続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第十章 伴侶としての覚悟

2 R18

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 ベッドの上に全裸の玄奘が四つ這いになって尻に指を沿わせている。カーテンを開け放した真昼間の光に照らされながら、羞恥心と好奇心で身体全体を紅く火照らせているその後姿に、悟空は釘付けになる。

 玄奘の指はほんの入り口を行ったり来たりしていてそれ以上奥に入れる気配はない。悟空はその真白な双丘に近づいていく。もっと近くで見たいのだ。

「もう少し入れてもだいじょうぶですよ」

「でも……入っていかないよ」

「ちょっと手を借りますよ」

 悟空が玄奘の手を取り、少しずつ奥へ進ませた。

「ンん……はぁっ、キツ……」

「痛いです?」

「ううん……、でも収縮が強くて指を締め付けてくるというか…ン、なんか変な感じだ」

「しばらくヤってないせいかもしれないですね」

 悟空は玄奘の指を中に置いたまま、自分の指も同じ穴に入れた。たしかに初めてのときのように収縮が強いかもしれない。玄奘は悟空の指が入ってくるとすぐに反応が変わった。

「はぁっ……ン、んっ、んあ、ごく……ぁあっ、悟空の指……わかる、んっ、あぁ……」

「この辺にね、あるんですよ。いいですか?」

 悟空は玄奘の中のある一点を押した。

「はぁああっんっ……んふぅ」

「ね、イイところ。ここですよ。玄奘も自分の指で押してみて」

「ぁああっ、ん……ん、ここ?……ンぁああっ」

「いいですよ。そのまま自分でそこ弄ったまま、前も扱いてみましょうか」

 悟空は指を抜いてしまった。

「ぁああっん……んふ……抜かないで、ン、」

 玄奘は振り返って悟空をすがるように見るが、悟空はベッドから立ち上がり玄奘の全身がみられるように距離をとった。そして玄奘しか知らない、溶けるような甘い声で促す。

「今は玄奘が一人でスるところ、見せてください」

 玄奘は四つ這いになったまま、右手で後ろの孔を左手で前の屹立を扱く。最初は遠慮がちだった手がだんだんと激しくなっていく。同時に玄奘の息は上がり、頬は紅潮していく。顔と肩をシーツに押しつける一方で、見せつけるように尻は高く上がっていく。

 世界で一番美しい推しが己による刺激のみで恍惚の表情を浮かべている。それはきっと世界で一番澄みきった行為だ。なぜなら、推しの存在を汚す邪魔者が一片たりとも存在せず、事象が推しのみで完結しているからである。
 
 見ている悟空のそれは当然完全に勃ちあがっており、寝間着のズボンを押し上げている。この尊い玄奘の自慰を見ているだけでイきそうなのを必死でこらえながら、悟空はこの美しくて妖艶な姿を網膜に焼きつける。自分が死ぬときの走馬灯はこれがいいと思っているのだ。

「ふぅ……ん、は、恥ずかし……ん、ぁん、ごく、ん、ぁん……ぁあっ、イイ……」

「自分でするの、気持ちがいいですか」

「……ぁあっ、ん……、ぁん、イイ……んぁ、ぁあっ、ン」

「……すごく綺麗ですよ」

 悟空は決まりきった誉め言葉しか言えない自分が疎ましい。美術館で名画を前に、感涙に咽び泣く通(つう)の鑑賞家がいたら、その気持ちわかりますと握手を求めたい気分である。真に美しいものは言語化できないのだ。悟空は玄奘の嬌態を食い入るように眺める以外は何もできず、ただ突っ立っている。

 玄奘は息も絶え絶えになりながら誘う。

「ぁあ、ン、……ねぇ、物足りない、ね、……ぁ、悟空……ぁん、ごく……」

「だめですよ。自分でイってください」

 悟空にとって今の玄奘に手を出すわけにいかない。美しい推しをそのまま見ていたいせいだ。自分という邪魔者を介在させるのは惜しい。

 悟空はサイドテーブルにあったスマホを持ち、夢うつつの気持ちで尋ねた。

「玄奘、撮ってもいいですか?」

「ン……ダメ。ふぅ、んダメだ」

「おれしか見ませんから」

「ぁあん……ダメ」

 玄奘は頑なである。見かけによらず彼は頑固なのでこれだけ言い張るのであれば、悟空の言うことなど聞くはずもない。隠し撮りという概念は悟空にはない。玄奘の言うことは絶対である。悟空は諦めて別の交渉をすることにした。

「じゃあ今日だけじゃなくて、……また今度も、おれの前でシてくれます?」

「ン……、っぁあん、……わ、わかった……ね、ぁあっ、悟空、ねえイきたいのに……ぁ、ん……イかせて、ぁん、悟空、ねぇ……んふぅ……」

「気持ちいいでしょう?そのままイけますよ」

 余裕のなくなった玄奘はいよいよ両脚を広げ、尻を突き出すようにして腰を動かし始めた。悟空の面前に玄奘の菊門が顕わになる。すさまじい色気の旋風が吹き荒れている。

「ぁあっ、ン、ぁあっ、ご、悟空……見て。ン、ぁあっ、恥ずかしい……ん、……ぁん、イきそ……イイ……はぁ、恥ずかしい私を、ン、見てくれ……」と真っ赤な顔で言いながら、淫らにひくつく孔を自分でかき混ぜている推し兼恋人から言われた瞬間、悟空はどこからか解放感を感じた。

「あ……」

 思わず前を抑える悟空を見て、玄奘も思わず自分の手を止めた。

「もしや悟空、イったのか」

 さわりもしていないのに射精してしまったとあれば、男としての名折れである。悟空は片手で前を抑えつつ、もう片方の手の甲で汗を拭きながら弁解する。

「……いやあの、玄奘。おれが、あの、早漏とか老化とかそういうことじゃなくてですね。あの……しばらく玄奘としてなかったですし、おれも溜まってたというか。久しぶりの玄奘の身体は、やっぱり……その綺麗というか……改めてその美しさに興奮してしまったが故の粗相といいますか。その……えっと、早漏じゃないですからね。もしですよ、万が一、仮に玄奘の中の刺激が良すぎてすぐにイってしまったとしても、あのおれは、玄奘さえ良ければ何度でも、何度でもできますから……あの、ご安心してもらってだいじょうぶです。……というか、あの……えっと……すいません。嫌いにならないでください」

 慌てながら頭を下げた悟空の様子を見て、玄奘はくすくすと笑った。気が抜けたせいか先ほどまでの妖艶な色気は若干弱まっている。

「ふふ、だいじょうぶだ。そんなことで嫌いになるはずないだろう」

 悟空は安堵の息をつく。それでも面目ない表情で立ち尽くす悟空の手を玄奘が引き、二人はクイーンサイズのベッドの上に腰を下ろした。悟空は濡れた下着もろともすべて脱いでしまう。

「ね、……私はまだイってないのだよ」

 玄奘の吐息交じりの声に悟空のそれは再び充血を始める。玄奘はさえない表情の悟空の両頬を抑えて顔を近づけた。

「収録前に私だけを抜いてくれたじゃないか。だからお互い一回ずつイっただけ。おあいこだよ」

「情けないです」

「そんなに気にすることないよ。私の自慰を見て興奮してくれたんだろう?うまくできている自信がなかったから少し安心したよ」

 鼻先をくっつけたまま玄奘は話し、そのまま唇を合わせた。ちゅ、という音で離れた唇を追いかけるように悟空が再びキスをする。何度か角度を変えながらキスをしていると、ふれあっている腰元にも膨張してくる質量を感じる。

「……悟空、私はさわってほしいし、さわりたい……な」

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