1 / 123
第一幕 歌のない世界
序曲 ~走馬灯~
しおりを挟む
つい、いい気になって歌ってしまったんだ。俺の悪い癖だ。おだてられるとすぐその気になってしまう。
畑を耕しながら無意識に鼻歌を口ずさんでたら、横にいたニコが、元から大きい目をさらにパチクリさせて、
「えっ!? 今の何? もういっぺん歌って! もういっぺん歌って!」
って、すごい食いつきだったからさ。つい新作のラブソングを披露してしまったんだ。
俺は音痴だ。
作曲や楽器の演奏センスはそんなに悪くないと思うんだが、歌はダメだ。本当は歌うことが大好きなのに、歌うと必ず音程を外す。前の世界では、この音痴のせいでいろいろ苦労した。
しかしこっちの住人で歌というものを知らないニコには、俺が音痴だって分からないはずだ。現に今も、うっとりした表情で聴き入ってくれてる。
すっかり良い気分になって、最初は小声で歌うつもりだったのにだんだん声が大きくなってしまった。
久しぶりだ。誰かの前で歌うのは。ああ、やっぱり歌うって気持ちが良いな。
しかし、ささやかな愉しみの代償は大きかった。
Aメロ、Bメロからサビに入り1フレーズだけ歌ったところで、ごおっと冷たい風が俺の顔に吹きつけた。
!?
びっくりして歌うのを止めた。
さっきまで晴れわたっていた秋の青空がにわかに黒雲に覆われ、周囲が暗くなったかと思うと、音を立てて大きな雨粒が落ちてきた。
な、何だ? 何だ?
辺りをキョロキョロ見回していると、いきなり、畑の端にある柿の木に大きな火柱が立った。
『どしゃあああああああああん!!』
とんでもない閃光と轟音と地響き。
「きゃあああ!」
ニコは悲鳴を上げてその場にうずくまった。
「大丈夫か!?」
駆け寄ろうとしたが……足がおかしい。こむら返りを起こしたみたいに筋肉が強張ってる。駆け寄るどころか、足がもつれてニコの横にどうと倒れ込んでしまった。
それでも土まみれの顔を上げて
「ニコ、大丈夫か!?」
声をかけるが返事がない。
その名の通りいつもニコニコと可愛いニコの顔が、恐怖で引きつっている。全身をがくがく震わせ、俺の背後の一点を見つめている。
何だ? どうしたんだ?
言うこと聞かない身体を無理矢理ねじって後を振り返った。そこには変な生き物がいた。
人の背丈ほどもある大きな黒い鳥……いや、鳥じゃないな。
黒い大きな翼を持ち、下半身も真っ黒な羽毛に覆われている。しかし、その上半身は人間だ。なんと、裸の美女だ。
顔立ちはギリシア彫刻のような美人なのに、眉間にしわを寄せ、口元に嘲笑を浮かべたその表情は、見る者をなんとも言えず不快な気持ちにさせる。
裸の胸には当然乳房があり、ちらっと見たところ結構な美乳なのだが、色っぽさは欠片も感じない。エロよりグロだ。不気味さが圧倒的に勝っている。
何だこいつ。いつの間にこんな所に?
その変な生き物は翼をたたみ、こちらに一歩二歩近寄りながら、甲高い声を出した。
「きひひひひ! 下っ手くそな歌と思ったら、何だガキか。親の教育がなってないね。どうせロクな大人になるまい。今のうちにこの世から消してやろう」
そして何やら歌のようなものを一節歌った。
「来たれよ光 来たれよ光 走り走りて貫き通せ~♪」
その途端にまた、
『ばっしいいいいいいいいいいん!!』
すぐ至近距離でとんでもない閃光と轟音が響き、俺たちは悲鳴をあげて地面から数センチ飛び上がった。全身がびりびり痺れて動けない。
そうか、これは魔法だ。
こいつが、この気持ち悪い鳥女が、魔法で雷を落としてるんだ。歌……今の歌が魔法の詠唱みたいになってたのか?
