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1章 冒険の始まり
31話 鍛冶作業の初体験
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奥の部屋に入ると、床は木製だが、壁や天井は鉄のような素材で作られた部屋だった。
部屋の奥には製鉄炉(巨大な鍋みたいだ……)と金床があり、その上には煙突のようなものがある。
でも、風を外に流す仕組みがないのか少し暑かった。
「じゃあ、準備を始めるよ。タンジーちゃんは、リョウさんと自分に水の幕をお願いできるかな?」
「はーい! じゃあ、お兄さんはもっとわたしにちかづいてね!」
タンジーは笑顔でクレソンさんに返事をすると、俺を近くに呼んだ。
俺が目の前にくると、タンジーは目をつむって両腕を広げる。
次第にタンジーの方から、熱……と言うか、魔力が高まってくるのが伝わってくる。
その魔力が俺を包み込んだ時に、タンジーは力強く呟いた。
『うぉーたーふぃるむ!!』
タンジーが呟いたと同時に、体全体をひんやりした見えない膜が包み込んだ。
これはすごい! こんな素晴らしい魔法があったら、冷房が要らなくなるな!
「これでいちじかんはもつと思うよ! あんまりあつくなりすぎると、もっとみじかくなるけど……」
「これがさっき言っていた、タンジーの魔法の膜なんだね! すごくひんやりして、気持ちいいな!」
「えへへ~、すごいでしょ!!」
これはお世辞抜きですごい! 俺も練習したら使えるだろうか?
タンジーの頭を撫でて誉めちぎっていると、準備が出来たとクレソンさんから声が掛かる。
「お待たせ。タンジーちゃんは、出来るだけ離れていてね。リョウさんはこちらへ」
呼ばれて金床まで行くと、真っ赤な鉄の塊があった。
タンジーの魔法で分からなかったが、すでに部屋はかなりの高温なのだろう。
「今から槍の穂先を打っていくんだけど、最初に五発くらいこの金槌で打ち込んでもらいたい」
「えっ……でも、俺なんにも知識無いから、どこを叩けばいいのか……」
困惑する俺に、クレソンさんは汗を浮かべたまま、にやっと笑う。
「俺の勘だと、リョウさんなら大丈夫。ビギナースピアの穂先をイメージしながら、全力で打ち込むんだ」
「勘ですか!?」
「どんな仕事もそうだが、勘ってのは意外と大事なんだ。もちろん、勘だけじゃダメだけどな」
基本を学んだ上で、慣れてくれば勘が働くこともある。
クレソンさんが言っている勘は、経験に基づいたものみたいだな。
「わかりました。クレソンさんの勘を信じます!」
そう伝えると、クレソンさんは笑顔のまま俺に金槌を渡してきた。
金槌を受け取り、赤熱の金属と向き合う。
ビギナースピアの穂先をイメージする……
俺はイメージを固めると、金槌を振り上げて力一杯叩きつけた。
ガキンッ
……熱いし、反動が強くて手が痺れる……
でも、五回くらいならっ!
ガキッ
ちょっと外したか? しっかりイメージを……
ガギンッ
ぐっ……なんて反動だ……でもいい音だった!
ガギンッ
……あと、一回、全力で、イメージを込めて……!
ガキィーン……
うぉ……頭に響く……
反動と高い音で、元々ふらついていた俺は後ろに倒れ──
「おっと、大丈夫かい?」
「あの、穂先は……」
クレソンさんに受け止められたが、お礼よりも先に質問してしまった……
「いい打ち込みだったよ。初めてで、あれだけいい音をさせられるなら上等だ!」
「よかった……」
「あとは俺に任せて、隣の部屋で──」
「……お邪魔かも、しれませんが、最後まで、見させて、もらえませんか?」
ふらふらしてるし、いつのまにか汗だくで、息切れもしているけれど……
初めて俺が作成に関わった槍の、完成する姿を見たい……!
