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第三章
第三章 第四話
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しかし、なんで小早川の幽霊が俺の部屋に出るんだ?
小早川は何か気に入らないことでもあるのか?
〝ミケ〟と言う名前が気に入らないとか?
けれど、ミケに本当の名前を聞いても「あや以外の人間からは呼ばれたくない」と言って教えてくれないのだから仕方ない。
拓真なら小早川からミケの本名を聞いているかもしれないと思ったが敢えて訊ねなかった。
ミケは小早川以外の人間からはその名前では呼ばれたくないと言っている。
化猫なのだ。
嫌がっている事を無理にやったりしたら噛み殺されかねない。
それとも俺が捨てようとしているから出てくるのか?
正体が分かったことで少し恐怖が薄れた。
人は知らないものを恐れるというのは本当らしい。
まだ怖いことは怖いのだが。
化生には言葉が通じるが、幽霊にも言葉が通じるのだろうか?
試すにはいい機会だ。
怖いけど……。
話し掛けて取り憑かれたりしたらシャレにならないが、いつまでも幽霊に出てこられても困る。
次の休み時間、俺は秀に話し掛けた。
「なぁ、今なんか欲しいものあるか?」
「もしかして誕生日プレゼント?」
「俺がやらないってのは知ってるだろ」
「綾さん? プレゼントなんかいいのに」
「くれるって言うんだから貰っとけよ」
「でも、綾さんには誕生日がないんだよ。お返しが出来ないのに貰うのも……」
秀が困ったように言った。
確かに化生の誕生日というのは聞いたことがない。
うちに住んでた頃は祖母ちゃんの誕生日を祝ってたが、大森ミネは名乗れないと言って武蔵野綾と称しているくらいだから祖母ちゃんの誕生日というわけにもいかないだろう。
しかし今は祖母ちゃんの誕生日より大事なことがある。
雪桜の誕生日も近いのだ。
俺達は毎年雪桜へのプレゼントに頭を悩ませている。
女の子が喜ぶようなものなど見当も付かない。
雪桜は気持ちだけでいいと言うが、貰っている以上返さないわけにはいかない。
「雪桜の誕生日プレゼントは? 何か考えたか?」
「なんにも思い付かないよ」
俺の問いに秀が困ったように答えた。
秀と二人で考え込んだものの何も思い付かないまま放課後になってしまった。
中央公園で祖母ちゃんと合流して帰る途中、神社の中から争うような声が聞こえてきた。
俺達が覗いてみると、十歳くらいの淡紅色の着物を着た女の子が、体長二メートルはあるような化物と戦っていた。
化物の顔はくしゃくしゃで髪はぼうぼう、その髪の間から二本の角が覗いていて肌の色は赤い。
「なぁに? どうかしたの?」
雪桜が不思議そうな顔で訊ねた。
俺は簡単に目の前の状況を説明した。
「どっちの味方をするかは一目瞭然だよな」
高樹が言った。
「一応聞いとくけど、あの二人は?」
俺は祖母ちゃんに訊ねた。
「女の子の方は刀の化身、デカブツは牛鬼」
「ぎゅうき?」
「いわゆる鬼よ」
「鬼って事は人を喰うんだよな?」
「当然でしょ」
「よし! いくぞ!」