それにしてもこいつ……こいつは本物だ。本物の魔物だ。
話には聞いてたが、本当にこんな奴がこの世界にはいたんだ。
混乱する俺の横ではニコが、可哀想に、うずくまったまま泣いていた。何とか、何とか、この子を守らないと。
強張った身体を無理矢理動かして、俺はニコの上に覆い被さった。意味はないかもしれない。でもちょっとぐらいは防御になるだろう。
そして顔を上げて鳥女を睨み付ける。怖い。怖い。それに気持ち悪い。
「きひひひひ! お前何やってんだ? そのメスガキをかばうのかえ? きひひひひ! じゃあ仲良く一緒に黒焦げになりな!」
そしてまたさっきの歌のようなものを歌い始めた。
俺は死を覚悟した。
走馬灯っていうのか? 観念して目を閉じた俺の頭の中を、この世界に来て1年の出来事が足早に駆け抜けて行った。
そうだ。始まりもこの場所だったんだな。
この世界に転移して畑の真ん中でぶっ倒れてた俺を、農家の一人娘であるニコが見つけてくれた。そして父親のジゴさんが、かついで家に連れて帰ってくれたんだ。
すぐに意識は戻ったが、言葉も通じず、ここがどこかも分からない。自分が異世界に転移したと理解するまで、まる1日はかかったな。
だって、神様がチート能力を授けてくれる場面とか、お約束のステ振りの場面とかあったらすぐに気付いたんだろうが、前の晩、普通にベッドで眠りにつき、目覚めたらもうこっちの世界だったんだ。
俺はニコの家族と身振り手振りでコミュニケーションしながら、この世界のことを少しずつ知った。
異世界かよ!
当然ながら剣と魔法のファンタジー展開を期待した。そりゃもう、大いに期待してワクワクした。
しかし。
ここはいろいろと残念な異世界だった。異世界に当たりハズレがあるなら、ハズレだな。
ここには魔法なんてない。剣はあるが普通の剣だ。魔物なんて、この1年見たこともなかった。
ただ、電気やガスはないし、当然ネットもない。その辺だけは異世界のテンプレをきっちり押さえている。つまりファンタジーでもなんでもない、ただの中世ヨーロッパ風、田舎暮らしだ。
そして俺にはチートどころか何の能力もなかった。
いろいろやってみたさ。でも何をどうやっても魔法なんか使えない。手から水弾を出せるわけでもない。空を飛べるわけでもない。がっかりだった。
ない、ない、ないのついでに、この世界にはもう1つないものがある。
それは歌や音楽だ。
いや、歌や音楽が『無い』というのは正確ではないな。歌や音楽は『禁じられて』いるんだ。
この大陸を支配している悪しき王『黙呪王』が、歌や音楽を奏でることを厳しく禁じており、大陸のどこであれ、歌ったり楽器を奏でたりすると、その地獄耳にキャッチされ、瞬時に魔物が放たれ殺されるという。
歌うと殺される……人々のビビり方は尋常じゃない。音楽は絶対の禁忌だ。人はみな、どんな時でも歌うことを避け、息を潜めて生きている。
実際にはちょっと鼻歌を歌ったぐらいでは何事も起こらないんだが、目の前でやると温厚なジゴさんや奥さんのナギさんでも「それだけは止めて!」と血相を変えるぐらいだ。
歌や音楽がない世界。
県立高校軽音部のトップバンド『ネイルヴェイル』のベーシスト、そしてソングライターだった俺、神曲奏太にとってはあり得ない世界だ。
何せ俺にとって音楽は空気みたいなものだ。物心ついた時から当たり前にそこに存在し、それを呼吸しながら生きてきた。俺にとって音楽抜きの生活なんか想像もできなかった。
それでもこの世界に来て1年間。
農作業だの家事だの、この家の手伝いをしながら、音楽抜きでやってきた。言葉もどうにか通じるようになった。
音楽抜きの生活に耐えられたのは、ひとえにニコのおかげだ。
童顔なので幼く見えるが、実際には15歳の立派なレディーだ。この世界ではもう結婚できる年齢らしい。
ウェーブした茶色い髪にパッチリした大きな目。少し青みがかった灰色の瞳。真っ白で広い額にちょっと太い目の眉。上品な鼻と口。きゅっと締まった顎。
