失礼ながら殿下……私の目の前に姿を現すな!!

星野日菜

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その八

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「お邪魔しま……」

「「「おかえりなさいませ」」」

私が小声でつぶやいた『お邪魔します』はメイドさんと思われる女性たち、そして執事とみられる男性に遮られた。

「うん。
アイレーン、彼女を部屋に」

「はい。バルド様」

一歩だけ前に出た一人の少女。

この子がアイレーンだろう。こげ茶色の髪に榛色の瞳。日本にいたらアイドルにでもなっているレベルの可愛さだ。

シャンデリアに赤い絨毯という気後れしているなかこんな美少女に道案内……

精神的に辛い。

私の心中も知らず「どうぞこちらへ」とうながすアイレーン。

「あ、はい」

彼女の言うままに歩いてゆく。

……どうしよう、気まずい。



廊下は長く、もう私たちの姿しかない。

「えっと……信頼されているんですね。アイレーンさん」

私がつぶやきよりも小さな声で言えば、彼女の瞳に動揺が走った。

「……私が一番の信者ですので」

……は? 信者?

「信者って……どなたの……?」

バルドか? 変態でも意外と人気があるのか?

「……―――――――――様です」

「……もう一回お願いします」

「……アメリア様です」

「はい?」

アメリア様です? ……私の信者……!?

「お会いしたことありました?」

「いえ。ですがこの日を待ち望んでおりました」

会ったこともないのにか?

心なしか声がうわずっているように聞こえる。

「『黒髪の天使』と呼ばれる貴女様にお会いできる日を……!」

『黒髪の天使』!?

それを吹聴したのは誰だ? やはりあの変態王子か?

「私どもは貴女様に絶対的な忠誠を誓っております。ああ美しや『黒髪の天使』!」

「あの……」

「貴女様のために部屋は綺麗な状態に保っておりますので」

「あの……!」

熱く語り出したアイレーンを無理やり止める。

「ハッ……
……し、失礼いたしました。お許しください」

ぴったり四五度で頭を下げるアイレーン。

「だ、大丈夫。気にしないで」

「あ、貴女様のお心遣い、感謝します。ああお優しい『黒髪の天使』」

「……『黒髪の天使』はやめて」

「では『黒髪の女神』」

「天使よりもひどい」

アメリアと呼んでくれ。お願いだから……


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