失礼ながら殿下……私の目の前に姿を現すな!!

星野日菜

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その六

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馬に揺られて十分ほどしたところでバルドが口を開いた。

「もうそろそろです」

「思いの外早い」

まあ、この体制が終わってくれるのならありがたいことなのであるが。

馬に乗る、ということはつまり私の腰にこの変態王子が手を回している状態。

近いのだ。顔も体も。

「と、いうか。なぜ"この"馬で?」

「徒歩では日が暮れてしまいますし、馬車では森に入れませんでしたので」

「そうじゃなくて……なぜ! 白い! 馬で?」

私たちが乗っているこの馬。白いのだ。そう、白馬なのだ。

まるで物語の王子がのっているような。

前世では一度も馬など見たことのない私。それでも綺麗な毛並みだと感じた。

「土で汚れたらもったいない! こんな綺麗な馬なのに」

「優しいですね」

「もったいない病にかかっているだけ」

「この馬になれたならどれだけ幸せなことか」

「そんなこと起こったら卒倒する。一生白馬に乗れなくなる」

私の冷静かつ絶対零度のツッコミにバルドがなぜか優しい微笑を浮かべる。



「……気に入ってもらえると、思ったんです」

「……え?」

なんだなんだ? こんな台詞はなかったはず。

私の台詞がおかしいせいか? 『転生しちゃったんですが?』のヒロインはツッコミなんて入れなかったから?

「昔、絵本を贈りましたよね」

とりあえずうなずく。貰ったのはアメリアであって私ではないが、彼にとっては同じ人間。肯定しなければ。

「あの絵本に『白馬の王子様』が出てきたでしょう?」

「はぁ……」

またまた適当にうなずく。

「それを見て、『格好いい』と言ったんです。貴女が」

……そんな理由で白馬に乗って現れた、と。そうか、そうか。

「今度からは実用性重視の早馬」

「……助けに行ってもいいんですか?」

「誰が言った? しかも怪我する前提で?」

ポジティブ人間に言っちゃダメだった。ダメ出しさえもポジティブにとられるとかむしろ私のメンタルが先に弱る。
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