高樹と俺は同時に鬼に飛び掛かった。
しかし、あっさり弾き飛ばされてしまった。
祖母ちゃんは秀と雪桜を庇うように二人の前に立った。
「こんなことならナイフ持ってくるんだった」
高樹が臍を噛んだような表情で言った。
とはいえ、そんなものを持っているのを警察に見付かったら補導されてしまう。
というか、高校二年という年を考えると補導で済むかどうか……。
俺は鞄の中からナイフの代わりにボールペンを出して鬼に突き刺した。
が、ボールペンは簡単に折れてしまった。
俺は再び鬼に吹っ飛ばされた。
背中から地面に叩き付けられて一瞬息が止まった。
「こーちゃん!」
雪桜が叫んだ。
刀の女の子は爪が鋭いらしく、四人の中で唯一鬼を傷付けていたが、何しろリーチが足りず腕を切りつけるのが精一杯、胴体にまでは手が届かない。
「おい! 刀の化身!」
高樹が女の子に声を掛けた。
「名前は?」
「骨喰繊月丸」
「ほねばみ、せんげつまる? 変わった名前だな。まぁいいや。繊月丸、刀の姿になれるか?」
「なれる」
そう言うと女の子の姿が消えて地面に日本刀が突き立った。
高樹は刀を手に取ると振りかぶって鬼に突っ込んでいった。
刀を振り下ろす。
鬼が避ける。
返す刀で横に薙ぎ払う。
鬼は後ろに飛んで避けた。
大振りすぎて鬼にあっさり見切られてしまったようだ。
鬼が腕をふるった。
高樹が胸を殴られて跳ね飛ばされる。
数メートル吹っ飛ばされて地面に叩き付けられた。
刀が手から離れて転がる。
高樹が咳き込む。
高樹と刀の間に鬼がいる。
俺は刀に飛び付くと鬼に斬り掛かっていった。
鬼が腕を振り回す。
俺は簡単に弾き飛ばされてしまった。
だが繊月丸が高樹の側に転がっていった。
高樹が刀を掴んで再度鬼に斬り掛かっていく。
俺は邪魔にならないように後ろに避けた。
鬼が高樹を蹴り上げた。
またも高樹が吹っ飛ばされる。
繊月丸が手から離れたが、今度は高樹のすぐそばに落ちた。
三度刀を手に取ると高樹は鬼に突っ込んでいく。
高樹と鬼の攻防に、俺は手が出せずにいた。
秀は鞄の中からスマホを出すと高樹を遠巻きにして撮り始めた。
そうだった……。
動画を撮っている振りでもしてなければ日本刀を振り回している言い訳が出来ない。
まだ日が沈むまでには時間があるから人に見られる可能性がある。
いつ神主さんが社務所から出てくるかと思うと冷や冷やする。
小早川は何か気に入らないことでもあるのか?
〝ミケ〟と言う名前が気に入らないとか?
けれど、ミケに本当の名前を聞いても「あや以外の人間からは呼ばれたくない」と言って教えてくれないのだから仕方ない。
拓真なら小早川からミケの本名を聞いているかもしれないと思ったが敢えて訊ねなかった。
ミケは小早川以外の人間からはその名前では呼ばれたくないと言っている。
化猫なのだ。
嫌がっている事を無理にやったりしたら噛み殺されかねない。
それとも俺が捨てようとしているから出てくるのか?
正体が分かったことで少し恐怖が薄れた。
人は知らないものを恐れるというのは本当らしい。
まだ怖いことは怖いのだが。
化生には言葉が通じるが、幽霊にも言葉が通じるのだろうか?
試すにはいい機会だ。
怖いけど……。
話し掛けて取り憑かれたりしたらシャレにならないが、いつまでも幽霊に出てこられても困る。
次の休み時間、俺は秀に話し掛けた。
「なぁ、今なんか欲しいものあるか?」
「もしかして誕生日プレゼント?」
「俺がやらないってのは知ってるだろ」
「綾さん? プレゼントなんかいいのに」
「くれるって言うんだから貰っとけよ」
「でも、綾さんには誕生日がないんだよ。お返しが出来ないのに貰うのも……」
秀が困ったように言った。
確かに化生の誕生日というのは聞いたことがない。
うちに住んでた頃は祖母ちゃんの誕生日を祝ってたが、大森ミネは名乗れないと言って武蔵野綾と称しているくらいだから祖母ちゃんの誕生日というわけにもいかないだろう。
しかし今は祖母ちゃんの誕生日より大事なことがある。
雪桜の誕生日も近いのだ。
俺達は毎年雪桜へのプレゼントに頭を悩ませている。
女の子が喜ぶようなものなど見当も付かない。
雪桜は気持ちだけでいいと言うが、貰っている以上返さないわけにはいかない。
「雪桜の誕生日プレゼントは? 何か考えたか?」
「なんにも思い付かないよ」
俺の問いに秀が困ったように答えた。
秀と二人で考え込んだものの何も思い付かないまま放課後になってしまった。
中央公園で祖母ちゃんと合流して帰る途中、神社の中から争うような声が聞こえてきた。
俺達が覗いてみると、十歳くらいの淡紅色の着物を着た女の子が、体長二メートルはあるような化物と戦っていた。
化物の顔はくしゃくしゃで髪はぼうぼう、その髪の間から二本の角が覗いていて肌の色は赤い。
「なぁに? どうかしたの?」
雪桜が不思議そうな顔で訊ねた。
俺は簡単に目の前の状況を説明した。
「どっちの味方をするかは一目瞭然だよな」
高樹が言った。
「一応聞いとくけど、あの二人は?」
俺は祖母ちゃんに訊ねた。
「女の子の方は刀の化身、デカブツは牛鬼」
「ぎゅうき?」
「いわゆる鬼よ」
「鬼って事は人を喰うんだよな?」
「当然でしょ」
「よし! いくぞ!」
高樹と俺は同時に鬼に飛び掛かった。
しかし、あっさり弾き飛ばされてしまった。
祖母ちゃんは秀と雪桜を庇うように二人の前に立った。
「こんなことならナイフ持ってくるんだった」
高樹が臍を噛んだような表情で言った。
とはいえ、そんなものを持っているのを警察に見付かったら補導されてしまう。
というか、高校二年という年を考えると補導で済むかどうか……。
俺は鞄の中からナイフの代わりにボールペンを出して鬼に突き刺した。
が、ボールペンは簡単に折れてしまった。
俺は再び鬼に吹っ飛ばされた。
背中から地面に叩き付けられて一瞬息が止まった。
「こーちゃん!」
雪桜が叫んだ。
刀の女の子は爪が鋭いらしく、四人の中で唯一鬼を傷付けていたが、何しろリーチが足りず腕を切りつけるのが精一杯、胴体にまでは手が届かない。
「おい! 刀の化身!」
高樹が女の子に声を掛けた。
「名前は?」
「骨喰繊月丸」
「ほねばみ、せんげつまる? 変わった名前だな。まぁいいや。繊月丸、刀の姿になれるか?」
「なれる」
そう言うと女の子の姿が消えて地面に日本刀が突き立った。
高樹は刀を手に取ると振りかぶって鬼に突っ込んでいった。
刀を振り下ろす。
鬼が避ける。
返す刀で横に薙ぎ払う。
鬼は後ろに飛んで避けた。
大振りすぎて鬼にあっさり見切られてしまったようだ。
鬼が腕をふるった。
高樹が胸を殴られて跳ね飛ばされる。
数メートル吹っ飛ばされて地面に叩き付けられた。
刀が手から離れて転がる。
高樹が咳き込む。
高樹と刀の間に鬼がいる。
俺は刀に飛び付くと鬼に斬り掛かっていった。
鬼が腕を振り回す。
俺は簡単に弾き飛ばされてしまった。
だが繊月丸が高樹の側に転がっていった。
高樹が刀を掴んで再度鬼に斬り掛かっていく。
俺は邪魔にならないように後ろに避けた。
鬼が高樹を蹴り上げた。
またも高樹が吹っ飛ばされる。
繊月丸が手から離れたが、今度は高樹のすぐそばに落ちた。
三度刀を手に取ると高樹は鬼に突っ込んでいく。
高樹と鬼の攻防に、俺は手が出せずにいた。
秀は鞄の中からスマホを出すと高樹を遠巻きにして撮り始めた。
そうだった……。
動画を撮っている振りでもしてなければ日本刀を振り回している言い訳が出来ない。
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いつ神主さんが社務所から出てくるかと思うと冷や冷やする。
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