麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴

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おっといけない。
人前だった。

いつの間にか挨拶は終わったようでアギア殿下のお顔がめっちゃこっち向いてた。

アギア……ってたしか第三殿下だよな。
外交とか担当していたはず、と脳内検索をかけてからきちんと公用語でご挨拶する。
にっこりと微笑みかければラーニャ国の皆さんの口がぽっかり空いた。

『すっげぇ美人』

騎士っぽいお兄さんから小さく声が漏れた。
声の相手を見れば、慌てたように口を押さえ頭を下げられる。

彼に同じ言語で『ありがとうございます』と返せば、驚愕の表情を顔いっぱいに浮かべられ小首を傾げる。

いかにも思わず声を出しちゃいました、って感じだったし知らんぷりしてあげた方が良かったのかもしれない。

そう思ったのだが、驚きは仕事中の私語に反応を返された気まずさからではなかったらしい。

「私のセレナードは綺麗で可愛いだけでなく、とても優秀だろう?」

ラーニャ国の面々から僕の姿を隠すように義兄さまが僕の前に立った。
義兄さまの言葉に、彼らが驚いていたのが僕の返答にたいするものだと気づく。

移民も多いかの国では様々な言語を操る民たちがいる。
だからこそ一般に使われる公用語があり、先のアギア殿下の挨拶も当然のようにそれだった。

対して、騎士がぽろりと溢した言葉はラーニャ国独自の古くから伝わる言語。
それを僕が聞き取り、同じ言語で返してみせたから驚いたのだろう。

義兄さまからも優秀と誉められ、お澄まししながらこっそり胸を張った。

学年一位は伊達ダテじゃないんだぞ。

それはそれとして……このご挨拶はいつまで続くんだろう?

さっきから僕は眠いのだ。
しかも温かくてぽかぽかの義兄さまに抱きついたから余計に眠い。

義兄さまの匂いは安心するし、きっとポメ男さんと同じぐらい抱き枕に向いてると思う。
前にそう言ったら「私はセレナード専用だからね」ってクスクス笑われた。

……っと、ヤバい。

本格的に頭がふらふらしてきた。

付き合いが長いだけあって、そんな僕の限界にしっかり気づいてくれた義兄さまとエリオットがこっそり目配せ。

「場所も場所ですし正式な挨拶はまたにしましょうか」

「そうだな。他の生徒もいることだし」

実は帰宅で混み合う馬車停付近を塞いでお話してた僕たち。
王族に割って入ることなんて出来るわけもなくさぞ迷惑だったことだろう。
わりと興味津々で遠巻きにしてるから楽しんでるかもだけど。

「では私たちは失礼しますね」

義兄さまの言葉にバッと視線が向いた。

さっきからシンクロ多いし、エリオットとアギア殿下は気が合うかもしれない。
まぁ、そうでなくても二人の言いたいことは僕にもわかるけど。

きっと「お前らだけ帰んの?!」的な。

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