35 / 46
第六章
第六章 第三話
しおりを挟む
鬼が後ろに倒れ足の爪が高樹から逸れる。
鬼に飛び掛かったのは巨大化したミケだった。
「ミケ!」
ミケが鬼の首に噛み付いている。
人間なら死んでいるところだが鬼にはなんでもないらしくミケを力尽くで引き離すと放り投げた。
ミケが空中で身体を捻って着地する。
その瞬間を狙って鬼がミケを蹴り上げる。
ミケが後ろに飛び退く。
ぎりぎりのところを鬼の足が掠める。
その隙に高樹が鬼に駆け寄って繊月丸を横に払った。
鬼の片足が斬り落とされる。
片足になった鬼が倒れた。
すかさず高樹が鬼の首を斬り落とす。
安心して気を抜き掛けた瞬間、鬼の首が高樹に飛び掛かった。
「高樹!」
俺が叫ぶ。
高樹が咄嗟に自分の前に繊月丸を立てて防ぐ。
鬼の首が繊月丸に食らい付いた。
繊月丸は折れたりしていないようだが、鬼の首が噛み砕こうとしているらしい。
がちがちと刃を噛んでいる音が聞こえてくる。
「おい! これ、どうしたらいいんだ!」
高樹が困惑した表情で助けを求めるように祖母ちゃんに声を掛ける。
「孝司の矢で射れば消えるかもしれないけど……」
祖母ちゃんもどうしたら良いか分からないらしい。
頭のような小さい的となるとすぐ側まで行かないと当てられない。
万が一首が飛び掛かってきた時に備えて、俺は弓を構えたまま近付いていった。
弦を引き切った状態で歩くのは容易ではない。
俺に気付いた鬼の首が宙に舞い上がり、俺に向かってくる。
俺は矢を放った。
神泉で清められた矢に貫かれた鬼の頭が塵になって消える。
矢がそのまま飛んでいく。
その先を人が通り掛かった。
マズい!
このままでは矢が当たってしまう!
俺が声を上げようとした瞬間、矢が木の葉に変わって舞い落ちる。
俺は安堵の溜息を吐いた。
そういえば矢は木の葉を変えたものだったな……。
「助かっ……」
ミケに礼を言い掛けた高樹が口を噤んで辺りを見回した。
ミケはもう姿を消してしまっていた。
「あれ、学校に出たヤツとそっくりだったね」
秀が言った。
「溺死した人間が牛鬼になるから」
「この辺に溺れるような場所あるか?」
「淀橋って言う地名はこの近くを流れてた川に架かってた橋の名前よ。それに弁天池って大きな池もあったから溺れて死んだ人は大勢いるわよ」
祖母ちゃんが答える。
成仏出来なかったものの、ただ留まっていただけの者達が鬼になってしまったようだ。
妖奇征討軍め……。
「とりあえず早く帰ろうぜ」
高城の言葉に俺達は解散した。
四月二十八日 火曜日
朝、登校途中で雪桜と合流した。
「こーちゃん、秀ちゃん、高樹君の予定聞いてる?」
ぐはっ……。
朝、開口一番で高樹の話題……。
そうなのか!?
やっぱり雪桜は高樹が好きなのか?
俺の事は眼中にないのか?
「聞いてないよ。高樹君に直接聞いたら?」
秀が答えた。
そうだ、雪桜は同じクラスだから予定が知りたいならいつでも聞けるのだ。
恥ずかしくて口も聞けないくらい好きなのか!?
今まで普通に喋っていたが、それは皆が一緒だったからなのか!?
ショックのあまり落ち込んでいると、雪桜が、
「高樹君じゃなくて、秀ちゃん達がいつも通りか知りたいだけだよ」
と言った。
雪桜の言葉に俺は安堵の溜息を吐いた。
内藤家、東家、大森家はゴールデンウィークには出掛けない。
だから俺達は毎年三人で遊んでいた。
秀の家にはゲーム機があるから大抵は秀の家に集まってゲームをしていた。
だが今年は秀が祖母ちゃんと付き合い始めたからどうするのか確かめたかったようだ。
そう言えば、秀が祖母ちゃんとデートするって言うなら「秀はデートだから今年は二人で……」と言って雪桜を誘う事が出来るのか。
「秀ちゃんはデートとか行くの?」
雪桜が俺より先に訊ねた。
もしかしてこれは俺を誘うための前振りか!?
そうなのか!?
俺は期待を込めた視線を雪桜に向けた。
「孝司と雪桜ちゃんが良ければ綾さんと一緒に皆で孝司の家に遊びに行きたいんだけど」
「そんなのいちいち断る必要あるか?」
俺達三人はお互いの家の鍵を持ってるくらいしょっちゅう往き来している。
遊びに行くのにわざわざ構わないかどうか聞いたりした事はない。
「いや、皆で遊ぶからって言えば綾さんも一緒に来てくれるでしょ」
「祖母ちゃんと過ごしたいなら……」
「そうじゃなくて……綾さん、おじさん達の元気な姿、見たいかなって思って」
あっ……!
そうか……。
失踪直後から祖母ちゃんがこの辺をいつもうろうろしていたのは昔から住んでいるからと言うより家族の様子を見るためだ。
そして俺が秀に彼女として紹介されるまで見た事がなかったのは俺達の前に姿を現さないようにしていたからだ。
だが、ずっと見守っていたくらいである。
家族で過ごしているところを見て、言葉を交わしたいかもしれない。
いつも互いの家に集まって遊んでいる事は様子を見ていたなら知っているだろうから俺の家で遊ぼうと誘うのは不自然ではない。
まして高樹も来るのなら「毎年の恒例行事」と考えるだろう。
「そういうことなら祖母ちゃんがいいって言えば構わないぜ」
ゴールデンウィーク中、父さんも母さんも家にいる。
姉ちゃんは友達と出掛けてしまうかもしれないが泊まり掛けの旅行の話は聞いてないから毎日来ていれば会えるだろう。
ただ祖母ちゃんが敢えて姿を見せないようにしていたのだとしたら会いには来たくないかもしれない。
俺の家は亡くなった元夫の家でもある。
……よく考えてみたら祖父ちゃんは秀の彼女の元彼って事か。
鬼に飛び掛かったのは巨大化したミケだった。
「ミケ!」
ミケが鬼の首に噛み付いている。
人間なら死んでいるところだが鬼にはなんでもないらしくミケを力尽くで引き離すと放り投げた。
ミケが空中で身体を捻って着地する。
その瞬間を狙って鬼がミケを蹴り上げる。
ミケが後ろに飛び退く。
ぎりぎりのところを鬼の足が掠める。
その隙に高樹が鬼に駆け寄って繊月丸を横に払った。
鬼の片足が斬り落とされる。
片足になった鬼が倒れた。
すかさず高樹が鬼の首を斬り落とす。
安心して気を抜き掛けた瞬間、鬼の首が高樹に飛び掛かった。
「高樹!」
俺が叫ぶ。
高樹が咄嗟に自分の前に繊月丸を立てて防ぐ。
鬼の首が繊月丸に食らい付いた。
繊月丸は折れたりしていないようだが、鬼の首が噛み砕こうとしているらしい。
がちがちと刃を噛んでいる音が聞こえてくる。
「おい! これ、どうしたらいいんだ!」
高樹が困惑した表情で助けを求めるように祖母ちゃんに声を掛ける。
「孝司の矢で射れば消えるかもしれないけど……」
祖母ちゃんもどうしたら良いか分からないらしい。
頭のような小さい的となるとすぐ側まで行かないと当てられない。
万が一首が飛び掛かってきた時に備えて、俺は弓を構えたまま近付いていった。
弦を引き切った状態で歩くのは容易ではない。
俺に気付いた鬼の首が宙に舞い上がり、俺に向かってくる。
俺は矢を放った。
神泉で清められた矢に貫かれた鬼の頭が塵になって消える。
矢がそのまま飛んでいく。
その先を人が通り掛かった。
マズい!
このままでは矢が当たってしまう!