ニコという名前は偶然の一致だろうが、本当に笑顔が最高に可愛い、癒やし系の美少女だ。ちょっと天然で空気の読めないところがあるが、そこがまたキュートだ。
そんな女の子が何故かソウタ、ソウタと俺を慕ってくれる。
一時期ちょっとホームシックになりかかったが、それもニコの笑顔を見てると吹き飛んでしまった。
もういいかな。元の世界に戻らなくても。
ちゃんとした音楽がないのは残念だが、鼻歌で我慢するか。
何で転移したのか分からないが、別にそれを突き止めないといけないってこともないだろ。
このままニコの家に婿入りして田舎のスローライフを満喫できるなら、その他もろもろは我慢できそうな気がする。
母ちゃん、姉ちゃん、バンドのみんな、俺はこっちの世界で幸せになります……そんなことも考え始めてたんだがな……
うっかり歌ってしまった。
これまで鼻歌ぐらいなら大丈夫だったんで油断した。調子に乗って堂々と歌ってしまった。
そうか。歌うとこんな恐ろしいことになるんだ。魔物が来て惨殺されるというのは本当だったんだ。だからみんなあんなにビビってたんだ。
っていうか、やっぱりあるんだ、魔法。
ひょっとしたら剣術の方でも、最強の魔剣とか、あるのかもしれない。
馬鹿だな俺は。こんな訳の分からない世界で、魔法も剣術も何しに来たのかも分からないうちに死ぬのか。こんな気持ちの悪い化け物に殺されるのか。
しかもニコを巻き込んでしまった。
ニコ、ごめん。本当にごめん。助けられなくってごめん。何もできなくってごめん。
ん?
いや、待てよ。まだできることがあった。
そうだ、謝罪と命乞いだ。
もうこうなったらいい格好する必要もない。地面に張り付いて、土下座して、謝って、ニコの命だけでも助けてもらおう。歌ったのは俺だ。悪いのは俺だ。
しかし土下座ってこっちの世界で通用するのか? わからない。でも、やれるだけやってみよう。とにかくまず謝るんだ。
……っていうか、あれ?
長い走馬灯だな。
畑を耕しながら無意識に鼻歌を口ずさんでたら、横にいたニコが、元から大きい目をさらにパチクリさせて、
「えっ!? 今の何? もういっぺん歌って! もういっぺん歌って!」
って、すごい食いつきだったからさ。つい新作のラブソングを披露してしまったんだ。
俺は音痴だ。
作曲や楽器の演奏センスはそんなに悪くないと思うんだが、歌はダメだ。本当は歌うことが大好きなのに、歌うと必ず音程を外す。前の世界では、この音痴のせいでいろいろ苦労した。
しかしこっちの住人で歌というものを知らないニコには、俺が音痴だって分からないはずだ。現に今も、うっとりした表情で聴き入ってくれてる。
すっかり良い気分になって、最初は小声で歌うつもりだったのにだんだん声が大きくなってしまった。
久しぶりだ。誰かの前で歌うのは。ああ、やっぱり歌うって気持ちが良いな。
しかし、ささやかな愉しみの代償は大きかった。
Aメロ、Bメロからサビに入り1フレーズだけ歌ったところで、ごおっと冷たい風が俺の顔に吹きつけた。
!?
びっくりして歌うのを止めた。
さっきまで晴れわたっていた秋の青空がにわかに黒雲に覆われ、周囲が暗くなったかと思うと、音を立てて大きな雨粒が落ちてきた。
な、何だ? 何だ?
辺りをキョロキョロ見回していると、いきなり、畑の端にある柿の木に大きな火柱が立った。
『どしゃあああああああああん!!』
とんでもない閃光と轟音と地響き。
「きゃあああ!」
ニコは悲鳴を上げてその場にうずくまった。
「大丈夫か!?」
駆け寄ろうとしたが……足がおかしい。こむら返りを起こしたみたいに筋肉が強張ってる。駆け寄るどころか、足がもつれてニコの横にどうと倒れ込んでしまった。
それでも土まみれの顔を上げて
「ニコ、大丈夫か!?」
声をかけるが返事がない。
その名の通りいつもニコニコと可愛いニコの顔が、恐怖で引きつっている。全身をがくがく震わせ、俺の背後の一点を見つめている。
何だ? どうしたんだ?
