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しおりを挟む「僕のお昼寝~~」
フラフラしながら半べそをかく腕を引く。
一人で歩けば足をもつれさせそうなほど疲れ切っているセレナードをソファへと座らせ、エセ双子に注文させたサンドイッチと飲み物をその前に置く。
文化祭当日。
毎年のことといえばそうだが……今年もハプニングが続出した。
やれ機材が足りない!だの、熱が入りすぎてのもめごとだの、迷子に落としもの……生徒会の面々は学園中を奔走しまくるはめになった。
「今年はいつもより多いな」
ぼやく書記の言葉どおりの大忙し。
特に昼前は問題が重なり予定よりもかなり忙しかった……。
結果……セレナードがヤバい。
俺らのクラスの劇は午後から。
着替えやら準備もあるし、昼飯は早めにとって本番に向けしっかり昼寝をさせる予定だったのだが…………。
かなり時間も押している。
とりあえず手早く食えそうな軽食をいつもより大きな口で(それでも小さいが……)パクつくセレナードは半べそだ。
「ごちそうさまでした。おやすみなさい」
昼食の時間を削ってなんとか睡眠時間を確保したセレナードだったが…………案の定、眠そうだ。
「ほら」
手渡したのは黄色の果実。
今日のためにセレナードが用意した秘密兵器……レモンだった。
意を決したようにくし形に切ったそれにかじりついたセレナードの表情が盛大に歪む。
「しゅっぱいっっ~~」
顔中をくしゃくしゃにして呟く。
そりゃあ酸っぱいだろうな。
「ううっ~~!!けど、目は覚めた」
折角だし、と俺も疲れた頭をスッキリさせるために一つ手に取った。
めっちゃ、酸っぺぇ!!
カーテンから覗いた客席は見事に満員だった。
しかも前列にまさかの両親を発見して「げっ!」と顔を歪める。
国王夫妻のくせに本気で来やがった……。
その隣には宰相一家もおり、国のトップが揃ってなにやってんだと思わず呆れる。
似合わなすぎる女装姿に一部笑いも起きつつも順調に演劇は進み…………可憐なドレス姿のセレナードが舞台に姿を現した途端、どよめきにも似た激震が走った。
誰もが舞台の上のセレナードに目を奪われている。
幕のすき間から覗いていた俺は…………ふとギルバートの表情を見てしまい悪寒が走った。
セレナードを見つめる甘ったるい表情、いわくハチミツなそれとは裏腹に身にまとう仄暗い気配。
十中八九セレナードに見惚れる有象無象に対する嫉妬や警戒等だろう。
頼むから誰もちょっかいだすなよ……。
そう願いながら腕をさすっていれば、やがて俺の出番だ。
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