麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴

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僕の手の甲を親指で撫でる仕草は驚くほど優しいのに、うっそりと笑みを浮かべる義兄さまの表情はブチギレしているときのそれだ。

「そうだね、それがいい。父上もあとで様子を見にこられるだろう。クズどものことは私たちに任せて、セレナードはゆっくりお休み」

うわぁーお、大迫力。
なまじ僕に向ける笑みがとろけそうなほど甘いから “クズども” のとこと表情と声音の落差がひどい。

「だな。セレナードのことだけじゃなく、国まで舐めた愚かなマネしてくれたツケはきっちり払ってもらわないとな」

そしてエリオットまで止めないどころか超乗り気。

これはきっとあれだ。
「成仏しろよ……」ってやつだきっと。

そもそも、僕が3日も眠ってたのに心配性で過保護な義兄さまや父さまがそばにいなかったのが可笑しいんだ。

他にすることがあった。
つまり……報復準備の真っ最中ってことなんだろう。

終わったな、犯人たち……。

まぁ、悪い人たちに同情する気はないけど。興味もないし。

それと同時にやたらといる使用人たちの意味にも気づいた。
お城なのにやたらとうちの使用人たちがいるなと思ったけど、彼らは僕の護衛も兼ねているんだろう。
うちの使用人たちは近衛なみの実力を備えもってる。

ますますご愁傷さまとしかいいようがない。

ちーん!の表情をして手を合わせれば、おじいちゃんがふぉふぉふぉっと楽しそうに笑った。

病人や怪我人には優しいおじいちゃんだが、加害者とお薬飲まない子には厳しいんだ。
とくに今回は薬を盛って、ってやり口が気にくわないだろうから余計だろう。

なのでこの場に「ほどほどに」って義兄さまたちを宥めて犯人を庇ってあげる人は皆無。

こーいうの、自業自得って言うんだ。

「それはそうと……」

イタズラっぽい笑みを浮かべておじいちゃんが僕を見た。

「お腹はすいてませんのかな?セレナードさま」

!!?

指摘されて初めて気づいた!

3日も眠ってたってことは……ごはんもおやつも食べてない!!
しかも僕はザッハトルテを食べる直前に倒れたから、それも食べてないぞ!

「なんてことっ?!」

あわあわする僕に義兄さまや母さまが微笑ましそうに笑ってるけど、笑ってる場合じゃない。

「おなかすいた」

気づいた途端にものすっごくお腹がへった。
どうしよう、ふらふらしてきた。

ぐ~~!!
くっきゅゅ~~~!!!

僕のお腹も抗議の声を漏らしてあげた。

……なんか、生き物の鳴き声っぽい。

そう思ったのは僕だけじゃなかったらしい。
みんなの視線が僕のお腹に集まった。

「あらあら、お腹の虫がないてるわ」

「セレナードはお腹の音も可愛いね」

「なんか腹に変な生き物でも飼ってんのか?すげー音だな、おい」

「実に気になりますな。開いてみましょうか」

解剖?!

通常運営の義兄さまと、エリオットの失礼な発言は流すとしても、おじいちゃんの発言が恐すぎる。
だっておじいちゃんは外科手術もこなせる王宮医。

「だ、だめ!」

両手でお腹を守りながら、義兄さまをひっぱりその背中にぷるぷる隠れた。

「ほぉっほぉっ、冗談ですぞよ。いまはまだ」

「まだってなにっ?!」

「セレナードさまは注射や薬を嫌がって、具合が悪いのを誤魔化すことがありますからな。開いてみないとわからんこともあるかもしれません」

「お、お薬のむっ」

「お注射は?」

……ぐぅっ。脅しとは卑怯なっ。

「が、がんばる……」

3日食べてないから!と3日分のおやつを要求したけど却下され、目覚めてばかりだからと柔らかいパンとスープ、デザートはさっぱり桃のシャーベットを食べてからだらだら。

いっぱい寝たけど、ダルさは残ってたからお昼寝はちゃんとした。


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