言うこと聞かない身体を無理矢理ねじって後を振り返った。そこには変な生き物がいた。
人の背丈ほどもある大きな黒い鳥……いや、鳥じゃないな。
黒い大きな翼を持ち、下半身も真っ黒な羽毛に覆われている。しかし、その上半身は人間だ。なんと、裸の美女だ。
顔立ちはギリシア彫刻のような美人なのに、眉間にしわを寄せ、口元に嘲笑を浮かべたその表情は、見る者をなんとも言えず不快な気持ちにさせる。
裸の胸には当然乳房があり、ちらっと見たところ結構な美乳なのだが、色っぽさは欠片も感じない。エロよりグロだ。不気味さが圧倒的に勝っている。
何だこいつ。いつの間にこんな所に?
その変な生き物は翼をたたみ、こちらに一歩二歩近寄りながら、甲高い声を出した。
「きひひひひ! 下っ手くそな歌と思ったら、何だガキか。親の教育がなってないね。どうせロクな大人になるまい。今のうちにこの世から消してやろう」
そして何やら歌のようなものを一節歌った。
「来たれよ光 来たれよ光 走り走りて貫き通せ~♪」
その途端にまた、
『ばっしいいいいいいいいいいん!!』
すぐ至近距離でとんでもない閃光と轟音が響き、俺たちは悲鳴をあげて地面から数センチ飛び上がった。全身がびりびり痺れて動けない。
そうか、これは魔法だ。
こいつが、この気持ち悪い鳥女が、魔法で雷を落としてるんだ。歌……今の歌が魔法の詠唱みたいになってたのか?
それにしてもこいつ……こいつは本物だ。本物の魔物だ。
話には聞いてたが、本当にこんな奴がこの世界にはいたんだ。
混乱する俺の横ではニコが、可哀想に、うずくまったまま泣いていた。何とか、何とか、この子を守らないと。
強張った身体を無理矢理動かして、俺はニコの上に覆い被さった。意味はないかもしれない。でもちょっとぐらいは防御になるだろう。
そして顔を上げて鳥女を睨み付ける。怖い。怖い。それに気持ち悪い。
「きひひひひ! お前何やってんだ? そのメスガキをかばうのかえ? きひひひひ! じゃあ仲良く一緒に黒焦げになりな!」
そしてまたさっきの歌のようなものを歌い始めた。
俺は死を覚悟した。
走馬灯っていうのか? 観念して目を閉じた俺の頭の中を、この世界に来て1年の出来事が足早に駆け抜けて行った。
そうだ。始まりもこの場所だったんだな。
この世界に転移して畑の真ん中でぶっ倒れてた俺を、農家の一人娘であるニコが見つけてくれた。そして父親のジゴさんが、かついで家に連れて帰ってくれたんだ。
すぐに意識は戻ったが、言葉も通じず、ここがどこかも分からない。自分が異世界に転移したと理解するまで、まる1日はかかったな。
だって、神様がチート能力を授けてくれる場面とか、お約束のステ振りの場面とかあったらすぐに気付いたんだろうが、前の晩、普通にベッドで眠りにつき、目覚めたらもうこっちの世界だったんだ。
俺はニコの家族と身振り手振りでコミュニケーションしながら、この世界のことを少しずつ知った。
異世界かよ!
