけられ、「悟空と気持ちいいこと、したいな」と囁かれた。これほどあからさまに玄奘が誘ってくることは珍しい。

 戸惑っている気持ちとは裏腹に、血液は身体の中心に集結してくる。しばらくセックスはおろか、自慰すらもしていないせいだ。

「っと……玄奘?」

 
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