双葉の恋 -crossroads of fate-

真田晃

文字の大きさ
15 / 62

ブルーベリー 螺子 諦める

しおりを挟む
エンドロールの文字が流れている中、ぞろぞろと人が捌けていく。

「……」

怖い演出は多かったけど……切なくて、とても悲しい話だった……
想い合っていた二人が、古いしきたりのせいで引き裂かれ──良家の男は、跡継ぎの為に親の決めた娘と結婚。下人の女は、男を惑わす不届き者として、生きたまま井戸に突き落とされた。
……それを嘆いての、呪いだったなんて……

隣を覗き見れば、スクリーンから漏れる光が、誠の横顔を僅かに照らしていた。




映画館を抜ける。
ショッピングモールの眩い照明と:疎(まば)らに行き交う人々が目に入り、じわじわと現実感が帯びていく。

「この後、どうしますか?」
「……!」

直ぐ傍で声がし、一気に目が冴える。
見上げてみれば、誠との距離は意外に近くて……

『……ほら、お茶しながら映画の話で盛り上がれるでしょ』──脳内に響く、バイト先でのお客さんの声。それが僕の背中を押すものの……中々言葉が出てきてくれない。
数回瞬きをした後、腕時計を見た誠が穏やかな笑顔を浮かべて此方を見る。

「もう遅いですし。……帰りましょうか」
「………ぇ、」

もだもだする僕を見て、そう察したのだろう。気遣って貰えたのは嬉しい。……けど……
視線を逸らす僕に、誠が目を細める。

「……もし宜しければ、もう少しお時間頂けませんか?」




……何処へ行くんだろう。

湿気を帯びた、柔らかな空気。
雨上がりの濡れた道路を、車のタイヤが踏みつけていく。青から赤へと変わる信号。煌びやかなネオン。
ざわざわとした街の喧騒はすっかり装いを変え、行き交う人達の中には、見た事もない派手な格好をした人達が混じる。

……あ……

目の先に現れたのは、頭にネクタイを螺子巻いた酔っぱらい。
送別会だったんだろうか。居酒屋前には楽しく談笑する、花束を抱えたスーツ姿の男性と同僚らしき女性達。

「……あれぇ、こんな所に可愛い子ちゃんが歩いてる」

道を塞ぐその酔っぱらいが、おぼつかない足取りで僕の方へと近付いてくる。
不安に駆られる僕の手を、誠の手が攫った。

「行きましょう……」

安心させるかのようにキュッと握り、僕をエスコートしながら酔っぱらいをスッとかわす。

「……」

優しくて、頼りがいのある……大きな手。
温かなその手を握り返せば、口角を緩く持ち上げた誠が、僕に優しい眼差しをくれる。



裏通り。そこから更に細い路地へと曲がって進む。
と、突然目に飛び込んできたのは──

「──!」

『 blueberry 』と書かれた、煌びやかな看板。
それを照らす、青紫の妖しげなスポットライト

見上げれば、看板と同じ色の光を浴びる、ファンシーな──ラブホテルが。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい

マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。 しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。 社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。 新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で…… あの夏の日々が蘇る。

遅刻の理由

hamapito
BL
「お前、初デートで遅刻とかサイテーだからな」  大学進学を機に地元を離れることにした陽一《よういち》。陽一が地元を離れるその日、幼馴染の樹《いつき》は抱えてきた想いを陽一に告げる。樹の告白をきっかけに二人の関係性はようやく変わるが、そんな二人の元に迫るのはわかれの時間だった——。交わされた再会の約束はそのまま「初デート」の約束になる。  二人の約束の「初デート」を描いた短編です。  ※『夏』『遅刻の理由』というお題で書かせていただいたものです(*´꒳`*)

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

負け犬の俺と、アンドロイドの紫ノくん【改稿】

鷹の森
BL
※こちらの作品は改稿したものです、以前掲載した作品があまりに齟齬だらけだったので再投稿します。完結しています※ 「日生くんでしょ、僕、染崎紫ノ」 「……えっ!? 紫ノくん!?」  幼い頃アンドロイドと揶揄われいじめられていた親友と再会した俺は、紫ノくんのあまりの容姿の変わりように、呆然とした。美青年、その言葉はまるで、紫ノくんのために作られたみたいだった。  恋に敗れ続ける俺と、小学生の頃から一途に俺を好きでいてくれた紫ノくん。  本当は同じ中学、同じ高校と一緒に通いたかったけど、俺の引っ越しをきっかけに、紫ノくんとは会えずじまいでいた。  電車を降りて、目の前の男がICカードを落とした人が居たから拾ったら、手首を掴まれて、強制連行……!? 「俺はずっと、日生くんが好きだよ。終わりまで、日生くんが好きだ」  紫ノくんの重い愛。でもそれは、俺にとっては居心地が良くて——? 美形攻め……染崎紫ノ(そめざきしの) 平凡受け……田手日生(たでひなせ)

クリスマスまでに彼氏がほしい!

すずかけあおい
BL
「彼氏ほしい」 一登がいつものように幼馴染の郁瑠に愚痴ると、郁瑠から「どっちが先に恋人作れるか勝負するか」と言われて……。 like以上love未満な話です。 〔攻め〕郁瑠 〔受け〕一登

永久糖度

すずかけあおい
BL
幼い頃、幼馴染の叶はままごとが好きだった。パパはもちろん叶でママはなぜか恵吾。恵吾のことが大好きな叶の気持ちは、高校二年になった今でも変わっていない。でも、これでいいのか。 〔攻め〕長沼 叶 〔受け〕岸井 恵吾 外部サイトでも同作品を投稿しています。

処理中です...