当然ながら剣と魔法のファンタジー展開を期待した。そりゃもう、大いに期待してワクワクした。
しかし。
ここはいろいろと残念な異世界だった。異世界に当たりハズレがあるなら、ハズレだな。
ここには魔法なんてない。剣はあるが普通の剣だ。魔物なんて、この1年見たこともなかった。
ただ、電気やガスはないし、当然ネットもない。その辺だけは異世界のテンプレをきっちり押さえている。つまりファンタジーでもなんでもない、ただの中世ヨーロッパ風、田舎暮らしだ。
そして俺にはチートどころか何の能力もなかった。
いろいろやってみたさ。でも何をどうやっても魔法なんか使えない。手から水弾を出せるわけでもない。空を飛べるわけでもない。がっかりだった。
ない、ない、ないのついでに、この世界にはもう1つないものがある。
それは歌や音楽だ。
いや、歌や音楽が『無い』というのは正確ではないな。歌や音楽は『禁じられて』いるんだ。
この大陸を支配している悪しき王『黙呪王』が、歌や音楽を奏でることを厳しく禁じており、大陸のどこであれ、歌ったり楽器を奏でたりすると、その地獄耳にキャッチされ、瞬時に魔物が放たれ殺されるという。
歌うと殺される……人々のビビり方は尋常じゃない。音楽は絶対の禁忌だ。人はみな、どんな時でも歌うことを避け、息を潜めて生きている。
実際にはちょっと鼻歌を歌ったぐらいでは何事も起こらないんだが、目の前でやると温厚なジゴさんや奥さんのナギさんでも「それだけは止めて!」と血相を変えるぐらいだ。
歌や音楽がない世界。
県立高校軽音部のトップバンド『ネイルヴェイル』のベーシスト、そしてソングライターだった俺、神曲奏太にとってはあり得ない世界だ。
何せ俺にとって音楽は空気みたいなものだ。物心ついた時から当たり前にそこに存在し、それを呼吸しながら生きてきた。俺にとって音楽抜きの生活なんか想像もできなかった。
それでもこの世界に来て1年間。
農作業だの家事だの、この家の手伝いをしながら、音楽抜きでやってきた。言葉もどうにか通じるようになった。
音楽抜きの生活に耐えられたのは、ひとえにニコのおかげだ。
童顔なので幼く見えるが、実際には15歳の立派なレディーだ。この世界ではもう結婚できる年齢らしい。
ウェーブした茶色い髪にパッチリした大きな目。少し青みがかった灰色の瞳。真っ白で広い額にちょっと太い目の眉。上品な鼻と口。きゅっと締まった顎。
ニコという名前は偶然の一致だろうが、本当に笑顔が最高に可愛い、癒やし系の美少女だ。ちょっと天然で空気の読めないところがあるが、そこがまたキュートだ。
そんな女の子が何故かソウタ、ソウタと俺を慕ってくれる。
一時期ちょっとホームシックになりかかったが、それもニコの笑顔を見てると吹き飛んでしまった。
もういいかな。元の世界に戻らなくても。
ちゃんとした音楽がないのは残念だが、鼻歌で我慢するか。
何で転移したのか分からないが、別にそれを突き止めないといけないってこともないだろ。
このままニコの家に婿入りして田舎のスローライフを満喫できるなら、その他もろもろは我慢できそうな気がする。
母ちゃん、姉ちゃん、バンドのみんな、俺はこっちの世界で幸せになります……そんなことも考え始めてたんだがな……
うっかり歌ってしまった。
これまで鼻歌ぐらいなら大丈夫だったんで油断した。調子に乗って堂々と歌ってしまった。
そうか。歌うとこんな恐ろしいことになるんだ。魔物が来て惨殺されるというのは本当だったんだ。だからみんなあんなにビビってたんだ。
っていうか、やっぱりあるんだ、魔法。
ひょっとしたら剣術の方でも、最強の魔剣とか、あるのかもしれない。
馬鹿だな俺は。こんな訳の分からない世界で、魔法も剣術も何しに来たのかも分からないうちに死ぬのか。こんな気持ちの悪い化け物に殺されるのか。
しかもニコを巻き込んでしまった。
ニコ、ごめん。本当にごめん。助けられなくってごめん。何もできなくってごめん。
ん?
いや、待てよ。まだできることがあった。
そうだ、謝罪と命乞いだ。
もうこうなったらいい格好する必要もない。地面に張り付いて、土下座して、謝って、ニコの命だけでも助けてもらおう。歌ったのは俺だ。悪いのは俺だ。
しかし土下座ってこっちの世界で通用するのか? わからない。でも、やれるだけやってみよう。とにかくまず謝るんだ。
……っていうか、あれ?
長い走馬灯だな。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる