続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第十章 伴侶としての覚悟

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「ほら、素直になって」

 玄奘が半ば強引に悟空を後ろに向かせた。やろうと思えば力を入れて振り払うことも可能だが、玄奘相手に手荒なことはできない。

 再びうなじに舌を這わせると、悟空はびくんと体を震わせて唇を噛んだ。声を出すまいとしているのだ。

「ん……くっ」

「悟空……声出して。唇から血が出てしまうよ」

 玄奘は悟空のうなじに三つ並んだ黒子それぞれを愛おしむように順に唇をあてていく。首元を吸いながら玄奘は腕を悟空の前面に回し、その力が入った唇をいたわるように優しく撫でる。それでも悟空は唇を噛みしめたままでいる。

 玄奘はうなじを軽く噛んだ。

 「ひゃあぁあんっ……」

 その瞬間、再び嬌声が出た。玄奘はその隙に悟空の口に自分の指を入れた。玄奘の指に噛みつくわけにはいかない。悟空は仕方なく口を半開きにしておく。玄奘がうなじのくぼみに舌を這わせたり、黒子を吸ったり、首の筋に軽く歯を立てていくと、悟空の口の隙間から堪えきれない喘ぎ声が漏れる。

「ぁ……ァん……ン」

「悟空、可愛い。気持ちが良いんだね」

「っぁ……ン、くく……っあ、か、かわいくね……」

 反論をしようと思ったのに玄奘の指が悟空の口の中を撫でまわしてきたせいで、うまく言葉を発することができない。玄奘は悟空のうなじを吸ったり舐めたりしながら、悟空に自分の指を吸わせた。

「ぁっ、んん……、悟空、もっと吸って。そう……ぁん、上下に動かして、っぁあ、ン」

 首の裏側すぐで玄奘が艶めかしい息を吐きながら、ちゅぷちゅぷと舐めてくる。背面のせいか、正面から抱き合っているよりも皮膚の距離がすごく近い気がする。

 まるで皮膚を突き抜けて脊髄を直接舐められているようでひどく無防備だ。こんな脊髄にふれるような接吻は今まで誰にも許したことはない。自分の中に眠っていた快感の種子が玄奘の接吻を栄養として次々と発芽してくるような不思議な気分でもある。

「ぁあっ、ん……はぁっ、ン……ふぅ……ぁあ、玄奘」

 悟空は虚空に手を伸ばした。初めての強烈な快感が恐ろしかったせいだ。早く玄奘を抱きしめて安心したい。

「ぁあ……悟空」

 すぐに意図を察してくれた玄奘は悟空の身体を反転させて、再び自分の膝の上に座らせ、強く抱きしめた。安心した悟空は胸いっぱいに玄奘の香りを吸い込む。玄奘の腕の力強さに安堵を感じると共に胸がどきどきしていることに悟空は気づく。

「玄奘……」

 玄奘の肩から頭を離して目を合わせれば、愛しい玄奘の顔が悟空を優しい眼差しで見つめてくる。何度見たってやっぱり好きだなぁと悟空は思う。

「悟空、気持ち良かったんだね。……良かった。私も嬉しい」

「……玄奘はこんなおれ見て、幻滅したり、……しなかったですか?」

 悟空はおそるおそる尋ねるが、玄奘はすべてを受け入れる大悲心の表情で笑った。

「これが幻滅した顔に見えるか?」

「……見えません、けど」

「幻滅どころか、すごくドキドキしている。愛しい人を気持ちよくしてあげるのはすごく幸せなことなんだね。悟空が私のことをいっぱいさわってくれるのもきっとこういう気持ちからなんだろう、とよくわかった」

 相変わらず玄奘の言葉はストレートで屈託がない分、聞いていてとても恥ずかしい。悟空は顔を赤らめながら言った。

「玄奘が幸せを感じてくれてるなら、あの……良かったです」

 結局悟空は玄奘が望むことならなんだって受け入れる以外の選択肢はないのだ。前世は師弟関係、今世は推しとオタクとして生まれてきた二人の宿命なのだろう。  

「悟空が喘いでいるところ、すごく素敵だったから興奮してしまった。ほら、……ね」

 玄奘は悟空の手をとり、自分の中央に導いた。玄奘のものは完全に充血してびんびんに張り詰めていた。今までにない硬さかもしれない。

「がっちがち……じゃないですか」

 これから起こることへの若干の恐怖を伴いながら悟空が言う。このがっちがちのびんびんをおれに……挿れるのか。

 悟空の気も知らず、玄奘は美しい顔で悟空の顔を覗きこむ。

「心配することなかっただろう?悟空が喘ぐと私はひどく興奮するようだ」

「……そんな綺麗な顔で、……ミナイデクダサイ」と真っ赤な顔で俯いた悟空の頭を、玄奘は優しく撫でた。
 

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