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第三話 水雷攻撃 怪獣に無力なり
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■東京湾 品川沖
連合艦隊司令部は、脚の速い第三戦隊の高速戦艦金剛型4隻に第二水雷戦隊をつけ、第一航空艦隊とともに先遣部隊として送り出していた。
航空攻撃失敗の報告を受けた第三戦隊と第二水雷戦隊は、船足をあげ翌朝ようやく品川沖に到着した。
「二水戦は先行し威力偵察。横須賀鎮守府の駆逐艦が殺られている。絶対に無理はするな」
指揮をとる三川中将は、横須賀鎮守府と航空部隊の結果から、巨大生物が相当な防御力を持っていると判断していた。このため近接戦闘をしないように言い含めて水雷戦隊を先行させていた。
だが第二水雷戦隊司令の田中少将、というよりはその幕僚達は違う意見を持っていた。
「そんな弱腰な事じゃ勝てん。魚雷を食らわせりゃあ一発じゃ」
彼らの強硬な意見に動かされ、田中は近接戦闘を選択してしまった。もちろん勝機はある。
80番徹甲爆弾すら弾き返した相手に駆逐艦や軽巡ごときの砲が通用するとは思っていない。だが彼らの主兵装は魚雷である。それはまだ巨大生物に対して試されていない。敵艦を一撃で屠ることを目標に開発された酸素魚雷ならば倒せるはず。彼らはそう信じていた。
だが魚雷を当てるのは簡単ではない。敵との距離、敵の針路、速度を正確に測る必要がある。そして魚雷が命中するまでの数十秒間、敵が一定に移動する事を前提にしている。
そんな前提など自由に動き回る巨大生物相手に成立するはずがなかった。さらに的の大きさはせいぜい20メートルほど。艦艇に比べてはるかに小さい。だから彼らは巨大生物に肉薄する必要があった。
距離が2000メートルほどに近づくと、巨大生物らは再び瓦礫や岩を投げ始めた。
意外なほどに精度の高い投擲は次々と水雷戦隊の艦に命中する。だが物が瓦礫や岩塊であれば損傷はするが沈むほどではない。
「怯むな!どうせただの岩だ!1000まで近づいて雷撃する!右魚雷戦用意!」
後方の戦艦部隊から矢のような後退命令が来ているが、田中は敢えてそれを無視した。岩で無線が故障したとでも後で言っておけばよい。彼は心の中で舌を出しながら、雨あられと岩が降ってくる中、突撃を継続させた。
1000メートルを切った所で旗艦神通が左に舵を切る。それに単縦陣で駆逐艦が追随する。
「雷撃はじめ!」
田中の号令とともに魚雷が一斉に発射された。合計100本を超える酸素魚雷が50ノット近い速さで巨大生物の群れに向かっていく。
「じかーん」
ストップウォッチを持った水雷長の声が艦橋に響く。一斉発射からおよそ40秒後、海中にいる個体の胴体に次々と水柱があがった。
「命中!」
「やったか!?」
田中らは双眼鏡で巨大生物の様子を窺う。
「数が減っています!攻撃成功です!」
水柱が収まった後、先ほどまで海中に8体いた巨大生物の姿が半分に減っていた。つまり4体は今の雷撃で仕留めたということだ。これまで航空部隊でも仕留められなかった巨大生物を初めて自分たちが倒したのだ。見張りの報告に神通の艦橋が沸き立った。
だが田中はこの戦果に満足はしていなかった。まだ巨大生物は残っている。
「油断するな!残りも仕留めるぞ!左魚雷戦用意!」
日本の駆逐艦は魚雷の次発装填装置を持っている。水雷戦隊は一旦巨大生物の群れの前を航過し、反転して再度雷撃をしようとしていた。
今の雷撃で巨大生物らは水雷戦隊を完全に危険な敵と認識したのだろう。瓦礫の投擲はさらに激しくなっていた。その中を水雷戦隊は突き進む。
「各艦、再装填完了!」
「よおし!戦隊反転!」
田中が水雷戦隊の反転を命じ、速度を落として旋回しはじめたその時、突然前方の海面が盛り上がった。
「な……!?」