「こりゃ、言っても無駄だな? お~いタンジーちゃん、ちょっと来てくれ!」
「はーい! お水出す?」
「ああ、リョウさんに冷たい水を出してやってくれ。このままだと倒れちゃうからな」
「まかせて!」
タンジーは、すぐに『うぉーたー』で水を出してくれた。
「はい、お水だよお兄さん。ゆっくりのんでね?」
「ありが、とう……」
少し口に含むだけで、全身の疲労が抜けていくかのようだ……
俺が少しずつ水を飲んでいる間も、金属を叩く音は止むこと無く、聞こえている。
作業を初めてから、どれくらい経ったんだろう?
すごく長い時間のようだが、タンジーの魔法はまだ切れてはいない。
だから一時間はまだ経っていないはずだが、俺には何時間も経っているように感じられていた。
ふと気付くと音が止んでいて、タンジーが呼ばれていた。
赤熱していた金属の塊は、今や槍の穂先の形になっている。
温度が大分下がっているのか、金属本来の黒っぽい色になっているな。
クレソンさんの指示でタンジーが『うぉーたー』を使い、大きめな水のボールを作り出した。
すると、クレソンさんは工具で槍の穂先を掴み、その水の中に入れた。
穂先の温度があまり高くないからか、軽くジュッと音を立てただけだった。
しかし真剣に見つめている様子から、なにかを見落とさないようにしているのかもしれない。
数分して、水から出した穂先をじっくりと見定めていたクレソンさんは、満足そうな笑顔を浮かべた。
「うん、これはいい出来だな!」
「本当ですか!?」
俺の質問に、クレソンさんはにやりと笑って頷いた。
「間違いなく、この素材にしては業物だ。大成功だよ!」
「お兄さん、やったね!」
「ありがとうございます! このあとはなにか手伝えることはありますか?」
穂先は大成功でも、まだ柄と合わせなきゃならないだろうと思って聞いたのだが。
「このあとは仕上げをして、柄に嵌め込むだけだから、あとはゆっくりしていてくれ」
「分かりました。よろしくお願いします!」
流石に、素人が仕上げに手を出すわけには行かないか。
せめて、最後までしっかり見ていよう。
部屋の奥には製鉄炉(巨大な鍋みたいだ……)と金床があり、その上には煙突のようなものがある。
でも、風を外に流す仕組みがないのか少し暑かった。
「じゃあ、準備を始めるよ。タンジーちゃんは、リョウさんと自分に水の幕をお願いできるかな?」
「はーい! じゃあ、お兄さんはもっとわたしにちかづいてね!」
タンジーは笑顔でクレソンさんに返事をすると、俺を近くに呼んだ。
俺が目の前にくると、タンジーは目をつむって両腕を広げる。
次第にタンジーの方から、熱……と言うか、魔力が高まってくるのが伝わってくる。
その魔力が俺を包み込んだ時に、タンジーは力強く呟いた。
『うぉーたーふぃるむ!!』
タンジーが呟いたと同時に、体全体をひんやりした見えない膜が包み込んだ。
これはすごい! こんな素晴らしい魔法があったら、冷房が要らなくなるな!
「これでいちじかんはもつと思うよ! あんまりあつくなりすぎると、もっとみじかくなるけど……」
「これがさっき言っていた、タンジーの魔法の膜なんだね! すごくひんやりして、気持ちいいな!」
「えへへ~、すごいでしょ!!」
これはお世辞抜きですごい! 俺も練習したら使えるだろうか?
