それは、キラキラ光る宝箱

花町 シュガー

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この世で最も幸せな、3分間の出来事

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「────っ、はは……は………」



 パシャンと、体から音がした。



「っ! 雫!!」


「ぁ……」


 グラリと揺れる視界。
 崩れ落ちるのを、いつもの大きな手が支えてくれる。

「雫、しず、く…お前、足が……」

 見上げると、潤矢の目からは大粒の涙。
 瞳の中には沢山の後悔と…動揺と、悲しみと。

 どうしてもっと早く気づかなかったんだ?
 なんで雫は俺が運命の相手だと教えてくれなかった?
 どうして俺が雫のジュースだったんだろう。
 俺はこの気持ちを我慢できなかったのか? そしたらもっと長く……一緒に入れたはずなのに。

 なんで、どうして

 (あぁ……)

 その疑問に全て答えるほど


 ──もう時間は、残されていない。





「……ねぇ、潤矢。キスしよう」





 呆然としたまま動けないでいる顔を両手で包んで、優しく唇を塞いだ。




「っ、ふ……」


 ──ねぇ。
 初めて会ったのはさ、幼稚園年少の頃だったね。
 顔見て一目でわかったよ、俺のジュースかもなぁって。

 (その時、嬉しくて嬉しくて大泣きしたんだよな)

 そしたら潤矢がずっと頭撫でてくれて、おやつのクッキーも半分こしてくれたっけ?

 それから、もうずっとずっと一緒だった。
 小学校のクラスが離れても、登下校はいつも同じで……
 段々変わってきたのは中学の頃だったね。
 元々カッコいいのもあって一気にモテ始めて、それから彼女を取っ替え引っ替えするようになって。

 悲しくて悲して、いっそのこと「お前が俺の運命の人なんだよ」って何度も…言おうとして。
 でも、少しでも潤矢と一緒にいたいから…もっと一緒に、同じ日々を過ごしたかったから……

 だから、どうしても自分からは…言えなくてぇ……っ、


「泣くな、雫」

「んっ、」

 離れた口が、溢れて止まらない涙を舐めとってくれる。

 俺も、段々溶けていく体を必死に動かして涙を拭ってあげて。


「ね、潤矢」


「なんだ」



「──〝恋〟の意味……分かっ、た………?」



「っ、~~っ!! あぁっ!」



「ふふ…そっか……」



 神様。

 貴方が潤矢に忘れていたものは、〝これ〟ですよね?


 (よかった、ちゃんと伝えられた)

 もう、大丈夫だ。
 これから先、潤矢の毎日はもっとキラキラするような日々に変わる。
 そして、きっといい人と出会って〝恋〟をして…それが〝愛〟に変わって、結婚して……

 そんな幸せな未来が、待っている。


 だから、


 (あぁ、俺…アイスで良かったなぁ……っ)

 愛する人に大切なもの届けられて、よかった。
 この瞬間のために生まれてきて、本当によかった。

 「3分間のためだけに生きるなんて、なんて滑稽な」と思ってたけど


 ──でも、 


 こんなに幸せに満ち溢れた3分間が……他にあるんだろうか?




「じゅん、や……」


 足元から溶けてきた俺の体。
 上へ上へどんどん溶けるのが登ってきて、もうすぐ顔まで行き着く。

 体はもうほとんど水になってしまってるのに、自分の服が濡れるのも厭わず抱きしめてくれる腕は……そのままで。


「っ、」


 言葉もなく、互いに もう一度唇が重なった。


 (ありがと…潤矢……)


 俺の運命の人が、お前でよかった。

 大好き 大好き、ずっと愛してる。



 ふわりと目を閉じた  瞬間

 全てが水になる感覚がして


 まるで雫のように

 パシャンと、潤矢の腕の中へ 溶けていった──





















 (人は、3分間で何ができるんだろう?)

 (例えば、いま隣にいる人に愛を伝えることだって出来るはずだ)

 (ねぇ? ──愛してる)




fin.




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