続 深夜の常連客がまさかの推しだった

中島焔

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第十一章 新たな舞台

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 翌日もダンス練習であるがこれまでと違うのは、実際にアカペラで新曲を歌いながら踊るのである。長期間の特訓を終え、ダンスだけであればほぼ完璧に踊れるようになったジャニ西ではあったが、本気で歌いながらのダンスはまだ未知の世界だ。
 
 それでも悟空と玄奘の二人は浮き立つ心を隠せない様子で、練習室へ向かう廊下でもさりげなく小指同士をつないでいる。

「何あれ、はっずかしいの」

 めざとく見つけた八戒が悟浄に耳打ちすれば、悟浄より袖を引かれて忠告される。

「仲直りした証拠でござろう。さんざん行き違ったのだから茶化して邪魔するでないぞ」

「わかってるってば。兄貴たちって俺たちから本当に甘やかされてるよなぁ」
 練習室で待っていたのは銀狩だけだった。

「金は先に大阪に帰ったわ。もう振りは完璧に入れてるし、実際に歌ってみて体力が持つかどうかやろ?これはもう振付師ぼくらの仕事ってより、キミらの体力勝負やからな」
 
 悟空は解決済みだと言っていたものの、ダンスのときになれば金狩と再び顔を合わさざるを得ないと覚悟していた玄奘には肩すかしであった。

「もう煩わされることはないって言った通りでしょう?」

 悟空から顔を覗きこまれて玄奘は「本当だね」と小さな声で頷いたあと、銀狩に向き直って非礼を詫びた。

「金狩さんが帰ってしまって良かったと思っているわけではないですよ。ごめんなさい。銀狩さんが残ってくれて嬉しいけれど、金狩さんにもこれまでの礼をきちんと伝えたかったのに」

 銀狩はいつも通りごくさらりと答えた。

「金は追い出されたわけやなくて、こっちの都合やし。知らんかもやけど僕ら人気者やから、仕事いっぱいあんねんで」

 銀狩の様子からは金狩と悟空の事情を知っているのかどうか判然としない。まだ動いてもいないのにペットボトルをごくごく飲んでいた八戒が話に加わった。

「銀ちゃんが俺たちに慣れてくれてた後で良かったよ。初期のツンケン銀ちゃん単独での練習だったら俺逃げ出してたかもしれねえ」

「銀狩殿の態度が一見そっけなく見えるのは人見知りであるから故のこと。慣れてくればどうということもござらぬ。拙者、昨夜も周回プレイを遅くまで一緒しながら、彼の悩みを聞いておったところでござる」

「わー、あかんて、悟浄さん」

 銀狩が悟浄を止めにかかるが、八戒が興味深々で乗り出してくる。

「なになに、銀ちゃんの悩みって何?」

 わらわら話している面々を遮ったのは、磁路の滔々とした声だった。

「良いか、皆の者っ。今度の新曲はわれらJourney to the Westにとって天下分け目の戦いとなる。初めてのダンス楽曲である。アカペラボーカルグループであるからダンスがしょぼい、あるいは逆にダンスが激しかったせいで音を外したとあっては、ジャニ西の名折れであるぞ。ダンスと歌の二つを完璧にこなしてこそ、世界を獲れるアーティストとなるのである。わかるか?さぁ気合いを入れて踊ってほしい。さぁ、さぁ」

 磁路の背後にメラメラと燃える炎が見えるのはエフェクトだろうか。天将の神格的能力を日常的に使用しないでいただきたいものである。そのままダンス開始の掛け声を始めそうな磁路の肩をポンと叩いてのんびりと言ったのは銀狩であった。

「磁路さん、まぁ落ち着きや。まずは準備体操からな」
  
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