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この世で最も幸せな、3分間の出来事
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しおりを挟む【あの時お前が居てくれたから、俺は今日も生きてる】
[side 清尾]
……状況が、理解できない。
部活が終わって、部室にジャージの上だけ忘れたと思って取りに行くと
何故か、部屋からすすり泣く声。
(あれは……マネージャー?)
俺のジャージなんか抱えて、一体どうし──
「ヒッ、ク…ゃだ、やだよぉ……清尾先ぱっ、卒業なんかしないでっ……
僕、こんなに先輩のこと…好きなのにぃ……っ」
「──っ!?」
ちょっと ちょっと待て。
(マネージャーは…森は……)
────俺のことが、〝好き〟………?
「~~であるから、こうなる。そしてこれはー……」
あの日
忘れ物を取りに行った部室で見たあの光景が、頭を離れない。
森は、一体いつから俺のことが好きだったんだろう。
俺よりひとつ下の学年で、確かマネージャーになりたいと入って来たのはあいつが入学してすぐの事だった。
最初は共学高校の男子部活に男のマネージャーかよと思ったけど、でもまぁ女子部活も女のマネージャーいるし別におかしくはないかって思って、そのまま。
他の女子マネージャーより少し背が高いくらいで、体つきは寧ろ女子より細い。
いつもおどおどしてて、でも言うとこはっきり言うから尊敬もしてて…そんな頼れる後輩だった。
なのに──
つらつらおこなわれる授業は、小学生の頃から代わり映えしない2週間に1度のもの。
今日の講師も参考書片手に話してるし、クラスの奴も怠そうにしてる。
「毎回講師を変えた方がジュースの体験談等も聞けるだろう」という国の方針で毎回教える人は違うが、体験談なんか話す講師は1人も居なくてみんなマニュアル通り。
(ま、それでも俺は毎回真面目に聞いてるんだけどな)
でも、今日だけはまったく頭に入らない。
だってあいつは……森は、 ──〝アイス〟だ。
〝アイスは、ジュースと結ばれると3分以内に溶ける〟
この世界にごく僅かいる、人間以外の存在。
物心ついた時から嫌という程学んできた。
そのアイスが、俺のことを「好き」だと言った。
──ということは
(俺は……〝ジュース〟なのか?)
まさか、まさかそんなはずは。
でも、部室で見たあの苦しげな表情や悲しそうな声や涙は…決して嘘ではなかったと思う。
ジュースは、普通の人間とまったく変わらない。
アイスみたいに体温が低くもないし、だから自分がジュースと自覚しないまま生涯を終える人もいる。
そんな中…まさか自分がジュースかもしれないなんて……
ポソッ
「まじか……」
〝いざという時のため〟と毎回繰り返されてきた授業。
だが、はっきり言って現実になると何の意味も持ってない。
俺がジュースなんて、まったく想像してなかった。
普通に人間として生まれたんだとばかり……
(どうする?)
森は、男。
俺は別にホモがどうとか言わないし友だちにそういうのがいても何とも思わない。
だが…恋愛対象……?
俺が森を、好き??
(意味が分からない)
どうする?
森はあんなに苦しそうに泣いていた…「俺が好き」だと言っていた。
だが、森はアイスだ。
仮にも「俺も好きだ」と伝えたら、途端に溶け始めてしまう可能性がある。
(それなら、別にこのままでいいんじゃないか?)
森のことを深く考えずこのまま高校を卒業し離れていけば、森は溶けることはない。
もっと長くこの世界を生きられることができる。
そっちの方が、周りの友だちも喜ぶのでは?
両親だって悲しまずに済むだろう。
だから俺だって、そんなに深く森について考えなくても──
「この学校には、珍しくアイスがいるな」
「っ、」
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