続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第七章 過労

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 目を覚ました玄奘は自分に毛布がかかっていることに気づいた。事務所の練習室でピアノに突っ伏した状態で寝たらしく、身体の節々がぽきぽきと音がなるくらい軋んでいる。

 紅害嗣や納多らと別れたあと、しばらく自主練習をしてから帰宅するつもりだったが、そのまま眠ってしまったらしい。

(磁路さんがかけてくれたのかな……)

 玄奘は毛布を引き寄せながら思った。

 身支度を整えてダンス練習に向かうと玄奘以外の皆はすでに来ておりストレッチをしていた。玄奘の顔を見るなり悟空は寄ってきて「朝ごはんは食べました?少しクマができていますよ。少し寝てきてはどうですか?」と世話を焼く。なんでも完璧にできる悟空に面倒を見てもらいっぱなしの自分ではいられない。

「悟空、だいじょうぶだよ」と首を振って、ストレッチに加わった。

 悟浄と銀狩は昨夜もゲームのオンラインプレイをしたらしい。八戒も加わって「ゲームのオンラインプレイって楽しいの?相手の声しか聞こえないんでしょ?テレセの類(たぐい)はあんまり興奮しにくいタイプなんだけど、そんな俺にも楽しさ理解できる感じ?」とくだらない会話をしている。

 金狩は悟空の腕を引っ張っていき、二人きりで立ち位置やフォーメーションの相談をしている。ジャニ西メンバーの中で一番ダンスがうまいのが悟空であるから、その人選は適当ではあるがそれ以外の理由もあることを玄奘も当然気づいている。

 玄奘は何度かつばを呑み込んでから、顔を寄せ合って相談している二人に近づいた。

「あ、あの……」

 金狩は顔を上げた。

「なに?玄奘さん」

「わ、私もフォーメーション、一緒に確認したいです」

 一呼吸だけ沈黙が下りた。金狩はくすっと笑って言った。

「そうやな、玄奘さんが無理なく動ける範囲を確認しながらやった方が効率的やんね。じゃあ、一緒に聞いてもらお」

 悟空は存外穏やかな顔で金狩との自分との間に玄奘を挟んだ。

 金狩が説明する。

「ペアで踊るところが多いねんけど、玄奘さんはどうしたい?僕はスキルレベルとしても今の練習ペアそのままで組んだ方がいいかなって思うんやけど、空ちゃんは反対やねんなぁ」

「ペア組むとしたらおれと玄奘、八戒と悟浄だ。このグループのコンセプトとしてもそれ以外にはありえねえよ」 

 ごく当然という態度で自分と悟空をペアだと言い張る悟空に少し安堵する。玄奘も隣で同意した。

「そうですね。私も悟空と組むのが一番自然だと思います」

 金狩は軽く頭を掻いた。

「せやけど、あまりダンスの実力の差がある人が組むと粗が目立つし、僕はあんまりお勧めできへんなぁ」

「おれがいくらでもカバーする」と悟空が言ったと同時に「私が追いつくようにしますから」と玄奘も言葉を重ねた。

 前のめりになる二人を見て、金狩は仕方なさそうに頷いた。

「そうかぁ。じゃあまあ、練習あるのみやんな。しごくからちゃんとついてきてな」
 

 




 金狩の宣言通り、練習は一層きつくなった。四人でダンスを合わせながら、曲の途中で移動するフォーメーションも覚えていく。

 金狩は手拍子を入れながら「玄奘さん、半歩位置ずれてるで」、「悟浄さん、床を見ずに動いてな」と檄を飛ばす。言い方がきついわけではないが、少しのミスも許さないという雰囲気である。一方の銀狩は「いいよ~、足の高さ合ってきてるで~」、「タイミング大事やで~」と金狩の指導を和らげる役割に徹している。練習を始めたばかりのときは金狩が気さくで銀狩が冷淡な印象ではあったが、これも意図して正反対の態度をとることで互いを補完しあっているのかもしれない。

 悟空のダンスに見合うよう追いつくようにする、と言った手前、弱音を吐くわけにもいかない玄奘は、必死に練習についていく。

「玄奘さん、いっつもターンが遅れてんで。もう一回、まわろっか。はいっ、せーのっ」

「……はぁはぁ、はいっ」

 何度も何度もその場で回る。足が先に回っていくのに、空っぽの胃がついていかない。身体の軸がぶれていく。頭が白くなっていく。

 ばたん。

 大きな音を立てて、玄奘は倒れた。
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