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しおりを挟む事件のあらましはこうだ。
若い頃にバカをやって家を追い出された兄は家族を、特に自分に代わって商会を継いだ弟を恨んでいた。
悪い仲間とつるみ、落ちぶれたあともその恨みは変わらないどころか募るばかり。
自分の所為でその立場を失ったくせに、商会も財産も自分のものだと思い続けていたらしい。
そこでついに行動に移した。
いくら双子で見掛けがそっくりでも、書記が口にしたようにそれだけでは成り代わるのには無理がある。
だが、会長に成り代わって商会を経営し続けるならともかく、ほんの一時会長のフリをして財産を掠め取って逃げるだけなら話は別だ。
兄は弟を誘拐した。
そして金目の物を奪う算段をしているところで商会が手配を進めていたお茶会の話を知って、商会の金品を奪うだけでなく令嬢たちを攫って売り払い、荒稼ぎしてやろうと考えたらしい。
誘拐した弟、つまりは本物の会長の身の安全と引き換えに会長の側近を脅して会長の不在がバレないように商会の運営やお茶会の手配は彼にさせた。
側近は貧しかった頃に自身と家族の命を救われて会長(本物)のもとで働き始めた人で、兄もそれを知っていたから弟を人質にとればどんな無茶な要求も断れないだろうと踏んで、実際その通りだった。
元々、王家のお茶会にこの商会が呼ばれたのは、お茶会で出される品に我が国では入手が難しいラーニャ国のお茶やお菓子も含まれていたからだ。
そして座興に呼ばれたラーニャ国の一団の存在。
歌や舞を観るために控え室に移った令嬢たちをそのまま拐い、あわよくば全てをラーニャ国の仕業にしてしまうつもりだったらしい。
例え上手くいかなくても騒ぎ立てれば逃げるための時間が稼げるし、なにより一時的にでも国の不和を招けば真相が判明したあとでも商会の責任は重大だ。
会長が事件に関与しておらず、彼もまた被害者だとしても国の高位令嬢たちが拐われて他国との関係悪化を招いたともなれば商会の未来はないも同じ。
「随分と行き当たりばったりというか、乱暴な計画だな」
「ああ、だが奴らはすぐに出国するつもりだったらしい。もし令嬢たちを国外に連れ出されてたらと思うとゾッとするな」
令嬢たちを拐ったあとはそのまま港へ走り、船で国を出る手筈だったらしく、実際にその船も押収された。
なので結構危なかったのだ。
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