麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴

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そうやってよしよししてるとエリオットもやってきた。
肩で息をする彼の隣には王宮医のおじいちゃんもいる。僕も何度もお世話になってるおじいちゃんだ。

「ようやくお目覚めになったか。さて、具合はどうですかな?」

聴診器を弄りながら近づいてきたおじいちゃんに「それが……頭が痛いらしくて……」と母さまが眉を下げて言うと義兄さまとエリオットがすごく慌て出した。

「もう痛くないからへいき」

過保護な義兄さまはともかく、エリオットまで血相を変えて心配する姿にびっくりしつつ答えた。

実際、いまは痛くない。
体がダルい感じはするけど。

ちょっと失礼、そう言って聴診器を当てられ、あーとお口の中を覗かれたり目にペンライトを当てられた。

ふむ、とお髭を触るおじいちゃんにみんなの視線が集まった。

「問題なし。起き抜けに頭が痛かったのとダルさは、慣れない薬の影響と…………寝すぎによる影響ですな」

「新記録」

指を三本たててつき出せば、エリオットには「心配させやがって」と毒づかれ、義兄さまには「本当に?本当にどこも具合は悪くないんだね?」と何度も確認された。

五回目のやりとりでやっと信じてもらえ、よかったとギルの表情が緩んだ。

「とはいえ、数日は安静にして様子を見た方がいいですじゃろ。なんせ薬が効きすぎておる」

「そういえば、僕だれに薬を盛られたの?」

聞くタイミングを逃していたが、重要なことに気づいて聞いた。

その途端……部屋の空気が変わった。
具体的に言うと、仄暗い殺気が渦巻いている。

発生源はギルにエリオット、それに使用人たちだ。

そしてエリオットの口から語られた名は……知らない人だった。

……誰?

「商会の人間だ。恰幅のいいのが居ただろ?」

「すっごい見られた人」

「そう」

お茶会の準備に携わった商会にたしかにそんな人が居た。

名前を名乗る挨拶はしてないけど会場の隅に商会の人らがいたから会釈だけしたんだけど、お腹ゆさゆさの偉そうなおじさんに目を見開いてガン見されたんだ。

見惚れたりされるのはよくあることだけど、あんまりにも凝視してくるおじさんに義兄さまの機嫌が悪くなったからよく覚えてる。

……と、なると。

「誘拐?」

目的はやっぱりそれだろうか。

エリオットいわく、僕は変質者ホイホイらしいから。

失礼な言い分だが、過去の誘拐未遂の件数を考えれば否定はできない。

でもみんなが全部防いでくれているから、いまいち危機感も持ててなかったりする。

「目的は誘拐ではあったんだけどね……」

含みを持たせて呟いた義兄さまの瞳はハイライトが消えている。
これはいけないと手をぎゅっとすれば僕を見て微笑んでくれた。

危ない、危ない。
ギルがダークサイドに堕ちてしまう。

エリオットも義兄さまの危うさに気づいたようで「ま、お前も目覚めてばっかだし、詳しい話はまた今度な。体もダルいんだろ?いまは休め」と話題を変えてきた。

ちょっと気にはなるけどその方がいいだろう。
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