35 / 83
親愛なる強がりに、めいっぱいの雨避けを。
8
しおりを挟むそれからの日常は、大きく変化した。
まず、目覚めたら僕はもう副会長ではなくなっていた。
熱を出してしまったらしく、腕のこともあって少し入院していて、その間に風紀が生徒会をリコールしたそうだ。
役員たちはみんな総入れ替え。
今は新しい生徒会が動いている。
進学に響くかなと思ったけど、風紀委員長が全校生徒や先生方の前で全てを正直に話してくれたらしい。
「だから副会長を悪くいう奴はいないよ」と説明してくれた。
ならば、副会長以外が交代すればいいのではないか?
みんなそう思ったらしい。けど、風紀委員長が交代を命じた。
何故なのか。
それは──
「あ、の…委員長、仕事しづらくないですか……?」
「全然。寧ろ捗るよ」
生徒会副会長から風紀役員への移動が命じられ、ただいま風紀室。
この部屋で最も偉い委員長の膝の上に抱えられ、共に手元の資料を見ている。
「まだ生徒会が新しいからさ、仕事覚えるまではこっちで全部回すことになってるからてんてこまいだねぇ」
「それなら、僕も他の仕事を手伝いますが…」
「いや雨ちゃんはここ。俺が間違ってないか見てて?」
「は、はぁ……」
「一体なにが起こったんだ!?」という視線ではなく、「ようやくくっついたのか、良かったねぇ」という優しい視線をくださる委員の皆さん。
それが居た堪れなくて、今にも立ち上がって出ていきたい。
(委員長は僕のことを相談してたのか!?)
あり得る、この人なら気軽に口に出してそう。
秘密は黙っていても「聞いてよー今日雨ちゃんがさ」って話してそう。
そんな場所に自ら来てしまうなんて……!
「雨ちゃん暴れないで。腕の傷に響くでしょう?」
「~~っ、ですが!」
僕の怪我のことは、何故か全てバレていた。
転入生は、保護者が出てきてそのまままた別の学校へ転校。
生徒会長たちも、これまでのことを病院まで謝りに来てくれた。
これで平和、平和なはず。なのに、
「言うこと聞けないならまたここで口塞ぐけどいい?」
「っ、」
ニヤリと笑う風紀委員長。
僕の大好きな人。
一難去ってまた一難とはこのこと?
いや、好きだからいいのか?
いやいや、それとこれとはまた別問題な気が──
チュッ
「っ!?」
「ははっ、雨ちゃんほんと可愛い」
「ほら、仕事進めるからね」と改めて座らされ、また静かに書類を作り上げていく。
ふと見上げた窓の外は、さんさんと太陽の上るいい天気。
前まではそれが寂しかったのに、今はもうそう思わない。
そんな自分にふふふと笑いながら、
包み込んでくれてる温かい体温と一緒に、その手が書く文字を見つめることへ集中した──
(大丈夫。貴方とならもう寂しくない)
(だから、次の休みには一緒に何処かへ出かけてみよう)
(──きっと雨が降ったって、虹が出るだろうから)
fin.
10
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる