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町 ダンボール ピアノ
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クローゼットの奥に仕舞い込んだダンボールを、引っ張り出して開ける。
最初に目に付いた、小さな箱。徐に取り出し開けてみれば……中に入っていたのは、悠がしているピアスの片割れ。
……こんな所に、あったんだ……
再びダンボールの中を覗けば、悠との思い出の品がある事に気付かされた。
ピアノの形をしたオルゴール。これは、修学旅行で悠が僕に買ってくれたもので。ねじを回すとビアノの蓋が開き、ウエディングソングと共に、見つめ合った純白のドレスとタキシード姿の男女が現れる。箱に仕舞ったままの、ペアのマグカップ。これは、社会人になって初めてのデートの時。いつか一緒に暮らせるようになったら、その時に使おうね……って、二人で選んだもの。
懐かしい風が吹き、色褪せていた思い出が鮮やかに蘇っていく。
「……」
ベッドで眠る悠を見た後、気を取り直して目当ての卒業アルバムを取り出す。
そしてパラパラと捲り、後方にある名簿欄を開く。
鳴川悠 ○県×市△△町××-×
思い返せば、悠の家に遊びに行った事は一度も無かった。
どんな家族と一緒に住み、どんな環境で育ったかなんて……悠の口から、聞いた事もない。
テーブルの上には、沢山の薬。
大輝と悠が交わした会話の中で、何処かに閉じ込められていたと想像させる台詞。
そして、去年の年末。悠がアパートに来た理由……
「……」
携帯に、悠の実家の住所と電話番号を登録する。
「……ん、」
悠の声がし、僅かに体が動く。
慌てて薬を掻き集め、眠る悠のポケットにそっと仕舞った。
「……ふた、ば」
眉尻を下げ、八重歯を覗かせた悠は、僕の腕を引っ張って、強引に自身の胸に僕を埋める。
「……っ、」
「なぁ、双葉。……しようぜ」
耳元で囁く、悠。
服の裾を捲られ、するりと悠の手が忍び込む。
見れば、悠の瞳には輝きが戻っていて。いつもの悠の姿に、安堵の溜め息をつく。
「小さくて、可愛い尻だな」
ウエストラインを弄った手が、下着の中に侵入し、お尻を鷲掴んで揉みしだく。
「……悠。エロおやじみたい」
「ハハ、やっぱり?」
顔を上げ、笑顔で冗談ぽく返せば、悠も同じ調子で返してくれる。
その手が引き抜かれた後、悠の瞳に熱情が孕み……僕の横髪を梳きながら、後頭部に添えて引き寄せる。
悠の顎先が僅かに持ち上がり、瞳が柔く閉じられて──
「………、待って。今、……部屋を、片付けてる所だから……」
「んなの、後にしろよ」
そう言いつつ悠の視線が外され、部屋の方へと向けられる。
と、突然悠が飛び起き、ダンボールのある方へと駆け寄った。
「………双葉、コレ……まだ持ってたのか?」
拾い上げたのは、ピアスの入った箱。
「……大事に、してくれてたんだな……」
何時になく、真剣な目付き。
とても大事そうに両手で持ち、思い詰めた様に視線を注ぐ。
「それ。悠が初給料で買ったんだよね。使わないから僕に、片方あげるって……」
そう言うと、眉間に皺を寄せた悠が僕に向き直る。
「──違ぇよ! これは、結婚指輪のつもりで渡したんだ」
「……!」
悠の右耳に光る、シルバーのピアス。
──そん、な……
最初に目に付いた、小さな箱。徐に取り出し開けてみれば……中に入っていたのは、悠がしているピアスの片割れ。
……こんな所に、あったんだ……
再びダンボールの中を覗けば、悠との思い出の品がある事に気付かされた。
ピアノの形をしたオルゴール。これは、修学旅行で悠が僕に買ってくれたもので。ねじを回すとビアノの蓋が開き、ウエディングソングと共に、見つめ合った純白のドレスとタキシード姿の男女が現れる。箱に仕舞ったままの、ペアのマグカップ。これは、社会人になって初めてのデートの時。いつか一緒に暮らせるようになったら、その時に使おうね……って、二人で選んだもの。
懐かしい風が吹き、色褪せていた思い出が鮮やかに蘇っていく。
「……」
ベッドで眠る悠を見た後、気を取り直して目当ての卒業アルバムを取り出す。
そしてパラパラと捲り、後方にある名簿欄を開く。
鳴川悠 ○県×市△△町××-×
思い返せば、悠の家に遊びに行った事は一度も無かった。
どんな家族と一緒に住み、どんな環境で育ったかなんて……悠の口から、聞いた事もない。
テーブルの上には、沢山の薬。
大輝と悠が交わした会話の中で、何処かに閉じ込められていたと想像させる台詞。
そして、去年の年末。悠がアパートに来た理由……
「……」
携帯に、悠の実家の住所と電話番号を登録する。
「……ん、」
悠の声がし、僅かに体が動く。
慌てて薬を掻き集め、眠る悠のポケットにそっと仕舞った。
「……ふた、ば」
眉尻を下げ、八重歯を覗かせた悠は、僕の腕を引っ張って、強引に自身の胸に僕を埋める。
「……っ、」
「なぁ、双葉。……しようぜ」
耳元で囁く、悠。
服の裾を捲られ、するりと悠の手が忍び込む。
見れば、悠の瞳には輝きが戻っていて。いつもの悠の姿に、安堵の溜め息をつく。
「小さくて、可愛い尻だな」
ウエストラインを弄った手が、下着の中に侵入し、お尻を鷲掴んで揉みしだく。
「……悠。エロおやじみたい」
「ハハ、やっぱり?」
顔を上げ、笑顔で冗談ぽく返せば、悠も同じ調子で返してくれる。
その手が引き抜かれた後、悠の瞳に熱情が孕み……僕の横髪を梳きながら、後頭部に添えて引き寄せる。
悠の顎先が僅かに持ち上がり、瞳が柔く閉じられて──
「………、待って。今、……部屋を、片付けてる所だから……」
「んなの、後にしろよ」
そう言いつつ悠の視線が外され、部屋の方へと向けられる。
と、突然悠が飛び起き、ダンボールのある方へと駆け寄った。
「………双葉、コレ……まだ持ってたのか?」
拾い上げたのは、ピアスの入った箱。
「……大事に、してくれてたんだな……」
何時になく、真剣な目付き。
とても大事そうに両手で持ち、思い詰めた様に視線を注ぐ。
「それ。悠が初給料で買ったんだよね。使わないから僕に、片方あげるって……」
そう言うと、眉間に皺を寄せた悠が僕に向き直る。
「──違ぇよ! これは、結婚指輪のつもりで渡したんだ」
「……!」
悠の右耳に光る、シルバーのピアス。
──そん、な……
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