俺が声を上げようとした瞬間、矢が木の葉に変わって舞い落ちる。
俺は安堵の溜息を吐いた。
そういえば矢は木の葉を変えたものだったな……。
「助かっ……」
ミケに礼を言い掛けた高樹が口を噤んで辺りを見回した。
ミケはもう姿を消してしまっていた。
「あれ、学校に出たヤツとそっくりだったね」
秀が言った。
「溺死した人間が牛鬼になるから」
「この辺に溺れるような場所あるか?」
「淀橋って言う地名はこの近くを流れてた川に架かってた橋の名前よ。それに弁天池って大きな池もあったから溺れて死んだ人は大勢いるわよ」
祖母ちゃんが答える。
成仏出来なかったものの、ただ留まっていただけの者達が鬼になってしまったようだ。
妖奇征討軍め……。
「とりあえず早く帰ろうぜ」
高城の言葉に俺達は解散した。
四月二十八日 火曜日
朝、登校途中で雪桜と合流した。
「こーちゃん、秀ちゃん、高樹君の予定聞いてる?」
ぐはっ……。
朝、開口一番で高樹の話題……。
そうなのか!?
やっぱり雪桜は高樹が好きなのか?
俺の事は眼中にないのか?
「聞いてないよ。高樹君に直接聞いたら?」
秀が答えた。
そうだ、雪桜は同じクラスだから予定が知りたいならいつでも聞けるのだ。
恥ずかしくて口も聞けないくらい好きなのか!?
今まで普通に喋っていたが、それは皆が一緒だったからなのか!?
ショックのあまり落ち込んでいると、雪桜が、
「高樹君じゃなくて、秀ちゃん達がいつも通りか知りたいだけだよ」
と言った。
雪桜の言葉に俺は安堵の溜息を吐いた。
内藤家、東家、大森家はゴールデンウィークには出掛けない。
だから俺達は毎年三人で遊んでいた。
秀の家にはゲーム機があるから大抵は秀の家に集まってゲームをしていた。
だが今年は秀が祖母ちゃんと付き合い始めたからどうするのか確かめたかったようだ。
そう言えば、秀が祖母ちゃんとデートするって言うなら「秀はデートだから今年は二人で……」と言って雪桜を誘う事が出来るのか。
「秀ちゃんはデートとか行くの?」
雪桜が俺より先に訊ねた。
もしかしてこれは俺を誘うための前振りか!?
そうなのか!?
俺は期待を込めた視線を雪桜に向けた。
「孝司と雪桜ちゃんが良ければ綾さんと一緒に皆で孝司の家に遊びに行きたいんだけど」
「そんなのいちいち断る必要あるか?」
俺達三人はお互いの家の鍵を持ってるくらいしょっちゅう往き来している。
遊びに行くのにわざわざ構わないかどうか聞いたりした事はない。
「いや、皆で遊ぶからって言えば綾さんも一緒に来てくれるでしょ」
「祖母ちゃんと過ごしたいなら……」
「そうじゃなくて……綾さん、おじさん達の元気な姿、見たいかなって思って」
あっ……!
そうか……。
失踪直後から祖母ちゃんがこの辺をいつもうろうろしていたのは昔から住んでいるからと言うより家族の様子を見るためだ。
そして俺が秀に彼女として紹介されるまで見た事がなかったのは俺達の前に姿を現さないようにしていたからだ。
だが、ずっと見守っていたくらいである。
家族で過ごしているところを見て、言葉を交わしたいかもしれない。
いつも互いの家に集まって遊んでいる事は様子を見ていたなら知っているだろうから俺の家で遊ぼうと誘うのは不自然ではない。
まして高樹も来るのなら「毎年の恒例行事」と考えるだろう。
「そういうことなら祖母ちゃんがいいって言えば構わないぜ」
ゴールデンウィーク中、父さんも母さんも家にいる。
姉ちゃんは友達と出掛けてしまうかもしれないが泊まり掛けの旅行の話は聞いてないから毎日来ていれば会えるだろう。
ただ祖母ちゃんが敢えて姿を見せないようにしていたのだとしたら会いには来たくないかもしれない。
俺の家は亡くなった元夫の家でもある。
……よく考えてみたら祖父ちゃんは秀の彼女の元彼って事か。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる