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しおりを挟む誰もが無言でその姿を見つめた。
痛いほどの沈黙。
やがてそれを破って歓声を帯びた声がそこかしこで生まれる。
「きゃー!お似合いですっ!!」
「キレー!!」
「可愛いいっ……」
「女神っ…………!」
「ヤバい……」
大興奮で歓声をあげる者、声もなく見惚れる者、顔を真っ赤にして鼻を押さえたり、崇拝するように祈りを捧げる者までより取り見取り。
俺も思わず見惚れた。
慣れないドレス姿は歩きにくいのだろう。
ドレスの裾を両手で持ち上げ、不安定なヒールでとてとてと歩く姿は非常に庇護欲をそそる。
仮縫いのドレスを身に着けたセレナードはどっからみても姫。
化粧もしてないくせに、違和感なんてまるでない。
このままパーティーにでも参加すればこぞって紳士が群がるだろうというぐらい、可憐さと美しさを兼ね備えた姫そのものだった。
「めちゃくちゃ似合うな、お前……」
男に見惚れてしまった敗北感を滲ませながら思わず呟けば、えっへん!とばかりに誇らしげに胸を張るセレナード。
うん、中身はいつものセレナードだ。
なぜコレに見惚れてしまったんだ、俺っ。
そして俺は非常に不安になった。
…………これ、人前にさらして大丈夫なやつなのか?
ただでさえ誘拐だのなんだの狙われやすい奴だ。
しかもセレナードに手をだせばもれなくギルバードだけでなく公爵家がキレる。
下手したら文化祭の劇が元で没落する家が出かねない。
本番を前に果てしなく不安になった俺だった。
生徒会での仕事も、クラスの出し物も、文化祭の準備は着々と進んでいた。
…………ある一点を除いては。
「困った……」
腰に手を当てたセレナードが呟く。
「どうしたんですか先輩?」
言葉と動作がちぐはぐなセレナードを弟子が覗き込む。両手には大量の荷物。
文化祭で使う資材を確認し運んでいる最中だ。
記憶力は抜群なセレナードが「それはあっち、書記のはとなりのとなり」と置き場所の指示を出す。
貧弱なセレナードは戦力にならないので指示役。
普段書類仕事で役に立たない書記なんぞは箱を4つ、5つと一度に運び大活躍だ。
適材適所。
「ベッドで寝ないでいる方法がわからない」
指示を出しつつ、ふぅっとためいき。
知らないやつが聞いたらふざけてるとしか思わないだろうが……本気も本気だ。
俺らはまだラストシーンの解決策を得られずにいた。
乾いた笑みの書記や弟子に顔を向けられ、パンパンと手の汚れを払いつつコクリと頷く。
「マジかよ」
「大マジだ」
「いっそあのシーンを削るしかなくないか?」
「無理があんだろ」
提案に賛成したいのは山々だが……一番の見せ場といっても過言ではないあのシーンを削るのは不可能だろう。
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