【連載版】魔王さまのヒミツ♡ ~バレたら即・下剋上?!クール魔王の素顔は泣き虫チキンな箱入り息子~

黒木  鳴

文字の大きさ
4 / 19

しおりを挟む


ぶつくさと愚痴をこぼす姿を見ながら、やれやれと片眼鏡モノクルを指で押さえたジェラルドは部屋に控えていた使用人たちを退出させ、そのままレイの隣へと座る。

「レイ様」

静かに名を呼べば、ピクリと華奢な肩が揺れた。

不自然に彷徨う瞳、だけどジェラルドはそれを許さない。
失礼、と軽く声をかけ、細い腰へと手を伸ばす。ほんの少し体が浮いたかと思えばジェラルドの膝の上に座らされていた。

頬をするりと撫でられ、レイは気まずそうに瞳を伏せる。

「……まだ、大丈夫…………」

「ダメです」

さらりと零れる髪を撫でつつ「お腹が空いてる癖に」と耳元で低く囁けば、唇を尖らせたレイは俯く。

わかりやすい図星の証だ。

その様子にクスリと笑みを漏らしたジェラルドは黒ネクタイをしゅるりと引き抜き、プチプチとボタンを外していく。
首元を寛げ、さぁと蠱惑的に囁いた。

白い首筋に目をやったレイの喉がコクリと鳴る。

「上手におねだりできるでしょう?」

甘い声が揶揄からかうように耳にまとわりつく。

目線を外せないままレイは葛藤する。

細いが男らしいジェラルドの首筋。
白いその肌からは濃厚で甘い香りが燻るようだった。

肌の下でドクドクと脈打つ血管、吸血鬼であるレイにはその体を巡る赤い血潮の甘さも香りも嫌というほど感じられた。

吸血鬼にとって吸血は本能であり命の糧だ。
だがレイはあまりその行為が好きでない。

結果、主食をチョコレート(※主にチョコケーキ)で代用している。

本人曰く「どっちも甘い」。

どちらかというと小食で、魔族としての力も強いレイは数日血を摂取しなくても飢えることはない。

それでも…………体が血を求めるのは止めようがない。
増してや甘く、極上なジェラルドの血ならなおさらのこと。

結局飢えた体と本能に抗うことなどできず、レイはジェラルドの胸元をぎゅっと握りしめた。

「…………ちょうだい」

拙い言葉のおねだり。

まるで睦言を紡がれたようにジェラルドの表情が蕩ける。
いっそ毒のような甘い甘い笑みを向けられると同時に、レイはその白い首筋へと噛みついた。



玉座に座る主へと甲斐甲斐しく世話を焼く光景をその男は瞳を細めて見ていた。

片眼鏡モノクルをつけた美形の副官はその容姿に反し、性格と実力は正に上級悪魔そのものだ。
魔王に楯突いた者たちへ向ける無慈悲さを何度も見たし、なんならその実力を身をもって体験もしている。

だが、あの魔王は………………。

「どう思う?イグナー」

問いかけられた顔色が悪くどこか爬虫類の特徴を持つ痩せた男は、なにも答えず不気味な視線をただ玉座へと注いでいた。



ピクピクと揺れる耳。
ふわふわの耳は緊張のためかへにょりと垂れ、だけど周囲の音を拾うようにピクピクと小さく揺れていた。尻尾も不安げにゆらゆらと尻の後ろで揺れている。

「ご挨拶を」

背を押され、進み出た少年はたどたどしい動きで礼をし「ルノアです」と名乗った。

「兄の息子のルノアと申します。このたびは魔王様にお目通りの機会を頂き誠に有難うございます」

灰色の耳と尻尾を持ったヴォルフが頭を下げた。
まだ柔らかさの残るルノアのものと違い、ヴォルフの毛並みは堅そうだ。

「先代の子か……。ルノア、覚えておこう」

人前なのでクールな魔王様モード発動中のレイは無表情で淡々と応える。

「光栄です」と狼獣人の2人は揃って頭を下げた。

魔界にそれなりに居る獣人は素直な性質の者が多い。

猫や蛇の獣人のように気まぐれや狡猾な者もいるが、概ね素直なので腹の内を探らずに接することができる相手だ。
特に群れをなす狼獣人は仲間を大事にするし忠義にもあつい。

