26 / 47
26
しおりを挟む「我が国は寒いのでジャムを落として飲むのですよ。そうすると体が温まるんです」
小瓶にはいった綺麗なジャムが運ばれてきた。
隣の義兄さまが「入れてごらん?セレナードは好きだと思うよ」って囁いたのでたっぷり投入。
甘いのは好きだし、僕の好みを周知している義兄さまが言うなら美味しいという確信がある。
しかもザッハトルテやチョコレートまで運ばれてきた!
「ザッハトルテやチョコ菓子も我が国の名物です。皆さまどうぞお召し上がり下さい」
どうやらこれらはラーニャ国の人たちが用意してくれたらしい。わーい!
あれ、でも……?
「……賞味期限」
副会長はザッハトルテはお土産は難しいって言ってた。
現に義兄さまのお土産にはなかったし、だから弟子が代わりを買ってきてくれたんだ。
思わず呟いてしまった瞬間、テーブルの下でエリオットに手を叩かれた。
はっと口を押さえようとするも遅い。
僕の呟きはばっちりアギア殿下らに聞こえていた。
だけど殿下は全然怒っていないどころか笑っている。
「これはラーニャ国のチョコを使ってシェフが今日作ったばかりです。なのでお腹を壊したりしませんよ?」
からかうように告げられてほっぺが赤くなったまま謝る。
「ラーニャ国名物のザッハトルテは日持ちの関係でお土産に買ってこれなかったからね。この子はずいぶんと残念がってたんだ」
やりやがった、って目を向けてくるエリオットと違い、僕をフォローしてくれる義兄さまの発言もあって非難の視線どころか向くのは微笑ましそうなそれだけだからセーフ。
「可愛らしいとは聞いていたが本当に可愛いな。お気に召しましたらまた用意させましょう」
前半は義兄さまに、後半は僕へ顔を向けて紡がれたその言葉にぱあっと笑みが浮かぶ。
なんていい人!!
キラキラした瞳を向けたらアギア殿下の白い肌が赤くなった。
ついでに義兄さまの機嫌が僕らにしかわからないくらいにちょっぴり低下し、エリオットからは自重しろとばかりに手をぎゅっとされた。いたい。
「さ、食べないのかい?」
義兄さまに促されて意識を目の前に切り替える。
ザッハトルテも楽しみだけどまずはお茶とカップに手をかけた。
みんなが「おいしい」と声を漏らしてたから僕も早く飲みたかったけど、僕は猫舌だからまだ口をつけてなかったんだ。
いつもならスプーンでぐるぐるしたり、ふぅふぅして冷ますけど、この場でやるにはお行儀悪いから。
たぶんもう大丈夫だろう。
うっすらと湯気が立ち上るカップの中身に慎重に口をつけた。お茶の香りだけじゃなく、ジャムの果実の香りがふわりと香った。
あ、甘くておいしい!
そう思った次の瞬間……頭がぐらっとした。
カップが手から滑り落ち、体が傾ぐ。
すぐ近くで義兄さまやエリオットがひどく慌てた声で僕を呼ぶ声が聞こえたけど、視線を向けることさえ出来ない。
暗転するように意識は塗りつぶされていった。
715
あなたにおすすめの小説
【「麗しの眠り姫」シリーズ】苦労性王子は今日も従兄に振り回される
黒木 鳴
BL
「麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る」でセレナードたちに振り回されるお世話係ことエリオット王子視点のお話。エリオットが親しい一部の友人たちに“王子(笑)”とあだなされることになった文化祭の「sleeping beauty」をめぐるお話や生徒会のわちゃわちゃなど。【「麗しの眠り姫」シリーズ】第三段!!義兄さまの出番が少ないのでBL要素は少なめです。
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
次期当主に激重執着される俺
柴原狂
BL
「いいかジーク、何度も言うが──今夜も絶対に街へ降りるな。兄ちゃんとの約束だ」
主人公ジークは、兄にいつもそう教えられてきた。そんなある日、兄の忘れ物を見つけたジークは、届けなければと思い、迷ったのち外へ出てみることにした。そこで、ある男とぶつかってしまう。
「コイツを王宮へ連れて帰れ。今すぐに」
次期当主に捕まったジーク。果たして彼はどうなるのか。
溺愛ヤンデレ攻め×ツンデレ受けです
ぜひ読んで見てください…!
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる