続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第十章 伴侶としての覚悟

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 玄奘の孔を再び念入りに解したあと、風呂と快感の熱にのぼせ上りましたという顔で玄奘は再び提案した。

「んふぅ……では今度は私が悟空のそこを解してあげよう。今日は悟空に挿れてみたいんだ」

「だめですよ。もうのぼせた顔してるじゃないですか。一旦上がらないと倒れますよ」

「ではベッドでしてもいいだろうか」

 今日はなかなか諦めようとしない玄奘に悟空はため息をついた。ただし呆れたわけでも落胆したわけでもない。なぜ玄奘がそこまでこだわるのかまだ理解できないせいである。

「玄奘にそんな汚いところをさわらせるわけにいかないです」

「悟空は私のすべてをさわってくるくせに」

「玄奘に汚いところなんてないからですよ」

「……私だって悟空のすべてをさわりたいんだっ」 

 玄奘は珍しく大きな声で言い放った。軽くいなそうと思っていた悟空は玄奘が真剣な顔をしていることに今更気づいてはっとした。

「いつも悟空は私のことを大切にしてくれるし、気持ち良くしてくれる。悟空はなんでもできるすごくカッコいい自慢の恋人だ。悟空に挿れてもらうとすごく気持ちいいし、世界で一番近い場所にいるんだって肌で感じられるからすごく好きだ。これ以上幸せなことはないよ。でもね、それだけじゃだめなんだ。私も、私だって悟空を気持ち良くさせられる力があるんだと、悟空と私は対等なパートナーであると実感したいんだ。だから私は悟空に挿れたい……ダメかな」

 これまでの悟空は、玄奘が役割交代リバを望む理由を単に好奇心のためだと思っていた。これほどまでに恋人としてのお互いの立ち位置を考えての提案だったとは思っていなかった。悟空はふぅっと大きな息をついた。

 そういえば磁路からも「玄奘に男としての自信を取り戻させるために悟空の尻を差し出せ」というようなことを言われた記憶がある。正直その時は意味があるとは思えなかった提案だったが、もしかしたら今の玄奘にとって必要なのは役割交代をすることで互いに伴侶としての自信を高めていくことなのかもしれない。

 金狩のことも気になっていただろうに、悟空が説明するまでは玄奘から尋ねてくることもなかった。そのいじらしさを悟空は愛おしいと思うが同時に、悟空が玄奘にベタ惚れであることにももう少し自信をもってもらいたいものだと思っている。
 
 玄奘がここまでリバを望んでいるならば悟空には反対するつもりはない。アナルへの挿入はほとんどしたことがないが、逆に言えば初めてではないので勝手はわかる。玄奘の快感を高めるよう奉仕する方が性に合っているので攻役であることにこれまで何の疑問も持っていなかっただけである。
 
 悟空は誓いを立てるような気持ちで玄奘の唇に自分のそれを合わせた。やわらかい唇の感触を確かめるように時間をかけて押しあててから、至近距離で目を合わせた。玄奘も祈るような目で見つめてくる。

「わかりました。玄奘に挿れてもらいましょう」

 玄奘は悟空の本音を確かめるように目の奥を覗きこんだ。

「本当に?嫌ではないのか?」

 玄奘の目が煌めいていることに悟空は内心感嘆のため息をつく。美しい、美しい瞳だ。こんな目で見つめられたらおれは反対なんてできるわけないじゃないですか。

「おれはあなたが望むなら『別れる』以外のことならなんでも聞きますよ」

 すべてを天に任せるような悟空の返答を聞いて、玄奘は相貌を崩した。

「よし、悟空をイかせられるよう頑張るからな」

 さっそく悟空の尻に手を伸ばそうとする玄奘の指をつかまえて、悟空が笑った。

「挿れるのはかまいません。でもおれのはもうずっと使ってませんから準備に手間がかかるでしょう。玄奘にさせるには忍びないのでどうか自分でさせてください」

「なんでも言うことを聞くと言ったその舌の根も乾かぬうちに、もう言うことを聞かないじゃないか」 

「玄奘だって人の尻を解したことなどないでしょう?おいおい学んでいきましょうよ」

 学ぶことにかけては勤勉さに自信のある玄奘である。納得した表情で頷いた。

「そうか、そうだな。千里の道も一歩から、だな。ゆくゆくは私も悟空のようにカッコよくスマートにリードできるようになることを目指して、まずは目の前の一歩からだな」

 玄奘がスマートに性行為をリードするところなど想像できない悟空は知らず口元が緩む。

「別に今のままの玄奘で良いと思いますけどね。挿れる方が挿れられる方よりもカッコいいわけじゃないですよ」

「わかっているよ」

 若干機嫌を損ねた様子の玄奘を取りなすように悟空は泡の下に隠れている玄奘の下腹に手を置いた。

「中で感じる才能がないと玄奘みたいに気持ち良くなれないんですよ。玄奘は挿れられる方が向いてると思いますけどね」

 悟空が撫でる下腹の範囲は悟空のそれが内側から届く範囲だ。思ったよりも長い範囲に玄奘の孔はすぐに疼き始める。先ほどからずっと指の刺激ばかりでまだ一度も質量の大きなそれを受け入れていないのだから。

 甘えを含んだ拗ねた表情で玄奘は言った。

「それはやってみなければわからないだろう?それに悟空だって中で感じる才能があるかもしれない」

「まあとりあえず、やってみましょう」

 悟空は軽いキスをしてから、からかうように玄奘の鼻先に泡をくっつけた。うふふ、と笑う玄奘を見るとやっぱり相当に可愛らしく、この恋人に自分が抱かれる姿を未だ想像できない悟空である。

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