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しおりを挟むすでにそんな憧れはとうになくなったはずだが、幼い時からの口調は矯正には至らず……社交の場こそは丁寧な口調で話すが、親しい者たちのみの場では独特な口調のセレナードが爆誕した。
不幸中の幸いなのは英雄譚の主人公が騎士の少年だったことだろうか。憧れたのが同じくこどもに人気の怪盗の物語じゃなくてよかった。
「てめぇ」だの「~だろうが!」だの喚くセレナードなんて見たくない。
似合わなすぎる……。
なお、一人称「俺」呼びは断固阻止した。
……父上が泣いた。
なんだかんだで面倒見の良いエリオット王子とセレナードは仲良くなり、エリオット王子に迷子にならないようにと手を引かれるセレナードはまるで兄と弟のようだった。
もちろん兄はエリオット王子の方。
仲のいい2人を見るたびに感じる微笑ましさと……胸の奥で疼く想い。
いま思えばあれは紛れもな “嫉妬” だったのだろうとわかる。
だけどセレナードを “可愛い弟” として見ていると思っていた私にはその感情を認めることができず……。
あの頃の私はエリオット王子に “憎しみ” あるいは “殺意” に近い感情さえ抱いていたのかもしれない。
「いや、マジ勘弁しろよ、ほんと」
これはいつだかのお茶会でそんな昔の心境をふとこぼした時のエリオット王子の言葉だ。
盛大に顔を引きつらせ、若干私から距離を取るように仰け反っていた。
失礼な。
まだ若かったころの可愛い嫉妬にすぎないというのに。
ちゃんとその感情は胸の奥にしまって殺意を表に出したこともなければ、エリオット王子のセレナードに対する感情に色恋を含む “愛” が一切ないと理解出来たいまではその殺意もすでにない。
助けを求めるように近衛に視線を走らせずとも手を出したりしませんよ。
隣国の王女との恋を実らせつつあるエリオット王子は性的に至ってノーマル。
どれほどセレナードが絶世の美貌を誇ろうとも、その性別の前ではグラつくこともないというのはこれまでの年月で十分に信頼ができた。
あるのはただ、手のかかる弟に対するような愛情のみ。
本当に喜ばしいことだと思う。
王族に敵対し、国を敵に回す事態にならないこともそうなら、
なによりもセレナードの “お世話係” 的要因として実に理想的な相手としてこれ以上の人物はいないのだから。
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