タンジーの頭を撫でて誉めちぎっていると、準備が出来たとクレソンさんから声が掛かる。
「お待たせ。タンジーちゃんは、出来るだけ離れていてね。リョウさんはこちらへ」
呼ばれて金床まで行くと、真っ赤な鉄の塊があった。
タンジーの魔法で分からなかったが、すでに部屋はかなりの高温なのだろう。
「今から槍の穂先を打っていくんだけど、最初に五発くらいこの金槌で打ち込んでもらいたい」
「えっ……でも、俺なんにも知識無いから、どこを叩けばいいのか……」
困惑する俺に、クレソンさんは汗を浮かべたまま、にやっと笑う。
「俺の勘だと、リョウさんなら大丈夫。ビギナースピアの穂先をイメージしながら、全力で打ち込むんだ」
「勘ですか!?」
「どんな仕事もそうだが、勘ってのは意外と大事なんだ。もちろん、勘だけじゃダメだけどな」
基本を学んだ上で、慣れてくれば勘が働くこともある。
クレソンさんが言っている勘は、経験に基づいたものみたいだな。
「わかりました。クレソンさんの勘を信じます!」
そう伝えると、クレソンさんは笑顔のまま俺に金槌を渡してきた。
金槌を受け取り、赤熱の金属と向き合う。
ビギナースピアの穂先をイメージする……
俺はイメージを固めると、金槌を振り上げて力一杯叩きつけた。
ガキンッ
……熱いし、反動が強くて手が痺れる……
でも、五回くらいならっ!
ガキッ
ちょっと外したか? しっかりイメージを……
ガギンッ
ぐっ……なんて反動だ……でもいい音だった!
ガギンッ
……あと、一回、全力で、イメージを込めて……!
ガキィーン……
うぉ……頭に響く……
反動と高い音で、元々ふらついていた俺は後ろに倒れ──
「おっと、大丈夫かい?」
「あの、穂先は……」
クレソンさんに受け止められたが、お礼よりも先に質問してしまった……
「いい打ち込みだったよ。初めてで、あれだけいい音をさせられるなら上等だ!」
「よかった……」
「あとは俺に任せて、隣の部屋で──」
「……お邪魔かも、しれませんが、最後まで、見させて、もらえませんか?」
ふらふらしてるし、いつのまにか汗だくで、息切れもしているけれど……
初めて俺が作成に関わった槍の、完成する姿を見たい……!
「こりゃ、言っても無駄だな? お~いタンジーちゃん、ちょっと来てくれ!」
「はーい! お水出す?」
「ああ、リョウさんに冷たい水を出してやってくれ。このままだと倒れちゃうからな」
「まかせて!」
タンジーは、すぐに『うぉーたー』で水を出してくれた。
「はい、お水だよお兄さん。ゆっくりのんでね?」
「ありが、とう……」
少し口に含むだけで、全身の疲労が抜けていくかのようだ……
俺が少しずつ水を飲んでいる間も、金属を叩く音は止むこと無く、聞こえている。
作業を初めてから、どれくらい経ったんだろう?
すごく長い時間のようだが、タンジーの魔法はまだ切れてはいない。
だから一時間はまだ経っていないはずだが、俺には何時間も経っているように感じられていた。
ふと気付くと音が止んでいて、タンジーが呼ばれていた。
赤熱していた金属の塊は、今や槍の穂先の形になっている。
温度が大分下がっているのか、金属本来の黒っぽい色になっているな。
クレソンさんの指示でタンジーが『うぉーたー』を使い、大きめな水のボールを作り出した。
すると、クレソンさんは工具で槍の穂先を掴み、その水の中に入れた。
穂先の温度があまり高くないからか、軽くジュッと音を立てただけだった。
しかし真剣に見つめている様子から、なにかを見落とさないようにしているのかもしれない。
数分して、水から出した穂先をじっくりと見定めていたクレソンさんは、満足そうな笑顔を浮かべた。
「うん、これはいい出来だな!」
「本当ですか!?」
俺の質問に、クレソンさんはにやりと笑って頷いた。
「間違いなく、この素材にしては業物だ。大成功だよ!」
「お兄さん、やったね!」
「ありがとうございます! このあとはなにか手伝えることはありますか?」
穂先は大成功でも、まだ柄と合わせなきゃならないだろうと思って聞いたのだが。
「このあとは仕上げをして、柄に嵌め込むだけだから、あとはゆっくりしていてくれ」
「分かりました。よろしくお願いします!」
流石に、素人が仕上げに手を出すわけには行かないか。
せめて、最後までしっかり見ていよう。
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