続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第六章 早朝ランニングと八戒の助言

14  R15

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 一旦身体を離そうとする悟空の腕を抑えて、玄奘は唇を重ねた。

「んっ、ちょっと待ってください。おれの話を聞いてください」

 キスの合間に悟空は訴える。しかし玄奘は寂し気な瞳で言った。

「自信の足りない私にはやや荷が重いな。……ねえ、身体が満たされれば気持ちにも余裕が出てくると思うんだ。悟空と一番近くでふれあって、一緒に気持ちよくなって……、それから話し合うのはどうだろう?きっと良い結論を導けるのではという気がするのだが」

 そこまで言われてしまえば、悟空にも異論はない。

 顔を近づけると玄奘の方からキスをしてくる。悟空の口腔内から舌を引っ張りだそうと唇で吸っている。首の角度を変えながら、ちゅうちゅう、と音を立てて吸う玄奘の、その不器用なところまでも愛おしい。もしかして行為をリードしようとしているのだろうか。ケツで抱くとはそういう意味か?

「そういえば以前、おれに挿れたいと言ってましたね。ケツで抱くのもその第一段階です?」

 玄奘は嬉しそうに頷いた。

「うん。ゆくゆくは攻受交代も……と思っているから、その第一段階として私もえっちなことをリードできなければと思ってね。悟空はいやだろうか?」

「いやではないですけど……」

「悟空が拒否できなくなるくらい、気持ちよくさせればいいんだろう?」

 玄奘は悟空をベッドに押し倒した。やりなれない行為は少々力が強すぎたようで、ベッドについた瞬間悟空の頭がぽすんとはねた。

「すまない悟空。痛かったか?」

「このぐらい屁でもねえですよ」

 玄奘はくすっと笑いながら、悟空の後頭部を愛おしそうに撫でた。そのまま悟空の上に載しかかって、顔を近づける。

「いつも悟空が私のことを気持ちよくさせてくれるのだから、今日は私が悟空を気持ちよくしよう」
 
 まるで白馬に乗った王子様のように凛々しい一言に思わず悟空は息を呑む。Vtuber konzenのオタクだった時分、これほど顔がきれいな推しに床ドンされて口説かれる未来がくるとは思っていなかった。

「きれいです、玄奘」

 悟空は玄奘の首に腕を回してキスを強請った。深く口づけると玄奘は簡単に声が出てしまう。悟空は美しい顔を丹念に眺めながらキスを続ける。

 ようやく唇を離された玄奘の頬と耳はすでに蒸気している。色白な彼はすぐに肌が赤くなるのだ。

「んっ、ふ……ン……悟空、どうしてほしい?この勃ってるところ、さわってもいいだろうか?」

「お好きにどうぞ」

 悟空は片唇を上げて笑った。性的経験の少ない恋人が、自分のために奮闘している。それに興奮しない男などいまい。

 玄奘は遠慮のない手つきで、ぺたぺたとそこをさわりながら「硬いね……。直接、いや、まずは服の上からかな?とりあえずファスナーを……」と先へ進むのをためらっている。

「何度もセックスしているのに、まださわるの恥ずかしいんですか?」

 おれはわかる。今、自分でも気持ち悪いくらい、にやついていることを。

 玄奘から求められること、久しぶりに玄奘と身体を重ねることは想像以上におれにとって幸福らしい。

 悟空のからかいに玄奘はさらに顔を赤らめた。

「私ばかり裸になることは多いけど、悟空だけを脱がせることってあまりないから……」

「一緒に脱ぎます?」

 玄奘は首を振った。

「今日は悟空を気持ちよくする日、と決めているからね。私はあとで脱ごう」

 玄奘がやっと悟空の服に手をかけた瞬間、スマホが鳴った。悟空のスマホから着信を告げるメロディーに玄奘が手を止める。

「誰だろう、磁路さんかな」

「放っておけばいいですよ」

 構わずに服を脱ごうとする悟空を止めて、「急用かもしれない」と玄奘は悟空の代わりに彼のスマホを手に取った。画面に表示された名前を見た瞬間、一気に赤かった頬が熱を失って青くなるのがわかった。

 何も言わずに渡された画面を悟空は見た。金狩だった。悟空は「放っておけばいいです」とサイドテーブルにスマホを投げたが、玄奘は首を振った。

「電話には出た方がいい。邪魔だろうから私は自分の部屋に戻ろう。おやすみ」

「ちょっと待ってください。……玄奘」

 玄奘は静かに扉を閉めた。こういうときに物に当たるすべを玄奘は知らない。


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