レイとしても比較的苦手意識の低い相手なので、呑気に「狼獣人にしては気が弱そうだな~。でも強面じゃないから話しやすそう」なんて考えていた。

臣下たちが息子だ、娘だ、嫁だ、果てはどんだけ遠縁なの……?っていう身内を紹介してくることは珍しくない。

今回もそんな珍しくもない一幕だった。

いくつかある群れの中でもヴォルフは力のある群れのリーダーだ。
そんな彼は独身で子がなく、だからこそ亡くなった先代のリーダーである兄の子を次期後継者として推すべく紹介したのだろう。

…………が、 “喧嘩上等!” をのぼりに掲げてそうな魔族たちだ。

気が弱そうなルノアなど正に格好の獲物。

ここでも喜々としてしゃしゃり出てきた。
ニヤニヤと見るからに見下した表情をしたゼットが進み出てルノアを見下ろす。大柄なオーガであるゼットに睨まれたルノアは身を強張らせた。だけど引くことはなくキッ!と顔をあげる。

「おおっ怖っ!けど尻尾が硬直してるぜ?ビビッてんのがバレバレだっつーの!!」

大袈裟に怖がって見せたゼットはあえて大きな声を出して周りの笑いを誘う。

勇猛な戦士として名高いヴォルフの後継候補としては頼りないと感じた者たちも多かったのだろう、誘われるように笑いがさざ波のように広がった。

「貴様……!」

「なんだ?なんなら決闘でもするか?」

グルルッと喉を鳴らすヴォルフを煽りつつ顎をしゃくってルノアを示した。

「当然、そっちの坊がな」

どっ!と笑いが起きる。

オーガの統領であるゼットとまだ幼いルノアでは勝負にすらならないのは目に見えていた。

「その辺になさい。魔王様の御前です」

ジェラルドが声を挟んだ。
鉄仮面の裏でルノアの心配をしていたレイは彼の仲裁に内心ほっと息をつき……ギラついた赤い瞳に見据えられ身を強張らせる。

「魔王様はどうお思いで?このガキが相応しいとでも?」

「私やお前が口を挟むことではないだろう」

平静を取り繕って答えれば、ゼットはケッと嘲るように笑った。

「どうも魔王サマは日和見主義でいけねぇな」

「口を慎め無礼者が」

冷淡なディードリッヒの声に場が静まり返る。
一言で魔族たちを黙らせるその威厳は流石は元魔王といったところか。

怯んだ自分を隠すようにゼットは無理やりに笑みを作る。

「魔族に重要なのは強さ!!そうだろぉ?オレは間違ったことは言っちゃいねぇと思いますが?」

「その結果、国が衰退したのはお前も知っているはずだ」

「私の次代の統治は最低だったからねぇ。またあの時代に逆戻りしたいのかい?」

レイとディードリッヒの言葉にゼットは「まさか」と肩を竦めた。

典型的な脳筋で暴君だった先代の統治下で戦闘能力の高いオーガは危険因子と見なされ随分と割りを食った。政治下手だった魔王のせいで国は衰退し、困窮した魔族も少なくはない。

それなのに何故こうも力に固執する魔族が多いのか……。

お国柄と言ってしまえば身も蓋もないが。

「けど弱いヤツが生き延びれないのもまた事実だ!」

牙を尖らせゼットが笑う。

「単純なことだ。生き残りたけりゃ、従えたけりゃあその実力を示せばいいっ!!」

高らかに吠えられた言葉。
ギラつく赤い瞳は間違いなくルノアではなくレイへと向けられていた。

かつての魔王である父・ディードリッヒと違い、此度の魔王であるレイは未だその実力を見せたことがない。

赤い瞳は雄弁に語っていた。

 “お前の力を見せてみろ” と。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...