更に周囲の海面がいくつも盛り上がる。そこから現れたのは先ほど倒したと思っていた巨大生物だった。
実は二水戦の魚雷は巨大生物を一体も倒してはいなかった。傷すら与えることも出来ていない。もともと魚雷に装甲を貫通する能力は無い。それでも田中らは、生物であるなら腹部や脚部は弱いはずと勝手に思い込んでいた。だがそれは間違いだった。
「か、回避……」
田中が叫ぶ間もなく神通は正面から巨大生物に激突した。巨大生物は蟹のような2対の長い腕で神通の艦首を抱え込む。神通の船足がガクンと止まった。田中ら司令部要員は床に投げ出される。
「後進全速!あいつの顔を撃って怯ませろ!」
神通は14センチ砲を放つが、相手は気にする様子もない。そして徐々に艦首から神通の船体にのしあがる。神通の排水量は5000トンほどしかない。艦首が沈むとともに艦尾が浮かび上がり空転するスクリューが甲高い音をたてる。
巨大生物は1対の腕で神通の船体をがっちり固定すると、ザリガニのような鋏のついた前腕をふりあげた。田中が最後に見たものは、自らに迫ってくる巨大な醜い腕だった。
目の前で旗艦神通の艦橋が司令官ごと殴り潰されるのを目撃し、周囲を巨大生物に取り囲まれた各駆逐艦の艦長は、とりあえずバラバラに逃走する事を選択した。幸い巨大生物の遊泳速度は駆逐艦には及ばないらしい。一部の艦は殴られて損傷はしたものの、なんとか虎口を脱出していく。
だが駆逐艦「霰」は運が悪かった。神通と同様にすぐ近くに巨大生物が現れたため、完全に捕捉されてしまったのである。しかも現れたのは最も大きな個体だった。
鮫を思わせる尖った頭をもったその巨大生物は霰を殴ったりしなかった。その代わりにと両手で霰をつかむと軽々と持ち上げ、なんと逃走している駆逐艦陽炎に向けて放り投げたのだった。
こうして第二水雷戦隊は何ら戦果を挙げることなく、旗艦と駆逐艦2隻、そして司令官を失って後退した。
【後書き】
本作品は戦艦小説なので、水雷戦隊は(ry
次回、ようやく戦艦と怪獣が対決します。ご期待ください!
作者のモチベーションアップになりますので、よろしければ感想や評価をお願いいたします。
連合艦隊司令部は、脚の速い第三戦隊の高速戦艦金剛型4隻に第二水雷戦隊をつけ、第一航空艦隊とともに先遣部隊として送り出していた。
航空攻撃失敗の報告を受けた第三戦隊と第二水雷戦隊は、船足をあげ翌朝ようやく品川沖に到着した。
「二水戦は先行し威力偵察。横須賀鎮守府の駆逐艦が殺られている。絶対に無理はするな」
指揮をとる三川中将は、横須賀鎮守府と航空部隊の結果から、巨大生物が相当な防御力を持っていると判断していた。このため近接戦闘をしないように言い含めて水雷戦隊を先行させていた。
だが第二水雷戦隊司令の田中少将、というよりはその幕僚達は違う意見を持っていた。
「そんな弱腰な事じゃ勝てん。魚雷を食らわせりゃあ一発じゃ」
彼らの強硬な意見に動かされ、田中は近接戦闘を選択してしまった。もちろん勝機はある。
80番徹甲爆弾すら弾き返した相手に駆逐艦や軽巡ごときの砲が通用するとは思っていない。だが彼らの主兵装は魚雷である。それはまだ巨大生物に対して試されていない。敵艦を一撃で屠ることを目標に開発された酸素魚雷ならば倒せるはず。彼らはそう信じていた。
だが魚雷を当てるのは簡単ではない。敵との距離、敵の針路、速度を正確に測る必要がある。そして魚雷が命中するまでの数十秒間、敵が一定に移動する事を前提にしている。
そんな前提など自由に動き回る巨大生物相手に成立するはずがなかった。さらに的の大きさはせいぜい20メートルほど。艦艇に比べてはるかに小さい。だから彼らは巨大生物に肉薄する必要があった。
距離が2000メートルほどに近づくと、巨大生物らは再び瓦礫や岩を投げ始めた。
意外なほどに精度の高い投擲は次々と水雷戦隊の艦に命中する。だが物が瓦礫や岩塊であれば損傷はするが沈むほどではない。
「怯むな!どうせただの岩だ!1000まで近づいて雷撃する!右魚雷戦用意!」
後方の戦艦部隊から矢のような後退命令が来ているが、田中は敢えてそれを無視した。岩で無線が故障したとでも後で言っておけばよい。彼は心の中で舌を出しながら、雨あられと岩が降ってくる中、突撃を継続させた。
1000メートルを切った所で旗艦神通が左に舵を切る。それに単縦陣で駆逐艦が追随する。
「雷撃はじめ!」
田中の号令とともに魚雷が一斉に発射された。合計100本を超える酸素魚雷が50ノット近い速さで巨大生物の群れに向かっていく。
「じかーん」
ストップウォッチを持った水雷長の声が艦橋に響く。一斉発射からおよそ40秒後、海中にいる個体の胴体に次々と水柱があがった。
「命中!」
「やったか!?」
田中らは双眼鏡で巨大生物の様子を窺う。
「数が減っています!攻撃成功です!」
水柱が収まった後、先ほどまで海中に8体いた巨大生物の姿が半分に減っていた。つまり4体は今の雷撃で仕留めたということだ。これまで航空部隊でも仕留められなかった巨大生物を初めて自分たちが倒したのだ。見張りの報告に神通の艦橋が沸き立った。
だが田中はこの戦果に満足はしていなかった。まだ巨大生物は残っている。
「油断するな!残りも仕留めるぞ!左魚雷戦用意!」
日本の駆逐艦は魚雷の次発装填装置を持っている。水雷戦隊は一旦巨大生物の群れの前を航過し、反転して再度雷撃をしようとしていた。
今の雷撃で巨大生物らは水雷戦隊を完全に危険な敵と認識したのだろう。瓦礫の投擲はさらに激しくなっていた。その中を水雷戦隊は突き進む。
「各艦、再装填完了!」
「よおし!戦隊反転!」
田中が水雷戦隊の反転を命じ、速度を落として旋回しはじめたその時、突然前方の海面が盛り上がった。
「な……!?」
更に周囲の海面がいくつも盛り上がる。そこから現れたのは先ほど倒したと思っていた巨大生物だった。
実は二水戦の魚雷は巨大生物を一体も倒してはいなかった。傷すら与えることも出来ていない。もともと魚雷に装甲を貫通する能力は無い。それでも田中らは、生物であるなら腹部や脚部は弱いはずと勝手に思い込んでいた。だがそれは間違いだった。
「か、回避……」
田中が叫ぶ間もなく神通は正面から巨大生物に激突した。巨大生物は蟹のような2対の長い腕で神通の艦首を抱え込む。神通の船足がガクンと止まった。田中ら司令部要員は床に投げ出される。
「後進全速!あいつの顔を撃って怯ませろ!」
神通は14センチ砲を放つが、相手は気にする様子もない。そして徐々に艦首から神通の船体にのしあがる。神通の排水量は5000トンほどしかない。艦首が沈むとともに艦尾が浮かび上がり空転するスクリューが甲高い音をたてる。
巨大生物は1対の腕で神通の船体をがっちり固定すると、ザリガニのような鋏のついた前腕をふりあげた。田中が最後に見たものは、自らに迫ってくる巨大な醜い腕だった。
目の前で旗艦神通の艦橋が司令官ごと殴り潰されるのを目撃し、周囲を巨大生物に取り囲まれた各駆逐艦の艦長は、とりあえずバラバラに逃走する事を選択した。幸い巨大生物の遊泳速度は駆逐艦には及ばないらしい。一部の艦は殴られて損傷はしたものの、なんとか虎口を脱出していく。
だが駆逐艦「霰」は運が悪かった。神通と同様にすぐ近くに巨大生物が現れたため、完全に捕捉されてしまったのである。しかも現れたのは最も大きな個体だった。
鮫を思わせる尖った頭をもったその巨大生物は霰を殴ったりしなかった。その代わりにと両手で霰をつかむと軽々と持ち上げ、なんと逃走している駆逐艦陽炎に向けて放り投げたのだった。
こうして第二水雷戦隊は何ら戦果を挙げることなく、旗艦と駆逐艦2隻、そして司令官を失って後退した。
【後書き】
本作品は戦艦小説なので、水雷戦隊は(ry
次回、ようやく戦艦と怪獣が対決します。ご期待ください!
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