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しおりを挟む「まぁ……肝心のセレナードは気づいていないがな」
そう、セレナード以外には……。
「セレナちゃんはちょっとふわふわしてるものねぇ」
その場の全員が無言で母上を見た。
その心は、俗にいう「おまいう」とかいうやつだ。
民の間で使われているとかで、なぜかやたらと下町事情に詳しいエリオット王子に先日教わった。
セレナードのふわふわで天然なところは確実に母上の遺伝だ。
私や父上、使用人一同で甘やかしに甘やかした結果もあるのだろうが……。
「ギルバート。言うまでもないだろうが、あの子を傷つける真似は許さない」
「はい」
鋭い眼光に神妙に頷く。
厳しくも優しい父上はその瞳をほんの少し緩ませ、硬い掌が肩へと置かれた。
「あの子がお前を受け入れるのなら私たちに反対する理由はない」
「……父上」
「お前もあの子も私たちの大切な子だ。誰よりも幸せになることを願っているよ」
「ふふっ、頑張ってねギルくん。ギルくんならセレナちゃんを一番大切にしてくれるだろうしママは応援してるわ」
「……ありがとう、ございます」
この両親のもとに引き取られたことを心から感謝し、セレナードへの猛アピールを開始した。
今まで以上に甘やかして、大切にして。
抱きしめては「好きだ」と伝えて。
「好きだよ」と頬や額に口づけるたびに、嫌がる素振りさえ見せず無邪気に「僕も」と抱き着いてくるセレナードに何度か理性がブチ切れそうになったが……そこは必死に堪えた。
父上たちからも、
「節度は守るように。無理強いは許さんぞ」
「ちゃんとセレナちゃんのペースにあわせてあげてね」
「行き過ぎだと判断しましたらご無礼ながらお止めしますんで」
そう釘は刺されたし、実際使用人たちからは何度かストップが入った。
“兄” として許されるのは抱きしめるのと接触キス(ただし軽め)まで。
頭はいいくせに年の割に妙に素直で幼いセレナードだ。
きっと私の「好き」の意味はわかってないんだろうなと思いつつも、ヒナに刷り込むように少しずつ私の存在を植え付ける。
決して裏切らないし、望みは全て叶えてあげる。
誰よりも甘やかして、悲しみも苦しみも全て取り除いてあげる。
だから、どうか私を『選んで』?
本当は……一時も目を離さず、掴んだ手を放さずに腕の中に囲っていたい。
だけど……それでは駄目なのだ。
あの子をこの腕の中で慈しむためには、確固たる揺らがぬ地位が必要で……。
だからこそ私は常に学園で上位の成績をキープし、卒業後はアカデミーに進学するとともに社交界で人脈を築き、さらなる人脈を得るために隣国への留学を決意した。
愛しいセレナードと離れるのは耐え難いほどに辛かったが……それもこれもこの先もあの子と共にあるため。
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