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しおりを挟む「義兄さま?」
どうしたんだろう?と首を傾げる僕に伸ばされた手がさらりと髪を耳にかけ、そのまま頬をそっと撫でる。
「好きだよ。セレナード」
気負いもなく、さらりと溢された好意。
「僕も」
笑みを浮かべてそう返せば、困ったような微笑みが浮かんだ。
それは近頃よく目にする表情で……。
一瞬だけ瞳を伏せた義兄さまは僕の右手を掬いとり、手の甲を親指ですりっと撫でた。
「たぶん私の “好き” はセレナードの “好き” とはまた違うんだ」
困った微笑のままそう告げて、跪いたままの義兄さまは僕の手に口づけた。
絵本の王子さまみたいだ。
違うの意味を考えながらそんなことをふと思う。
義兄さま……ギルは僕やエリオットほどじゃないけど、普通に美形だ。
ダークブラウンの癖のある髪と理知的な顔立ちは大人っぽいし、身長もある。
優しくてガラもぜんぜん悪くない。
キラキラ度では負けるけど、エリオットよりずっと王子さまっぽいと僕は思う。
だって絵本の王子さまもよくこんな風に手の甲に口づけたり、お姫様だっことかするし。
うん、絶対エリオットより似合うぞ。
「なにかまた可笑しなことを考えているだろう?」
笑みを含んだ声で指摘され、はっ、と脱線から意識を戻す。
「違うって……?」問いかけにますます義兄さまは困った顔になった。
「そうだな……セレナードのよりも純粋じゃなくて、もっとどろどろと重いかな」
「…………」
好きの種類は粘度や重さで量るのか。
そして粘度で僕は閃いた。
義兄さまの僕に向ける甘さはハチミツのように甘いらしい。
ハチミツはさっき食べたメープルシロップより粘度が高くてとろっとしてる。
義兄さまはハチミツ。
僕はメープルシロップも好きだがハチミツだって好きだ。
よく食べるのはとろっとしたやつだけど、結晶化しかけてときおりジャリッとするのだっておいしい。
よし、なにも問題なし!
「僕はギルが好き。大好き」
だからそんな表情をする必要ないのに。
よしよしと義兄さまがよくしてくれるように頭を撫でればぎゅっと抱きしめられた。
「敵わないな。セレナードには」
ふっと笑った義兄さまは、表情を引き締めると再び僕の手をとった。
「じゃあ仕切り直し」
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