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しおりを挟む一番大切なセレナードからの確約をもらえたならば、あとは本格的に地盤を固めるだけ。
意気揚々と出国した私だったが…………ラーニャ国に到着する前に早くも心は折れそうだった。
果てしなく続く海、船に揺られながら見悶えた。
「セレナード……」
深刻なセレナード不足……。
学園には寮もあったが、セレナードと離れる気など皆無だった私は当然自宅通い。
要はあまりにも長い時間セレナードと離れるなんてはじめてだった。
「セレナードに会いたい」
異国の地で、何度そう呟いたかは数えきれない。
「セレナード、ああ……私の愛しいセレナード……」
「延々とぶつぶつ呟くのやめてくれ。怖い」
もはや無意識のそれにアギアに突っ込まれた数も数えきれない。
ラーニャ国への留学は予想以上に実りの多いものとなった。
こんなにも苦しい想い(セレナード不足)をしているのだから、それ相応以上の成果を得なければ!と躍起になって築いた人脈は今後の私の糧となるだろう。
なにより王族への伝手というだけでなく、 “友人” が出来たことは得難いことだった。
謁見の都合で帰国が遅れて、セレナードとの再会が遠くなったときは少しだけ呪いそうにもなったが……(アギアに必死に止められた)、アギアの兄である王太子殿下や現国王夫妻との面識が出来たのも大きな成果だ。
そうして様々な経験を得て帰国した私の瞳に映るセレナードは想像上のセレナードの100倍可愛かった。
王族sをほったらかして帰ってしまったのも仕方がない。
いま思い返しても反省はすれど後悔なんてまるでない。
あの時の私にセレナード以上に優先するものなどなにもなかったと断言できる。
ふと目が覚めた。
暗闇の中、ただぼうっと空中を凝視しているとだんだんと目が闇に慣れてきた。
「んぅっ」
鼻から息が抜けるような、あまい吐息。
全身の力がどっと抜けるのがわかった。
強張っていた体が自由を取り戻す。
視線をずらせばすぐそばにくぅくぅと寝息を立てるセレナードの可愛らしい寝顔があった。
闇にうっすらと浮かび上がる柔らかな白い頬。その頬に、体温に触れたくてそっと手を伸ばす。
温かく、滑らかな手触り。
頬を撫でていた手をほんの少しずらせば、掌に吐息を感じた。
「……っ」
無意識に漏れたのは、引きつったような安堵の息。
声にすらならなかったそれを喉の奥で堪えながら体を横向きに寝返った。
何よりも、誰よりも大切な存在をぎゅっと腕の中に閉じ込める。
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